8,とある朝の出来事
ヂリリリリリリ
耳元でけたたましいアラームが部屋に鳴り響く。
「うぁ……んっ!!!」
アラームを止め、目を開けると目の前になぜか小町の顔がある。
しかも、ガッチリと腕をホールドされていて動けない。
なんだなんだと思い、おぼろげな意識の中、昨日のことを思い出してみる。
昨晩のこと。
「さ、そろそろ寝るか、俺は部屋に行くから小町も早く寝るんだぞー、生活リズム崩れたら大変だからな」
「いやだー!今日は一緒に寝るって言ったじゃん!」
しつこいやつだなと思い、一発小町のデコにデコピンをおみまいしてやる。
「うひゃっ!いったぁ〜、ひどいよ悠真!」
「はいはい、早く寝ろよー」
このやり取りの後、俺は一人で部屋に戻って一人で眠りについたはず。
ここに小町があるということは、寝ている間に部屋へ忍び込んできたということなる。
けどどうやってだ。俺は就寝時必ず部屋の扉には鍵をかける。キーは俺が持つ一本しか存在しないため、外から開けることは不可能。
こういうことは本人に直接問いただすに限る。
「おい、小町起きろ、おい…」
数回声をかけてみるが、全く起きる気配がない。
じゃあ全男子が夢にみる?あの方法で起こして差し上げることにする。
「小町〜起きないとキスしちゃうぞー」
「んん…」
声が届いてないのだろうか、うめき声をあげるだけで一向に瞼が開く気配がない。
「おーい、キスしちゃっていいのな?」
「はわぁー、いいよ〜」
いやいいのかよ。てかこいつ起きてんのか?
そっと確認してみるが気持ちよさそうに寝息をたてている。
キス…、一回目はちょっと緊張したけど、もう一回か、なんとも思わんな。一回やってしまったら二回目からはどうでも良くなってしまう。これは根本の問題なので直そうとしても直せない。
「本当にするからな、後悔するなよ〜」
抱きついている小町を起こさないようにそっと引き剥がし、覆い被さるようにして顔を近づける。
そして、徐々に距離を近づけていき、そっと口付けをする。
10秒、20秒、段々と息が苦しくなってくる。どちらが先に限界を迎えるかの忍耐勝負。
こうやって顔を近づけてみると改めて実感する。
(小町ってめっちゃ可愛いよな)
そう感じた瞬間、顔が急に熱くなってくる。
小町は可愛い。そう今までに出会った誰よりも可愛い。前に小町に伝えた通り、俺は小町以外の女性を可愛いなんて思ったことがないくらいには。
「ぷぅはぁ!む、無理…」
息が続かないというより、急に恥ずかしくなってしまい顔を離してしまった。さっきまではなんともなかったのに、、
顔を話した瞬間、小町の目がパチっと開き、体が起き上がる。
「へへぇ〜ん!私の勝ちー!悠真大胆だねぇ寝込みを襲うなんて」
「な、やっぱり起きて…そ、それに!襲ったわけじゃない!」
「ふーんじゃあ、なんで寝てる私に突然キスなんかしてるんですか〜?」
何も言い返せない。起こすためとはいえ寝ていることろへ勝手にキスをしたのだ。
襲っている最中だと思われてもしょうがない。
「ごめん!本当に!」
「どうしようかな〜」
「うぅ、、」
こんなところで距離が生まれたら、人生最大級に落ち込みそうだ。それだけ小町に依存していることは自分が一番自覚している。
「いいよ」
「え?」
「悠真にならいいよ、襲われても」
悠真になら襲われてもいい、その言葉を聞いた瞬間俺は小町をベッドの上を押し倒す。
本当はダメだとわかっている。
だが、ずっと側にいてほしい。いっぱい触れたいし、独り占めしていたいという気持ちが抑えられない。
ただでさえ速い鼓動がさらに速くなる。
もし誰かに小町を取られる可能性があるのならば自分のものにしてしまえばいい。
邪な考えが脳裏をよぎる。
「悠真、落ち着いて?息ちょっと荒くなってるよ」
その言葉を聞いて、我に帰る。
俺はなにをしようとしていたんだ…
一旦冷静になった後、自分のやろうとしていた事の重大さにようやく気づく。
「ごめん、俺とんでもないことしようとしてた…」
「ちょ、そんな暗い顔しないでよ、こっちも煽るようなこと言っちゃったのが悪いし、お互い様ってことでね?今のことはなかったことにしよ?」
「お互い様って…」
「いいの!気にしない!私はご飯準備してくるからじゃあね!」
それだけ言い残して小町は部屋から出ていってしまった。
俺は再びベッドに転がり、うつ伏せになる。
あの時なぜ抑えられなかったんだ。
いつもの俺なら頑張れば抑えられたはずなんだ、だって小町はただの幼馴染で…。
なのにいずれ誰かの元へ行ってしまうのかと考えると胸がぎゅっと締め付けられる。
「俺の小町なのに…」
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