第15話 モブは次の獲物を定める
◇◇◇
あれから数日、俺は見つけたウサギを片っ端から鑑定しては腹の中へ収めていった。
自分が産まれてきた卵の殻も食べてはみたが、さほど腹も膨れず経験値にもならなかったので、いまはウサギ狩りに専念している。
またウサギを一匹狩るが、どうも最近見つかるウサギの量が少ない。もしかして、同じ狩場に居続けるとスポーン数が減ってしまうとかだろうか?
そんなことを考えていると、ようやくレベルが上がる。2日ぶりのレベルアップにほっと一息ついていると、ラブリエルの声が聞こえる。
『レベルアップおめでとうございます萌文様〜、もうこれでレベル5になりましたね! 早い早いです〜』
ラブリエルの言葉に、俺は改めてステータスを確認する。
◇◇◇
種 族:龍種
邪龍ウロボロス
性 別:雌
名 前:──
状 態:普通
レベル:5(0/6000)
H P:1215(1215)
M P:1215(1215)
攻 撃:972
防 御:365
敏 捷:851
技 力:486
隠 密:729
魔 力:608
精神力:486
スキル:「蛇牙」「丸呑み」「マーキング」「鑑定.LV3」「ステルス.LV2」「空間認知.LV4」「温度感知.LV4」「???」
加 護:「天使ラブリエル」
◇◇◇
ステータスは、軒並み良い感じで伸びている。もうすぐ攻撃力が1,000を突破するので、ウサギを咀嚼できる日も近いかもしれない。スキルは鑑定、ステルス、感知系が伸びており、新たにマーキングという技を修得した様だ。マーキング……犬猫だったら間違いなくアレだが、ヘビ……じゃなくて邪龍なのでもう少しそれっぽい何かであることを願おう。
(ありがとうござ……ありがとうラブリエル。そんなに早いかな?)
『ええ、早いですよ〜。まだ萌文様が転生してから1週間程ですからね。流石は龍種……というより、産まれた場所が良かったですね。天敵どころか、ほぼ危険はないですし』
俺の言葉遣いだが、ラブリエルの願いで敬語はやめた。何というか、ラブリエルにとってはその方が嬉しいらしい。とはいえ、彼女自身はまだ俺に敬語を止めないので、時々つられて敬語を返してしまう。まあ、いつかは慣れるだろう。
(そっか、この世界の基準とかはよく分からないけど、安心したよ。そうだちょうどいい。最近ウサギとなかなか会えなくなってきたから、もうそろそろこの狩場を出ようと思うんだ。この辺りに、もっと俺がレベルを上げるのにいい場所があれば教えてくれないか?)
俺はラブリエルに問いかける。
『んん〜〜。ですか……確かに、萌文様に乱獲されて一時的にこの辺りは魔物不足になっているかもしれませんね〜。ただ、苔ウサギは経験値的にはかなり美味しい類の魔物ですよ?? それよりもとなると……』
声を聴いているだけでもラブリエルが悩んでいるのがわかる。
俺はこの世界に転生して以降、ウサギしか食べていない。
そのウサギが経験値的に多い部類の魔物だったとは……う〜ん、残念だ。もしかすると、この先のレベルアップはかなり先になるかもしれない。
『あ。萌文様、そういえば、あいつ狩りました??』
その時、ラブリエルが思い出したように声を上げる。
(ん? なんだ? 俺はここに来てからはウサギしか狩ってないけど……)
『あ、いや、そいつもウサギなんですけど……ちょっと変わった苔ウサギでして。
逃げるという言葉に俺はあるウサギを思い出した。
(え? あ! もしかして!!)
俺が初めて鑑定した苔ウサギだ。あの時は鑑定レベルが1しか無かったので、見た目からは違いを判別できなかった。
『おや? その反応だと、もうお会いした事はあるようですね? そいつの名前は《はぐれ苔ウサギ》。ゴロゴロ寝てばかりのモブの苔ウサギ達とは、経験値的にもお味的にも格が違います!! この谷を後にするのであれば、あいつを食べてからでも遅くはないと思いますよ』
ラブリエルの声はそう告げて消えていった。
そういえばそうだ、俺もずっと変だと思っていた。俺が食べた苔ウサギ達は、基本的に動きまわるということが全く無かった。俺が見たやつは間違いなくそのはぐれ苔ウサギであろう。
(ふふふ……そうか。はぐれ苔ウサギ。腹が鳴る……いや、腕が鳴るぜ!!)
俺はレベルアップによるステータスと、新たに手に入れたスキルを試すよい機会を得たと一人ほくそ笑む。シュルシュル……ああ、なんかとても悪役っぽい。
俺の次の獲物が決まった。
◇◇◇
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