6,お出かけしましょ!

「ねえ悠真、買い物いかない?」

「え、明日出かけるから今日はゆっくりしてたいんだけど」


 明日は散々連れ回された挙句、荷物持ちにされることがほぼ確実なので、今日はできるだけ体力を温存しておきたい。


「え〜行こうよ〜!だって2人でお出かけなんて久々じゃん」


 確かに同棲し始めてからは暇でも二人で出かけるなんてことはしなかった。なぜなら俺は外が苦手だから。休日はいつも小町に誘われては断ってを繰り返しており、結局最後は小町が折れる。

 そもそもいくら仲が良いとはいえ高校生にもなると同い年の女の子となんて滅多に出かけない。


「わかった!水族館にショッピングモール、夜はちょっと贅沢して外食しよう!」


 こいつはそこまでして俺と出かけたいのか。

 だけど、今言ったこと全部小町がしたいことなんじゃ、、、


「それ全部、小町がしたいことじゃないのか?」


「うっ!いやいーからさ!行こうよ!いつも断ってばっかじゃん!」


 うーん、ここまで強く言われたのは初めてだからどう断るのが正解なのか。

 いや、そもそも断るという選択肢は正解なのだろうか。いつも行きたくないという言わば俺のわがままを聞いてくれていたわけで、しかもこんなことずっとしていたら、いつか嫌われて、絶交!なんてことになるかもしれない。それは嫌だ。

 よし、行こう。明日のことなんか知るか。


「よし!じゃあ行くか小町、さっさと準備してこい!」

「アイアイサー!」


 意気込んで出てきたはいいものの、気温が高すぎる。まだ六月始まったばかりだよな?

 最近になって春と秋がめっきり仕事をしなくなったのも外出したくない原因である。春夏秋冬から冬夏夏冬に移りつつあるとでも言うのだろうか。


「上着いらなかったかもな」

「そうだねー、夏がきたーって感じの気温だよねー、これには小町ちゃんもしわしわになっちゃうよ」


 家の中はちょっと涼しいくらいの温度で過ごしていたので、外がこの暑さだと温度差でやられそうになる。

 勝手に適温へと調整してくれる服が開発されてくれと心から願うばかりだ。


「そんなところでいつまでも休んでたら、帰ってくるの遅れるぞー」

「あーい、いまいくー」


 午前10時、駅前。休日なのにスーツを着た人がちらほら見える。休日出勤というやつだろうか。

 休日に働くぐらいなら歳をとりたくないと思いながら、心の中でお疲れ様ですと労っておく。


「ここから水族館のある駅まで1時間くらいあるし、駅弁でも買ってくか?ここの焼売弁当は絶品だぞ」

「え!なにそれ食べるー!買ってー!」

「自分で買えよ、俺は食べないからな」



「ん〜!美味しい!」


 結局買ってしまった。この俺が押し負けてしまった。いつものように上手く言ってうやむやにするつもりだったのに、今回はいつもに増して勢いがありあっさり負けた。


「悠真も食べるー?ほれほれ〜」


 焼売を箸で掴んで口元に近づけてくる。

 いい匂いが漂ってきて、ヨダレが垂れそうになる。

 かぶりつこうとするとフッと焼売が移動し、小町が口にする。


「へへーん!あげないよーだ!」

「うわ、うざ」


 文句を言ったがそんなことは気にもしないで、満面の笑みで弁当を食べている。

 まあこれもこれで悪くないな。可愛いし。

 

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