9.悩み

 事件から数日。

 あの日以来、小町との距離感をいまいち掴めず2人の間には常にぎこちない空気が漂っている。


 俺としては、一刻も早く小町といつもの関係へ戻りたいのだが、そのための行動をする勇気が中々湧いてこない。


「俺はどうしたらいいんだよ…」


 今日もできるだけ2人顔を合わせないように過ごし、眠りにつく。


 翌日、小町は俺が起きる前に学校へ向かったようだ。

 リビングの机の上にはラップがかけられた朝食と「先に行きます。温めて食べて下さい」というメモが置かれている。


「今日もか」


 最近ご飯さえも一緒に食べることがなくなってしまった。

 朝は早くに学校へ行き、夜は悠真の分だけ作り、小町は早々に部屋へこもってしまう。

 寂しい…。



 朝の学校、俺は来て早々大きなため息を吐いていた。


「おい悠真、お前最近元気ないじゃねーか」


 ついにクラスメイトでもあり俺の親友でもある樹にも心配されてしまった。

 できるだけ表に出さないようにしていたのだが、そろそろ精神的にも限界がきているらしい。


 自分でも、幼馴染に少し避けられたくらいでここまでダメージを受けるものだとは思いもしなかった。


「実は……」


 親友である樹になら話してもいいかと思い、ここ数日間の出来事を全て話した。


「はあぁぁ、全くお前らお互いのこと何もわかってないのな」


 それを聞いた樹には、すごく呆れられた。


「どういうことだよそれ」


 樹の言っていることがいまいち分からず、首をかしげる。

 小町とは2歳の時から14年間、ほぼ毎日一緒に過ごしてきて、お互い知らないことなんてないと言える。


「お互いの気持ちだよ、気持ち!」


「気持ち?そんなの聞かなくても分かるだろ」


 顔を歪め、俺の方を呆れ半分、怒り半分くらいの視線を送ってくる。


「そういうとこだぞお前」



 休み時間も授業中も樹に言われた言葉の意味を考えたが、結局なにも答えを出せないまま放課後をむかえた。


「御神先生、相談いいですか?」


 樹の言葉の答えがどうしても気になって仕方がない悠真は自身の所属する文芸部の顧問である御神瑠璃の元へ相談に来ていた。


「おうなんだ珍しい、まあいいぞ一応教師だからな」


「実はですね………ということがありまして、その答えが全く分からないんですよ」


 事情を全て聞いた先生は少し考えた後、樹と同じように大きなため息をつき、朝の樹と同じように呆れ顔になる。


「お前は、なんで気づかないかな、はぁこれは自分で答えに辿り着かないと意味がない。だから自分で考えろ」


「ちょっとそれは酷いですよ!」


 相談に乗っておきながら、何も答えを出さなかった先生に詰め寄るも、結局「私が言えることは何もない」と言われ、部室から追い返されてしまった。


 俺は何の答えも出せないまま帰路についた。

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