第25話 モブはレベルが下がった!


 ◇◇◇



 セレーネの猫パンチならぬウサ蹴りは、思った以上の威力だった。



「ッつぉぉお……」


 なかなかどうして良いもん持ってるじゃねぇか……お嬢ちゃん。どうだい? おじちゃんと世界狙ってみるかい?



「……もう、恥ずかしいじゃない!! そういう事は気づいてないフリをしてこっそり知らせるものよ!」


 セレーネはプリプリと怒りながら、両手で顔を挟み込むようにして口元を拭っている。その仕草はなんというか全くウサギで、少し愛らしい。



「ご、ごめん。何でも言い合えるのが友達だと聞いたことがあって……」


「それもそうだけど、どんな言葉が返ってくるか期待した私の純情を返しなさいよ! あとアンタの名前まだ聞いてないし!」



 おっとそうだった。友人になったのだから名前を知らないのは不自然だ。名前名前……、あ。俺女の子になったんだったな。どうしよう。萌文じゃ変かな?? ああ!! 女の子の名前なんて萌香以外には急には思いつかん!! う〜〜ん……流石にそれはなぁ。



「なによ? もしかして、名前ないの?」



「いや、え〜〜っと、モエ……」

 


「トモエ? トモエっていうの??」



(トモエ……? トモエ……か。確か、蛇とか渦巻くって意味があったような気がするな。うん。それでいこう)



「うん、トモエ……巴だよ。これからよろしく、セレーネ」



「へえ〜、トモエか! うん、よろしく!!」



 セレーネと俺は、顔を赤くしてしばらく見つめあっていた。

 2人ともぼっちだからな。あ、もしかしてセレーネにとっても俺って初めての友人だったのでは……?


 そんなことを考えていると、急に目眩がした。



「あれ……? なんか……」



 ふらりと倒れそうになる俺に、セレーネが駆け寄る。



「トモエッ!? だ、大丈夫!?」


「うん、大丈夫。ちょっとふらついちゃっただけだから」



 何だろう。何だかものすごく気分が悪くなってきた……変なものでも食べたか?? いや、ウロボロスの腹がめちゃくちゃ頑丈なのは体験済みだ。じゃあ、なんだ?? バッドステータスでもついたのか??



 俺は慌ててステータスを確認する。



 ◇◇◇


 種 族:龍種

     邪龍ウロボロス

 性 別:雌

 名 前:トモエ

 状 態:空腹

 レベル:1(0/100)

 H P:120(1000)

 M P:50(1000)

 攻 撃:800

 防 御:300

 敏 捷:700

 技 力:400

 隠 密:600

 魔 力:500

 精神力:400

 スキル:「蛇牙」「丸呑み」「吐き出す」「マーキング」「鑑定.LV6」「ステルス.LV6」「空間認知.LV6」「温度感知.LV6」

 加 護:「天使ラブリエル」


 ◇◇◇



 ………ん? あれ? なんかステータス下がってね?



 って、まてまてまておいおいおいおい!!



 レ……レベルが1まで下がっている!?



 俺のレベルはどういうわけか最低値の1まで下がっていた。そして、HPもMPも殆ど無くなりかけていたのだった。



「ああ……」



 ──ふらふらふら……パタリ




「ッええ!? トモエ!? 大丈夫!? トモエ〜〜ッ!!」




 あまりのショックを受けたせいか、とうとう俺は倒れてしまった。




 ◇◇◇

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