第14話

 カンカンカンカンカンカン!! カンカンカンカンカンカン!!


 凄い勢いで空き缶が鳴らされ、飛び起きて横に置いてある鉄棒を持つ。

 今は深夜3時前ってとこか?


 とにかく自分の持ち場に移動しないと。

 体育コートの中央出入口から人が一気に出て1年は左に、2年は右に別れていく。


「か、絡繰君…」


「さ、佐伯!? 中で待機組じゃあ?」


「人混みに押されちゃって……」


 既に出入口は閉められている。

 見張り役の人が走って逃げて来てその後ろから犬が追って来ていた。

 いや狼だったか。


「とにかく佐伯は階段の中央へ」


「わ、わかった」


「え? なんで佐伯が?」


「押し出されて表に出たらしい。来るぞ!!」


 牙をムキ出して飛び掛かってくる狼を回避して鉄棒で突く。

 別方向からも鉄棒で貫かれ狼は絶命した。

 近藤のほうも1頭仕留めたようだ。


「佐伯は何か武器は持っているか?」


「持ってないよぅ」


 階段の隅(この階段からは地下に降りれないので物置スペースになっている)に置いてある折り畳み式のパイプ椅子を渡す。


「それでガードするように」


「わ、わかったよ!」


「ゾロゾロ来てるぞ!!」


 10体ぐらいのゴブリンがこちらに向かって来ていた。

 反対側の2年が守る階段にも向かってるみたいだ。


 階段を数段上がったところで待ち受ける。

 中央に近藤、左に俺で右は加川の布陣だ。

 ちなみにトシキは男子が少ない2年側に引き抜かれていて6人+佐伯で守っている。


 ゴブリンとの戦闘が始まった!



「くっ」


「チッ」


「こいつら昨日の奴等より手強いぞ!!」


 ほぼ一撃で仕留めた昨日とは違い、今日の奴らは防御したり回避したりと戦い慣れしてる感じだ。

 こちらの武器が殺傷力の低い鉄の棒ということもあるがとにかく倒しにくい。

 近藤の武器も昨日の丘への探索から鉄の棒だ。

 小さいとはいえバーベル持っての移動は疲れるし、この場でも振り回す攻撃ができないからだ。


 戦闘が始まって5分は経過しただろうか。

 こちらが3人並んで守っているのに対して、敵は4体並んで攻撃してくる。

 ゴブリンは小柄なので4体並んで戦えるのだ。

 近藤が1体倒した後、俺も1体倒したが、後ろで待機しているゴブリンがすぐ参戦して来るので3vs4の構図は変わらない。

 だが待機しているゴブリンは残り1体だ。

 何体か奥に向かっていったが、こちらもそれに対応する余裕がない。


「加川! 上の奴と交代しろ!」


「わ、わかった」


「2階からの攻撃に警戒しろよ。奥に向かったのがどう動くかわからん」


 突き出してくる刃物を躱して蹴りを入れる。

 階段の手すりに激突したゴブリンにすかさず鉄棒を突き腹部を貫く。


「グギャッ」


 足の裏を当て鉄棒を引き抜きそのままゴブリンを階下に落として、今度は近藤が相手しているゴブリンの腹部も貫く。


「ギャッ」


 崩れた!!


 先ほどと同じように貫いたゴブリンを階下に落として、もう1度近藤が相手しているゴブリンの腹部を貫こうとしたが防御された。

 だが問題ない。

 ガードがガラ空きのとこに近藤の一撃が決まるからだ。


 待機しているゴブリンが参戦して来るが、そいつに向けて鉄棒を投げる。

 刃物で軌道を変えられて当たらなかったが、2体目に貫いたゴブリンが持っていたショートソードを拾って切り結ぶ。

 相手は所詮刃物だ。


「はああああぁぁぁぁ!!」


 こちらのショートソードを刃物で受けた際にそのまま押し込んで首筋を斬って殺した。


 階下に落とした2体のゴブリンの首を突いて止めを刺して投げた鉄棒を拾うと、


 !?


「ぃゃゃゃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 体育コートから喧騒と悲鳴が聞こえて来た。

 だが扉は閉まったままだ。

 最後の1体を倒した近藤達がやってきた。


「侵入されたのか?」


「そうらしいな」


 余田が扉を開けようとするが、


「ダメだ。内側からカギが掛けられている!」


 2階から回り込むか?

 う~ん……

 この1年グループのメイン戦力は近藤と俺だ。

 今回加川ともう1人が実戦を経験したがまだ敵を殺せていない。

 グループを2つに分けるか?

 いや部長と同じ過ちを犯してどうする。

 2年の援護に行くか?

 反対側の階段には姿が見えないが、上のほうで戦っている気配がする。


 逡巡して決断しそびれている間にカギを開ける音が聞こえ扉が開いた。

 中から女子達が出てきた。

 ケガを負っている人もいるようだ。

 女子が出終わってから中に入ると、中央で大きなゴブリンと早川先輩が対峙していて、奥の隅でゴブリン2体相手に薙刀経験者の職員さんがもう一人の職員さんを庇いながら戦っていた。


「加川達は職員さんの援護を!」


「おう!」


「早川先輩!」


「か、絡繰か……、外山の防衛、プランは間違って…いた…な……」


 そう言うと早川先輩は倒れてしまった。

 血が広がっているのでどこかにダメージを受けたのだろう。

 安否の確認はできない。

 既に大きなゴブリンと対峙してしまっているからだ。


 大きなゴブリンは革製と思われる簡素な鎧を身に着けており、手には俺が持っているショートソードより刃が長い剣を持っている。

 体格は俺らと同じぐらいだ。

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