第7話 モブvs卵!!


 ◇◇◇



(まさか、こんな落とし穴があるなんてな。いや、穴が開いてたらそこから出たんだが、ッフフ)



 少し自暴自棄になってきた、卵が割れないことには外に出られない。


 外に出られないってことは、何も食べることができない。つまり、俺以外の存在からを取り込むことができない。


 このまま何も口にできず体力が尽きれば、いつか俺は死ぬだろう。


 つまり、時間が経てば経つほど俺は不利になるのだ。



 とは言えもしかすれば、外にいる生き物が俺の卵の殻を砕いてくれるかもしれない。


 

 だがこの場合には、もっと大きなが存在してしまうことになる。



 俺自身が卵を割れない程の力しか無いということ。


 これは裏を返せば、この卵をような存在に出会った時、俺は恐らく勝てないということに他ならないからだ。



 まあ、モブとはいえ腐っても龍種。そうそうそんなことにはならないと思いたいが……




(何とか自力で脱出する。どうやらそれしか道はないな)



 内側から壊すことができないなら、何か外にある硬いものにぶつけてしまえばいい。



 俺は狭い隙間の中で何度も自分の身体の位置を変え、何とか卵を動かせないか試みる。



 ガタガタ……



 卵は揺れるが、転がりそうな気配はない。



(いや、諦めんぞ……俺は! いまやらないで、いつ頑張るんだ)





 ガタガタ……ガタガタ……





 

 ◇◇◇






 ガタガタ……




 ガタ……



 

 ……




 あれから何時間、いや、何日が過ぎたのだろう



 

 ものすごく長い時間が経っている様な気もするし、実はそれほど経っていないのかもしれない。



 真っ暗な闇の中で、周囲からは俺が立てる音以外に何も聞こえない。



 時間の経過を知る術はない。



 だが一つ言えることは、俺は確実に弱ってきているということだ。



 精神的な疲れもあるのかもしれない。



 もう激しく身体を動かすことは愚か、身を捩るのさえ億劫だ。



(ああ、モブが身の丈に合わない野望を持つからこんなことになるんだ。やっぱりあの時、大人しく耳長族を選んでればよかった)



 俺の脳裏に、ラブリエルが選ばせたがっていた耳長族の姿が浮かぶ。彼女の言葉に従っていれば、きっと今頃は美しい母親の胸に抱かれて、乳を飲んでいるに違いない。



 なんでよりにもよって蛇なんぞに転生したのだろう。




(邪竜ウロボロス……か。そういえば、ウロボロスってどんな蛇だったっけな。なんか、元の世界にも同じ名前の蛇がいたような気がするな……)




 朦朧とする意識の中俺が思い出したのは、自分で自分の尾を飲み込む蛇の絵だった。前世でそれを見た時は、なんだか気味の悪い蛇だと感じたくらいだったが、まさかそれに転生するなんて思いもしなかった。



(はは……自分で自分を食ってやがったな。はは……は……?)




 その時、俺は一つの可能性に気がついた。



 まさか、これが答えではないのか?


 自分で自分を喰らう。何とも馬鹿げた考えだが、もはや力も尽きかけ、時が解決してくれるという望みもないいま、俺が唯一取ることのできる行動は。



(だけど……)



 普通に考えれば、明らかに間違っている。そんなことをしても自分の死を早めることにしかならない。




(いや、そもそも普通って何だよ。俺は転生までしてるんだぞ? 普通あるかよこんなことって。……ないよな? 普通に考えたら……)




 俺の知っているこれまでの世界とは、多分もうその普通の基準が変わってしまったのだ。




 俺はついに、覚悟を決めた。



 ◇◇◇

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