第14話 モブは鑑定レベルが上がった
◇◇◇
(鑑定)
ポワン── ヒョイパクッ
新しいウサギを見つけては、鑑定をかけたあと丸呑みにしていく。
とりあえずこうしていれば、いつか俺自身のレベルも、鑑定のスキルレベルも上がるという算段である。
ちょうど10匹ほどを腹に入れた後、俺は再度ステータスを確認する。先程との違いは、レベルの横にある表記だけだ。
レベル:2(1000/2000)と表示されている。
(恐らくこれはレベルアップに必要な残り経験値だろうな。一匹で100貯まるなら、あとちょうど10匹ってとこか?)
俺は一人呟く。
鑑定のほうは相変わらず《鑑定.Lv1》のままだ。
(んー、なんかこのままだとウサギの強さがわかる前にまたラブリエルの声が聞こえてきそうな気がするな〜)
まあ、それはそれで別に困ることではないが、俺は早くこいつらの強さを確認しておきたかった。今のところ無害なウサギで鑑定レベルを上げておくことは、俺が今後この世界で生きていく上でかなりのアドバンテージになると認識している。
相手の強さを測れるようになっておけば、本当に危険な存在に出くわした時に先手を打つことができるからだ。
この鑑定というスキル。
先程ラブリエルが言いかけた言葉の雰囲気から察するに、かなりレアなスキルに属する様だ。なぜこんなスキルを最初から俺が持っていたのか、その理由にはちょっとした心当たりがあった。
実はといえば、前世の俺にはちょっとした霊感があったのだ。
頭を強く打って以来、人の特徴? あるいは纏う雰囲気というのか……そうしたものを色と大きさで感じ取ることができたのである。
そのことを初めて親に打ち明けた時には、めちゃめちゃ気味悪がられたっけ。俺はただ妹……萌香がとても大きな黄色のオーラを持っていると伝えたかっただけなんだが……。
それからその力のことを誰かに話したことはない。話す相手も居なかったからというのもある。
だが、転生前にラブリエルから萌香が
それが灰色の眼の力なのか、ただ単に俺の頭がイカれてただけなのかはよくわからない。ただこうして異世界に転生を果たした今、恐らくあの力はこうして《鑑定》というスキルになって俺にアドバンテージを与えてくれている。俺にはそう思えるのだ。
ちょうど、11匹目のウサギを見つけた時である。
(鑑定……)
『鑑定レベルアーーップ! 情報量が、ちょっと増えるよ!』
ラブリエルの声が聞こえた。
(なんだよ、
内心そう思っていると、再度ラブリエルの声がする。
『ふ〜んだ。残念、こっちは自動音声です〜!!』
(あ。そうなのね、特に残念ではないけれども)
『ッえ〜〜!! な、なんですっt 』
実に中途半端なタイミングでラブリエルの音声は途切れた。
明らかに自動音声ではなかった。たぶん、これからもスキルレベルアップの時にちょっとした小ネタを落としていってくれるつもりだろう。
(……俺のことばっかり観察しててアイツは他に仕事がないのか?)
窓際残念天使だから碌な仕事が与えられてないのかもしれないな。そんな失礼なことを考えつつ。俺は《鑑定結果》を確認する。
ラブリエルはちょっとなんて言っていたが、そこにはしっかりこれまで見えていなかったステータスが開示されていた。
◇◇◇
《鑑定結果.Lv2》
種 族:獣種
苔ウサギ
名 前:──
強 さ:とても弱い
レベル:1
H P:10
M P:0
攻 撃:5
防 御:1000
敏 捷:50
技 力:8
隠 密:500
魔 力:0
精神力:0
スキル:《苔むす》
◇◇◇
(防御値高いなッ! 基準はよくわからんけども、レベル1のくせに龍より高けりゃ立派なもんだよ! そしてその他!! 一部を除いてめっちゃ低いなッ!?)
見る限りこのウサギは、脅威ではないが倒すことは難しいタイプの魔物……なのかな? 強さこそ
じゃあ最初に出会ったウサギが逃げ出したのは、何故なのだろう。思えば今のところ、やつ以外に動いてるウサギを見つけたことがないしな……
色々と考えてみるも、
ヒョイパクッ
(ん〜。味的なものはよくわからんが、経験値的には美味しいよウサギっち)
心の中で無い手を合わせて感謝の言葉を述べつつも、俺は一人ウサギをパクつくのであった。
◇◇◇
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