第12話 おおモブよ、折れてしまうとは情けない
◇◇◇
なんと、このウサギ。強さがとても弱いだったにもかかわらず、龍種の牙を折りやがった。
(え、ちょっと待って僕って
もしそうであったならかなりまずい……。だって俺はいま、この岩みたいに硬いウサギに囲まれてるのだから。最悪殺されるかもしれない。
サーッと血の気が引いていくのを感じる。そして、恐る恐る後ろを振り返る……
が、ウサギ達は岩になったままである。動く気配はない。
(ええ……? 防御特化型なのかな? よくわからないけど、凶暴じゃあ無さそうだ。考えてみれば、さっきも俺から逃げていたし……)
だが安心はできない。攻撃が通じない上に、コイツらの性質がわからない以上は無闇に刺激するのは避けた方が良いだろう。
万が一物凄く凶暴で、今はただ眠っているだけだとしたら……なんて、考えるだけで恐ろしい。
俺はひとまず撤退を決め、静かにその場から離れた。
◇◇◇
(ぐぬぬ……やっと食事にありつけると思ったのになぁ……)
俺はアレからも野良ウサギが岩に擬態しているのをちらほら横目に見つつ、生まれた場所に戻っている。一応、レベルの上昇を狙って欠かさず《鑑定》を発動させているがそちらに変化はない。
その間も、何とかウサギを倒す手段はないか考える。
(龍種の牙が通らないなんて、とんでもない生き物がいたもんだ。いや、もしかしてラブリエルのやつ。俺をただの蛇に転生させたんじゃないだろうな?)
もう全てが半信半疑だ。それくらいにはショックだった。
この世界の最強種に生まれ変わったのだから、モブとはいえ一人で生きていけるだけの力はあると信じていた。
かわいい見た目をしておきながら恐ろしいヤツよ。
悔しいかな、今の俺に出来ることはない。ひとまず元の場所に帰って卵の殻を……殻を。そうだ、殻は……噛み砕けるのだろうか?
ぼんやりそんなことを考えていると、俺はふと思い至る。
(そうだ。文字通り、歯が立たないんだったら、
俺の顎は、俺自身を呑み込めるほどに大きく開くのだ。
歯が立たないなら、呑み込めばいい。普通の蛇だってそうだ。食事の基本は丸呑みだ。
(盲点だった……、中途半端に人間の感覚や考え方に捉われていちゃダメだな。俺はもう人間じゃないんだから)
そんな風に考えていると、また目の前に岩に擬態したウサギを見つける。ウサギはその硬質な身体に絶対の自信を持っているのだろう。俺が近づいても全く動く気配はない。
(ふふん! ウサギよ。お前がいくら硬かろうとも、俺の胃袋に入ってしまえば俺の勝ちだ!! ……たぶん)
俺はそう意気込むと、エイヤッとウサギを丸呑みにする。
(頼むから腹をぶち破って出てくるとかは……本当にやめてッ!!)
祈るようにしてしばらくすると、俺の身体がパァァと緑色に輝いた。
そして──
『レベルアァーーーップ!!!! おめでとうございます萌文様!! 初めてのレベルアップですよ〜〜!! キャ〜〜!! やりましたね!!』
残念天使ことラブリエルさんの声が頭に響いたのであった。
◇◇◇
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