第6話
鉄棒がゴブリンの腹の肉を抉る嫌な感触の中で一瞬猛烈に不安な気持ちになる。
(もしこれが佐伯の言う通り集団催眠だとしたら、俺は現実世界で殺人を犯しているということになる。しかもおそらく子供を……)
あり得ないと思いつつも、串刺しにしたゴブリンが子供の姿に見えて来て吐き気がしてくる。
しかし、その串刺しにしたゴブリンの先に血まみれで横たわる女子が視線に入り想いを新たにする。
(例えこのゴブリンが子供だったとしてもこんなことをする奴らを許していいはずがない!!)
「グギャガギャ」
鉄棒をゴブリンの腹から強引に引き抜き、近くで女子を押し倒しているゴブリンをスイングするように殴った。
骨が折れたのか腕を抑えながら立ち上がるゴブリンの口に鉄棒を突き刺した。
ゴリっと固いモノに触れて少し軌道を変えながらも鉄棒は反対側に突き出た。
血の匂い、臓物の匂い、便の匂いが辺りに充満している。
周囲を見るともう生きてるゴブリンはいないようだ。
「かなぁ、かな起きてよぉ……、かなぁ……」
先ほど見た血まみれで横たわる女子に縋りついて泣いているのは菅原洋子だ。
亡くなったのは三嶋佳奈か。
俺や近藤にも優しく話し掛けてくれる少し地味だけど良い子だったのに。
「痛い痛い痛い痛い痛……痛い、痛い……痛い…痛い…いた……ぃ…ぃ……」
「リア! しっかりして!! リアぁぁぁ」
「ぅぅぅぅ……」
「グス……グス……」
女子班は外のトイレに近い体育コート入り口周辺を強行に寝床スペースとして確保したのが仇となってしまった。誰が悪いという訳ではないけど。
しかし同じ部活の仲間が殺されたのに妙に冷静な自分がいる。
もしかして初めて動物をそれも人型を殺したことでハイになっているのだろうか?
いや、これが本当にゴブリンだとしたら動物ではなく魔物だよな。
「絡繰……」
「近藤か、無事か?」
「なんとか……な、奴をコイツで殴った時の嫌な感触が消えないが……」
と近藤はバーベルを持ち上げる。
「
ゴブリンの死体は8体ある。
1体を引きずって表に出ようとすると、体育館の入り口のガラスが盛大に割られていてそこにゴブリン2体と犬3体の死体があった。
どの死体もガラスでざっくりと切られている。
いや、犬のほうは自らガラスに突っ込んだ感じか。
ん? 牙とかが犬というより狼に近いか……そんなことよりも、
「ガラスの破片を片付けるほうが先だな、いくらシューズを履いていてもこの大量の破片だとナカトミ・プラザのジ〇ン・マクレーンになっちまう」
「なんだそれ?」
「ダイ・ハ〇ド見た事ないのか?」
名作アクション映画を見たことのない近藤に軽いショックを受けてた時、女子の悲痛な叫びが聞こえてきた……
「恵美子がいないのよ! 探してよぉ、お願い、お願いします、さがして……」
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===1round after===
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『結果が出ましたぁ!! ワーワー! パチパチ~!』
「自前で効果音付けんでいいから」
「とっとと進めて」
『皆さん回を重ねる度に私への当りがキツくなってませんかね?』
「気のせいよ……」「たぶん木の精って奴だよ!」
『せめて目を逸らさずに言って欲しいものですが……、まぁそれはそれとして、結果は死者2名ということになりました!!』
「あの連れ去られた女性は死亡扱いにはならんの? あれはもう無理でしょ」
『現段階では生きてるということもあるのですが、襲撃犯とは別のグループに連れ去られておりますので例え死亡扱いしたとしてもカウントできません』
「なるほどね、しかし想定外のことが起き過ぎでしょ!」
「だよね! まさか見張りも置かずに寝るなんてさすがに予想できないよ!!」
「しかも危険な出入り口に近いところで女子が寝るとはな。女子自身が主張したこととはいえ」
「襲撃者側もね! まさか出入り口無視してガラス壁に体当たりした挙句にぶち破った際のガラスの破片で4割の損害を出すなんて……」
『そんな想定外の状況の中見事geさんが的中させました! おめでとうございます!』
「pが増えた事は純粋に嬉しいけど、きちんと予想して当てた訳ではないから複雑かな」
「逆にきちんと予想しなかったからこそ当てることができたとも言えるな」
『では1roundの結果を表示します』
ge…15000p
ga…-1000p
gn… -500p
gs… -500p
『ここで皆様にお知らせがあります!
これから各自ブースにてモニター視聴して頂く訳ですが、前回までの仕様とは異なり今回からは次のラウンドまでスキップしてもリアルタイムで視聴しても時差が10分以内になるよう調整することが可能となりました!!
これは先ほど申しました異世界側との研究の成果でして、時空魔法をシステムに取り入れることによって前回までの長時間のタイムラグの発生状況を大幅に改善する結果をもたらしました。
さらに皆様からの要望が多かった視聴時の早送り・リプレイ機能も追加されております』
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