第5話 モブは転生先を厳選する
◇◇◇
「では早速、転生先を選んでいきましょ〜」
ラブリエルが嬉々として空中を指で四角く囲うと、ウィンドウが立ち上がる。
「まずは、種族ですかね〜。ヒト種であれば大きく分けて、ヒト族、耳長族、鬼族、獣人族、小人族、巨人族、魔族なんかが居ますね〜。そこからさらに細分化されていくのですが、まずはここからですかね? 耳長族はおススメですよ〜、ビジュアルや民族性にめちゃくちゃこだわったんで!! 是非見るだけでも見ていってください!!」
ラブリエルは目を爛々と輝かせて耳長族を提案してくる。ウィンドウに現れる耳長族は誰もが美形で、ハープを奏でて歌っていたり、妖精のようなものと戯れていたりする。見るからに楽しそうだが、俺の試してみたいこととは少し外れているような気がする。
「んーと、他の種族はいますか? 例えば、魔物みたいなのにも転生できるんでしょうか?」
「ッええ!? 魔物になりたい!? 萌文様はモブなんですよ!? 経験値にでも転生されるおつもりですか!?」
彼女はギョッとしながら止めにかかるが、俺は真剣だ。
「いえ、そんなつもりは全くありませんが……
「ああ、そういうことですね! そうですね、実はかなりのバリエーションがありまして〜……その他の種族としては、龍種、精霊種、幻獣種、獣種、鳥種、魚種、鉱物種、蟲種、菌種……で全部ですね。萌文様が前世で見聞きしたような種族は、基本的にこれらに内包される一部族と考えてよいかと思います」
なるほど、中々に広いな。ここで出てこなかった人魚や有翼人なんていうのは、ラブリエルの言葉通りなら魚種、鳥種の一族としてカテゴリされているのだろう。
「じゃあ、その中でも単体で一番強い種族って何ですか?」
俺は真っ直ぐにラブリエルを見つめて問いかける。
「もちろん、概ね予想はついていると思いますが、ぶっちぎりで龍種です。世界のシステム上、神を転生先に選ぶことはできないので除外されますが、龍の最上種であれば神を抑えるだけの力を持つ者もおります。後は大きく水を空けて精霊種、幻獣種……となりますが、その辺りは個体差も大きく影響するので一概には言えません」
ラブリエルは難しい顔をしている。
「う〜ん萌文様……まさか、龍種を選ぶおつもりですか? 龍種はとても気位の高い種族で、血統と力を何より重んじています。萌文様のような魂で転生しますと、恐らくは産まれ変わっても直ぐに殺されてしまいますよ?」
ふむ。そうなるか……ならば
「俺は、何とかして龍に生まれ変わりたいんです。龍種が血統を重んじるのであれば、龍種の王族なんてどうですか? 殺される心配はないのでは?」
俺はそう問いかけるが、ラブリエルの表情は真っ青だ。
「とんでもない!! 王族であれば尚更それ相応の力が求められます!! せっかく転生したのに死なれてしまってはこちらも困りますので……あッ! そういえば……ちょっとお待ち下さい」
俺は、何とかして龍種に転生したいと思っている。
理由は簡単だ。モブとはいえ、龍種は最強の種族。であれば、滅多なことがない限りその他の種族に害されることはないからだ。
そして、俺には龍種に殺されないように振る舞う算段もある。
ラブリエルはウィンドウを忙しなく操作していく。
何枚もウィンドウが切り替わり、たどり着いたのは真っ黒な龍が描かれた一枚だ。
「ありました!! 転生先の条件としては、これが最も……というより。ここ以外にありません!! この龍種は、絶対に群れを成しません。そして、自らの死の間際に一つだけ卵を産むのです。こちらであれば、産まれて直ぐに他の龍に殺されるなんてことにはならないでしょう。なんせ、周りには他の龍が居ませんからね」
ラブリエルは少し興奮気味に萌文にそう告げる
「本当ですか!! じゃあ、それにして下さい!!」
ラブリエルの熱の篭った言葉に、俺も興奮気味に応える。
「わっかりました!! では、転生先は
ラブリエルは転生先をポチッと押した。
「っあ!! っえ!? っあ!? ちょっと待ってめっちゃ物騒な名前じゃないですか!?」
「それでは良い龍生を〜〜……
パァァ……という光のエフェクトが現れて、俺の魂は送還されていった
◇◇◇
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