第27話 モブは贈り物を探す
◇◇◇
スルスルと俺は崖を登っていく
苔ウサギ達には切り立った壁でも、この身体であれば足場にできる場所はいくらでもある。
地上へ抜けると、そこは丘の上だった。側に大樹が一本立っており、そこには何匹もの鳥が羽を休めている。
先刻聴いた鳴き声は、この鳥達のものだったのだろう。
熱源反応から、その他にも生き物がいることを確認できた。いちおう鑑定をかけてみたが、どうやら魔物ではないらしい。
《ステルス.Lv6》を発動させた俺のことを、獣達は全く感知できていない。面白いようにつかまえることができた。
俺は周りにいた小型の虫や獣を次々に口に放り込みながら、周囲を捜索する。あ、贈り物を探しに来たってのはマジだよ? これはちょっと、その前の腹ごしらえさ!
(ふむ。何かないかな〜〜? ウサギの喜びそうな物って何だろう?? やっぱり食べ物だよね?)
しばらく色々探し回ったが、なかなか見つからない。
野イチゴとか、あるいはちょっとした野菜っぽいのが欲しかったんだけど……ウサギさんの食べられそうな物って、そんなに簡単に見つかるものじゃないんだな。
あらかた周囲の捜索を終えた俺は、傍らの大樹を見上げて嘆息する。
(うう〜ん。食べ物は見つからない……か)
別に、セレーネは食べ物がなくて困っているわけではない。
食べ物はそこら辺の苔や草があれば十分なのだから。
だが……
(食べ物がダメとなると、やっぱり装飾品か〜? けどなぁ……)
そう、俺には両手がない。だから何かちょっとした小物を作るとしてもかなり難しいのだ。
そもそもそんなに器用ではないため、両手があったとしてもそんなに上手くはできないと思うが……。
(どうしたもんかな〜。置物……綺麗な石とかでも探してみるか?)
──キラリ
その時思案に耽る俺の視界の端で、何かが光を受けて反射する。
(んん? あれは……)
よく目を凝らしてみれば、大樹の枝に何かが引っかかっている。
鳥が集めた光り物か何かだろうか? 気になったので俺は見に行くことにした。
スルスルスル……
近づいてみると、それは首飾りだった。
かなり古いものなのか、紐の方はかなりくたびれていたが、トップは光を浴びてキラキラと輝いている。淡い紫色の宝石に白銀色のツタが絡みついたようなデザインになっていて、とても可愛らしい。
前世では装飾品の類を身に付けたり、誰かに贈った経験などもちろんなかったが、そんな俺から見ても良いものだと思った。
(すごい。キラキラしていて可愛らしいな。この大きさなら、セレーネが首からかけても重たくはないだろう。だけど、紐がしっかりと枝に食い込んでいるな? どうやって取ろうか?)
そんな事を思いながら俺がそっと触れようとした途端、首飾りはするりと枝から落ちた。
ちょッ!! おい!!
──パクリ!
間一髪、俺は紐の部分を咥えてキャッチする。
(あっぶね〜〜!! 落ちた衝撃で宝石が砕けてしまったら、贈り物にならなくなるとこだった!!)
かなり焦った。まだ心臓がバクバクしてる。
だがとにかく贈り物ゲットだ。当初考えていた以上に良いものを見つけてしまった。
その後、スルスルと大樹の下へ降りてきた俺は、上機嫌でセレーネのところへ戻るのだった。
◇◇◇
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