第12話

「このラウンドに関してはどうなんだ?」


『今回のようなゴブリンリーダークラスでしたら問題ありません。

 それではオッズを公開します』


①…1人 3倍

②…2人 4倍

③…3人 6倍

④…4人 10倍

⑤…上記以外 3倍


「今回は難しいね!」


「でもさすがに前回みたいに無防備にはしないでしょ」


「出場者側で新たに公開できる情報はあるかね?」


『では前回の戦果と主だった者を。

 外山浩紀…部活2年。出場者のリーダー。戦果0。

 早川武 …部活3年。剣道経験者。戦果2。

 伊藤裕司…部活2年。戦果1。

 絡繰隆宗…部活1年。戦果2。

 近藤辰也…部活1年。柔道経験者。戦果3。

 現時点で公開できるのは以上となります』


「これ……実戦を経験した者が4人しかいないの?」


「あんなに乱戦だったのに?」


『前回は完全な奇襲だったのとその……、入り口にあるガラスで襲撃側が大ダメージを受けてしまって……』


「そうだったな。双方に呆れたんだった」


「ますます予想が難しくなったよ!」


『それではいきますよ~

 ベットスタートです!!

 ……おや!?

 皆さんもう終わったのですか?

 ではオープンします!!』


①…1人 3倍 ga1000p

②…2人 5倍 ge5000p

③…3人 7倍

④…4人10倍 gn1000p

⑤…以外3倍 gs500p


『今回もgeさんから伺いましょう』


「前回勝ったから今回も同じpを同じ②に賭けた。根拠はそれだけで他にはない!!」


『データや理屈に依らない判断をするのもアリですよ。gsさんはいかがですか?』


「今回こそまともな防衛体制で迎撃すると思って、0人と読んでの⑤ね」


『なるほど。gaさんも前回と同じところに同じpを賭けていますが?』


「襲撃側の数が多いから1人ぐらい殺されちゃうと思ってね!」


『そして前回からただ1人変更したgnさんのご意見は?』


「倍率に惹かれたというのもあるが、ほら部活組と少し揉めた2人が別室に乗り込まれた時点で死亡確定だからね」


「あれには驚いたよ!」


「あんな魔物と話し合いとかねぇ」


「なので4人死亡というのも案外当たりそうに感じてね」


『それでは時間を進めて結果を見てみましょう』







「……という訳で第2次捜索隊は成果なしだ」


 16時ちょい過ぎに体育館に帰還した俺達は部長に報告会を開くことを進言。

 その際に別室の2人の職員も呼んだ。


「次は探索班から。こちらは東の丘の上から各方角の写真を撮影することに成功しました。

 続きは写真を見て頂いた後で」


 写真を撮った2人がそれぞれ男女のグループに分かれて見せていた。


「この山たかぁーい」「草原になってるのか」「これなんだろ?」


「この線は……道?」「南はずっと森林かよ」「山越えはできないだろうか?」


 皆様々な感想を言い合っている。

 この中で果たして何人が付いて来てくれるのか?

 賛同者が少なかった場合に残った十数人を俺は切り捨てることができるのだろうか?

 そしてその十字架を背負って後の人生を生きていけるのか?


 スーハー。

 深く深呼吸をする。

 落ち着け、俺の提案に誰も賛同しないかもしれないんだ。

 夜間の見張りを考えれば最低4人、俺以外に3人が賛同してくれないと移動はできない。

 その場合は気まずくなるかもしれないが、また普通に探索隊を出すことになるだろう。


 もうみんな写真を見終わったかな?


「まだ写真を見てない人はいますか?」


「見たぞー」「見ました」


「見て頂いたらわかると思いますが、東は森が途切れて草原になり、確証はありませんが道もしくは川のようなものが見えます。

 俺は……コホン。自分は明日にでも水や物資を抱えて全員での東への移動を提案します!!」


「はぁ?」「なっなに!?」


「か、絡繰!?」「ええぇぇぇ」


「ちょっと!」「……」


「絡繰、行方不明者がいるんだ。全員での移動は無理だ」


 やはり部長は残るほうを選んだか。

 となると2年の大半が残るだろうな。


「自分は……、この場にいない人よりもここにいる人達をいかに生かすか考えるべきだと思います」


「ふざけないで!! 恵美子を見殺しにするって言うの??」


 捜索隊にも立候補した行方不明になった木下先輩の友達の人だ。


「誰かが決断しないといけないと思います。

 ならばその責は自分が負います。

 人員・体力・気力が残っている内に人里を目指すべきです」


「明日もう1度探せば恵美子は見つかるわよ!!」


「移動するにしても準備に時間掛かりますから、その間捜索することで納得して頂けませんか?」


「何よ!! そのどうせ見つからないからそれで自分を納得させろっていう言い方!!」


 もう1度探せば見つかるんだろ?

 と反論したいのをグッとこらえる。

 感情的なやり取りは避けたいし、何より言ってはいけないことを言いそうになってしまうからだ。

 即ちおまえは木下先輩の何を見つけるつもりなんだ、と……


「絡繰、おまえ自身があれが道・川か確証がないと言ってるじゃないか。ここは調査隊を出してきちんと確証を得てから全員で移動すべきではないのか?」


「賛成!」「パチパチパチ」「1年が生意気なんだよ!!」

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