業国の魔術師と王子
@WaTtle
魔術師の仕事
わたしは、ただの魔術師。
そう、ただの若い魔術師だった。
王宮魔術師の試験を受けるまでは。
今日の処刑場は観衆たちが一段と盛り上がる。
連れてこられたのは、凹凸がハッキリした肉体を薄着で着こなす美女だった。
刑吏が美女を抑えつける。
それを見かねたわたしはひっそりと魔法を詠唱する。
唱え終えると、美女は頭から力を失くして倒れていった。
大柄な体格の処刑人が巨大な斧を持って待ち構える。
「早くしろッ!」
刑吏は美女の身体を引きずって運んでいき、頭を木の幹に乗せていく。
美女が目を覚ました時、処刑人が大きく斧を振りかざす。
それが彼女の最期の光景だった。
美女の首は断ち切られ、首はゴロゴロ転がっていく。
転がり終えた美女の首を持ち上げた処刑人は観衆に見せつけた。
観衆たちの声が処刑場に響き渡った。
陽が落ち、処刑場には刑吏と処刑人、そしてわたしだけになった。
杭に挿した美女の首を処刑人が引っこ抜き、わたしに渡す。
「ほれ、持ってけ」
わたしが欲しいんじゃないっての。
そう思いながらも、首を受け取る。
「やれやれ、悪趣味なこったな、奴は」
「あなたも大概よ」
「こちとら仕事でやってんだ。そんな言われ方をされる覚えはないぜ?」
わたしは首を受け取ると、処刑人に一瞥してその場を後にした。
どうせ、美女の身体の方の解体ショーが始まるのだから。
悪趣味だ。どいつもこいつも。
もっとも、わたしのこの魔法も悪趣味の類に入るのだろうか。
わたしは首を布に包んであいつの部屋に向かっていた。
もっとも、あいつの部屋に来る者なんて、わたししかいないだろう。
当然、そこまでの道中ですれ違うものなんていない。
そんなことを振り替えていると、あいつの部屋の前に着いてしまった。
少し呼吸を整えて、ドアをノックする。
一応、あいつはこの国のトップになる男なのだから。
「失礼するわよ」
しばらくして、返事が来る。
「入れ」
お許しが出たところで、わたしはドアを開ける。
広く高貴な部屋にたった一人で執務をしている人間。
その男こそ、この国の王子であり、わたしを王宮魔術師に選んだ人間だ。
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