第10話

「そう言えばそうだよね」


「新しいジャンルだから拒否反応起こしてるだけかもな」


「異世界モノは多種多様な種類があって飽きないんだよなぁ」


「それじゃあ近藤的には俺達の状況はどんな異世界モノになるんだ?」


「集団転移なのは間違いないが……今のところはチートもないしスキルとかもない。強いて挙げるならサバイバル系か?

 でも非常食を食べて体育館で寝てるからあまりサバイバル感はないけど」


「ここはやっぱり、魔法少女☆ミカちゃん♪ でしょっ! ビシッ!」


「さてはおまえそれ気に入ったな?」


「ミカちゃん☆パーーーンチ!! ビシッ!」


「いや、魔法を使えよ……」


「なんにせよ目立たなくて隅にいるような奴には要注意だぞ。特に役に立たなくても何があっても追放したらダメだ」


「あっ。それ私知ってるよ! ざまぁされちゃうんだよね!!」


「そうだ。どんなに対策しても結局はざまぁされるから最初の追放を阻止しないといけないのだ」


「しかし……、そうなると俺達は主役ではないということになるな」


「……」「ええっ!?」


 近藤はさすがに予想していたようだな。

 それと比較して佐伯の驚き方にこちらがビックリなんだが。

 まさかさっきの魔法少女は本気だったんじゃあ……


「ざまぁ系の話ならってことだ。絡繰と違って俺と佐伯にはまだまだチャンスはある」


「だよねっ!!」


「オイ! 俺にだってチャンスぐらいまだあるだろう?」


「いや。おまえはもう完璧にかませ犬ルートに入っちまった。もしくは男委員長ルートだな」


「ぐっ」


 そうなんだよ。

 部長とは普段挨拶する程度でしかなかったのになぜかこっちに来てから猛烈に仕事を振って来るんだよなぁ。


「おっ!」


「あっ!」


 明らかに地面が登り角度になった。

 1時間ほど歩いてきたが行程的には目視で半分ぐらいのとこか。

 しかし……


「近付いてみると丘と言ってもそこそこ高いな」


「ああ。上まで登れるか?」


「見た目急斜面な訳ではないからいけそうではあるが……」


「とにかく先に進もうぜ」


 それからの移動は先ほどまでの明るい雰囲気はなく若干速めに歩く感じになっている。


 昨日知り合いが殺されたショックを隠そうと2人が無理に明るく振舞っていたのはすぐわかった。

 仲が良かったであろう佐伯は特に。

 だが今は丘の向こう側が気になってしまうのだ。

 こんな状態では本当に何もなかった時に落ち込んでしまうかもしれないな。



 さらに1時間ほど歩いて丘の下あたりまで来た。


「一旦ここで昼休憩にしよう」


「賛成!」


 適当に腰掛け各自クラッカーを食べるが……


「やっぱりこういう時っておにぎりかサンドイッチだよな」


「なんか口の中がボサボサする」


「おにぎりやサンドイッチなんて日本にいた頃はいくらでも食べられたのに」


「ここではドえらい貴重品になったな」


「丘は……高さが20メートルぐらいある感じか……」


「左のほうに回り込むようにして上に登れそうなとこを探すのがいいだろうな」


「念の為にここに何か目印をしたほうがよくないか?」


 同行している2人の内の1人、加川から提案された。


「そうだな。適当にそこらの石でも積み上げておこう」


「なんかドキドキしてきたね!!」


「ここまで2時間弱掛かっている。昨日は17時半には相当暗くなっていたので余裕を持ってこの地点を15時前には出発して帰りたい」


「あと2時間以上あるんだ。余裕だろ」


「大丈夫、いけるよ!!」


「よし! 丘の上を目指そう!!」



 俺達は丘に対して左方向に回り込むように移動した。

 それほど斜面の角度はきつくなく、スムーズに上に登ることができて20分と掛からず丘の上に出た。


「おおおお!」


「わぁぁぁぁ!」


「むっ!」


 そこから見渡す景色はまさに雄大だった。

 北には遥か遠くに大山脈が連なっており、その頂きは雲に隠れてしまっている。

 西には俺達の拠点の体育館が見え、その向こうの山々は北ほどの高さはないが登るのはまず無理だろう。

 南には森がずっと広がっている。もはや大森林と言っていい。

 そして問題の東側だが……

 森が続いているものの途中で途切れ、以降は草原に変わっている。

 さらに……


「なぁ、あの草原に薄っすら引かれている線ぽいのは道なんじゃないか?」


「ああ。俺にもそう見える。見えるんだが、遠すぎて何とも言えん」


「私結構視力良いほうなんだけど、微妙かな。道かと言われれば道に見えるけど……」


「くそっ。双眼鏡か望遠鏡でもあればなぁ」


「とりあえずスマホで写真撮ってくれ」


「わかった! 撮るねー」


「南と東は念入りに複数撮って欲しい。特に東の道のとこと南の奥の方は最大倍率で頼む」


「了解だよ!」


「俺も一応撮っておくか」


「ねーねー、撮った写真をズームして道かどうかわからないかな?」


「あれだけ遠いと粗く表示されるだけかと思うが、一応やってみてくれ」


 佐伯は手元でスマホを操作しているが、


「うん。ダメだね。ボヤけて全然わかんないや。ズームしないほうが全然マシだね」


「車かトラックでも通れば一発でわかるのに」


「この世界が中世なら時代的に馬車だろ?」


「あーそうだな。馬車通らないかなぁ」

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