5,二人の休日 

 彼女とイチャイチャしながら休日を過ごす…


 年頃の男子なら、誰もが想像したことがあるだろう。

 だか、俺の休日はいつも騒々しい。


「悠真ー!!起きろぉ〜!!!|!」

「うぁぁ、あと2時間だけぇ」

「2時間ですと!?それはさすがに寝過ぎだよぉぉ」


 俺の上にまたがって、ボンボンとお腹を殴ってくる。


「ゔっ、痛い!痛い!」

「目、覚めた?」

「覚めた!だからやめろ!」

「じゃあ私は、一足先にリビングって待ってるのだー!」


 そう言って、小町は勢いよく扉を開け、小走りで部屋を去っていく。


「今日は昼まで寝ようと思ったのにな」


 一人でぼやいていると、ブーブーと音を立てて隣に置いてあったスマホが震える。


「ん?誰だ?こんな朝早くに」


 スマホを手に取り、メッセージを確認すると、そこには“御神澪”と表示されていた。


『先輩!明日、3人で出かけませんか?スイーツバイキング行くんです!無理なら断ってもらってかまいません!!』

『全然付き合うよ、3人って俺たち以外にも誰か来るの?』


 友達と行くならわざわざ俺を誘うとは考えにくく、[3人]というところに疑問を抱いたので聞いてみる。


『私と先輩とお姉ちゃんです!今回はお姉ちゃんが奢ってくれるみたいで、1人くらいなら誘ってもいいということだったので』


 忘れていた、そういえばこいつは、先生の妹だった。

 俺が行ったら、ショッピングやなんやらで荷物持ちにされることが目に見えている。

 俺が、頭を抱えながら自分にとって良くない想像を働かせていると、再びスマホが振動する。


『じゃあ明日、商店街前の公園でお願いします』

『ああ、わかった、楽しみにしてる』


「あぁぁ、俺の貴重な休日が、荷物持ちで消えることが確定したぁ〜」

「でも、スイーツバイキングか〜、朝ごはん抜いていこ〜」


 なんだかんだ言いつつも、めちゃくちゃ浮かれている悠真であった。


 ◆


 リビングに入ると、小町がコーヒーを淹れているのが目に入る。

 毎日小町と朝食を食べるのだがコーヒーを淹れているところなんて初めて見た。

 俺が気づいてないだけで、毎朝飲んでいるのだろうか?

 そんなどうでもいいことを考えながら席に着くと、机の上には美味しそうなトーストが用意されている。


(おぉ、あんこ乗ってる、うまそ)


 てか、あいついつまでコーヒー淹れてるんだよ。

 淹れたことがないから分からないが、普通に考えて10分はかかりすぎだろう。

 お湯だって電子ケトルに入ってるやつ使えばいいだけだし。


「おい、いつまでコーヒー淹れてるんだ、トーストが冷めるぞ」

「ごめんごめん!待たせちゃって!」

「じゃあ・・・『いただきます』」


 トーストを手に取り、一口齧り付く。

 スマホでニュースを見ながら、黙々と食べる。

 チラっと小町の方を見ると、コーヒーを手に取り眉にシワを寄せている。

 コーヒーに対して、なにを考えているのだろうか。

 しばらくすると、小町はようやくコーヒーを口に含む。


「あつっ!にがっ!むりむりむり!」

「いや、飲めないのかよ」


 思わずつっこんでしまった。

 あんなにドヤァって感じで淹れてたのに、飲めないののかよ。 


「砂糖とミルク入れたら?」

「残念だったな悠真くん!なんと!砂糖とミルク切らしてます!」

「あぁ、確かに買ってこなかったな、砂糖はあったと思ってたんだが」


 また、買い物へ行った時に買うとしよう。

 それよりも、小町はまだ、コーヒーが舌に触れるたびに、熱いなり苦いなり叫んでいる。

 そんなに苦手なら最初から淹れなければいいのに。

 

「飲めないなら最初から淹れるなよ」


 悠真は、ハァとため息を吐きながら、小町からコップを取り、コーヒーを飲み干す。


「ふぇ!?なにしてるの?!」

「なにって、お前どうせ飲めないだろ」

「そ、そうだけど!そうじゃないの!」


(これって間接キスだよね?!そうだよね?!)


 小町は、顔を赤くして頬を膨らませている。

 コーヒーを飲んだだけだろう、なにがあったというんだ。


「なにに怒ってるんだよ、飲めないお前がいけないだろ」

「だって!だって!それ!間接キスじゃん!」

「え?」


 冷静になって考えてみる、小町が飲んでいたコップで、俺が飲んだ。

 明らかに間接キスだった。


「あ、えっと、そういうつもりじゃなかったんだけど…」

「う、ううん、いいの」


 顔を合わせるのも恥ずかしくなり、二人して机に突っ伏しているのだった。

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