第8話 モブは自分を呑み込んだ!


 ◇◇◇



(ッええい!! 悩んでも仕方ない!!)



 俺は自らの尾の先を、自らの口元へと持っていく。



 ピロピロと舌で舐めてみる。


 くすぐったい。


 俺はその感覚に、やはりこれは自分の身体なんだと理解する。




(いや、これは……もしかしなくても噛んだら痛いよな……)



 

 勢いで牙を突き立てなくてよかった。



 歯……立てんなよ? ってやつだ。

 

 蛇様の尾っぽは丁重に扱わないとね。ふふふ。



 これは、一択ですな。




 ……パクリ




 俺は、自分の尾の先を口で咥えた。





 ……ちゅるる





 そして、恐る恐る飲み込んでいく





(別に美味くはない。美味くはないが……)






 ……ジュルルルルル





(お……? おお……)



 

 自分でも気がつかないうちに、よほど腹が減っていたのだろうか? 喉の奥へ奥へと自然に身体が吸い込まれていく……




(すごい。なんかものすごくしっくりくる……と、いうか)




 ズロロロロロロロ……




(止まらん。 これがやめられない止まらないッてやつか……ん?)





 その時、俺は自分の身体に生じている違和感に気がついた。



 

 ミチミチミチミチ……




(あれ? なんか呑み込んだ端から、逆に身体なってない??)




 そう、自分の身体を呑み込んでも、普通ならプラマイゼロ。体積値としてはイコールのはずだ。だが……




 ミチミチミチミチミチイィッ!!




 俺の身体はどんどんと卵の中いっぱいに膨らんでいく





(あ、ヤバい。そろそろ……)




 ズロロロロロロロロロロロロ……





(狭い……)





 ズロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ……




 ギチギチギチギチギチギチギチギチッ……





(狭い狭い狭い狭い狭い狭い狭い狭いぃいいいい!!!!!!)





 ミシッ……ミシミシミシッ……




(ッ痛い!! いまなんか骨から変な音したし!!)





 ベキッ!! バキボキボキベキッ!!

 



(ッちょ!! 痛い痛い痛い痛いぃいいいい!!!!)





 ぐぐぐぐ……ゴリゴリゴリッ!! 




 骨が折れた端から繋がっていく、みるみると身体が再構築されていくのを感じる。その間も、俺の身体はどんどん卵の中で大きくなっている。




 正直俺は、頭の中ではこれ以上自分を呑み込み続けるのは危険だと思っている。



 だが、邪竜としての……ウロボロスとしての本能が、身体を呑み込むのを止めようとしない。




 ミチミチミチミチミチミチミチミチミチミチイイイイッ!!!!




(おおお……!! もう……これはッ!!)



 

 このままでは圧死してしまう!! そう俺が思った次の瞬間──





 ──ピシッ






 メキメキメキ……






 ズガァァアアアン!!!!

 




 もの凄い音を立てて、俺の卵は弾け飛んだ




 ◇◇◇

 

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