わたしという者

 わたしが業国に来たのは、魔術学校で学ぶためである。

 しかし、成績優秀だったわたしを妬む目は多かった。

 不老不死の血を持つ魔女の家系だからか、他の者とは比較にならないほど成長率は良かった。

 だから妬まれるのだ。

 それと同時に、少なからずの男子から好意を抱かれていた。

 だから妬まれるのだ。

 わたしが行くところ、休むところ、ほとんどがわたしへの陰口だった。

 魔術学校は早期に卒業したわたしは、魔術師として一人前になる、はずだった。

 不老不死とはいえ、二十歳もいかなかった当時のわたしを認めてもらえる者はいない。

 大概が舐めてかかってくる。

 そんなわたしが魔術を行使するときは、店でナンパしてくる男共から逃れるための正当防衛だった。

 その行為が悪評を呼び、わたしを雇おうとしたギルドからクビを言い渡された。

 日銭を稼いでいる中、わたしはある広告を見かけた。

 王宮魔術師の募集だった。

 試験内容は独自の魔術、つまりはオリジナルを創り出せ、ということだ。

 わたしにはこれしか道がないと思った。

 これでダメなら、噂の広まってない辺境の村で暮らそう。

 そう考えた。

 だが、オリジナル魔術を何個も創り出してもピンと来るものがなかった。

 どれも他の魔術師が真似てくるだろう。

 しかし、試験まで時間はなかった。

 そんなわたしが追い詰められて生み出した魔法。

 花や卵を永久に保管する魔術。

 加工されたものは、握りつぶそうとも、叩き落しても、壊れるどころかひびが入らない。

 これしかない。

 半分ヤケ、半分賭けの精神状態でこの魔術に望みを託した。

 だが、この時のわたしは知るはずもなかった。

 この魔術がわたしの人生に大きな転機をもたらすことを。

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業国の魔術師と王子 @WaTtle

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