第4話 モブにもわかる転生講座
◇◇◇
「転生しましょう!! 萌文様からは、何か途轍もない可能性を感じます。基本的に、エキストラは世界に直接的に影響を与えるようなリソースを持ち合わせておりません。だから萌文様のような方の魂は超お買い得物っけ……ッゴホンゴホン!! ではなく、世界の為に有効に活用すべきだと思うのです!!」
こいついま、サラリと凄く失礼な事を言いかけたような気がするが……
ラブリエルは失言を誤魔化す様に、やや食い気味で続けた。
「それに!! 今生の功績が認められて、次生は転生先を選ぶことができるんですよ!? 何でもいいんですよ!? ……魂がモブなので、あくまでエキストラですけども(ボソリ)」
何というか、素直に喜べないのはやはりこの、エキストラとして転生する……というところなのだろう。
「ん〜〜。じゃあ例えば、エキストラが王様なんてのに生まれたらどうなるんですか?」
俺はやや突っ込んだ質問を投げかけた。
「そうですね〜、治世なら何不自由ない生を全うして教科書に名前だけ載ってる○○何世みたいな感じになりますかね。乱世ならあっさり死にます。モブなので」
「なるほど、しっかりスターの踏み台としての役目を果たすことになるわけ……か。そういう意味では俺が何に生まれ変わったとしても、そちらに損は無いわけですね」
「ええ、もちろん! ただ萌文様は、叶える力はなくとも引き寄せてしまう力はあるみたいです。だから…………あ、その嫌そうな顔。そうですそうです。皆まで言わなくてももうお分かりの様ですね」
ここまで聞けばバカでもわかる。
恐らく、ラブリエルが言いたいのはこうだ。お前が王になったら間違いなく碌な死に方はしないぞ、と。
「もう一つ聞いてもいいですか? いまの俺の特徴……っていうのは、どれくらい次の生に引き継がれるんですか? 例えば記憶なんてのは引き継がれるんでしょうか?」
「ええっと、いまの萌文様は魂そのものの存在なのですが、記憶とか、その額の傷と灰色の目は引き継がれるかと思います。魂に刻まれた模様……特徴は、洗い流さない限りはそのままなんです。普通は輪廻の輪をくぐる時に洗い流してしまうものなのですが、萌文様にはできれば、そのまま転生してもらいたいと思っています。今の萌文様のような魂の模様は中々珍しいので……」
ラブリエルは少し言いづらそうにしながらもそう告げる。なるほど、トラブルを引き寄せるこの体質も、洗い流してしまえば一人のモブとして快適な人生を送ることができるのかもしれない。
だが、このまま転生すれば俺は今生の記憶を含めて様々なアドバンテージを有して生まれ変わることができるわけだ。あくまでもモブとしてだが。
これは
これまでのラブリエルの話を聞いて、試したいことができたのだ。
「わかりました。じゃあこのままで結構です」
俺は少し考えてから、そう口にする。
◇◇◇
「ですよねですよね!! わかります!! そうですよね……トラブル体質でそのくせ影薄くて気味の悪い見た目を受け継いでなんて絶対嫌ですよね!! いや、ですけど傷と目の色はともかくベースだけは超美形にセットさせていただきますのでそこをなんとか……ッて、ええ!?」
ラブリエルは目を丸くして驚いている。
「え、マジっすか?」
「ええ、大真面目ですよ」
俺はニコリと微笑んでそう告げた。
「良かった〜〜!! 正直断られるんじゃないかなって思っていたんですよ〜。だってモブだし。それに私の作った世界ってまだまだ文明とかもめちゃくちゃ発展途上だし、それに魔物とか盗賊とかに普通に村滅ぼされたりするんでそういう……」
そこまで一息に語ってから、ラブリエルはまずい事を言ったという表情で、恐る恐る俺を見る。
「ええ〜と……。ラブリエルさん、一応聞いておきますが、魔物とか出たりダンジョンがあったりレベルとかステータスとかあったりしますか?」
俺は眉間に手を当て、思いつく限りのアレな要素を並べてみる。
「もちろんです!! 私、根っからのオタ天使なんで!! 剣と魔法のファンタジア!! それが私の作った世界のモットーなんです!! あ、もしかしてそういうのお嫌いですか?」
ラブリエルは、無い胸を突き出しながら腰に手を当てて得意顔で言った後に、やっぱり不安そうな顔でこちらを見た。
俺は、ふうと息を吐くと天を仰ぐ。
空が綺麗だ。
「大好物です」
どうしよう、ニヤニヤが止まらない。
◇◇◇
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