2,廃部の危機
4時限目の授業が終わり、クラスメイト達は席を立って、一斉に食堂へ向かう。
そんな中俺は、ある人に呼び出されていたため、一人別の場所に向かっていた。
「なんですか、話って」
目的地であった旧校舎2階、俺が所属する文芸部の部室の扉を開け、奥の椅子に腰掛ける担任でもあり、この文芸部の顧問でもある“御神瑠璃”に問いかける。
「ああ、文芸部、廃部の危機だ」
「へ〜、廃部ですか〜、は!?廃部!?どうい
うことですか!なんでですか!大問題じゃないですか!」
あまりにもサラッと言ったので、思わず受け入れようとしたが、俺からしたら大問題だ。
俺が動揺していると、先生はなにを思ったのか、席を立ち上がって叫び出す。
「そうなんだよ!大問題なんだよ!楽だからこの部の顧問に立候補したのに!廃部だなんて!酷すぎるー!!!!!!」
「で、その廃部の理由とは?」
机を叩いて叫んでいる先生に俺は、平静を装いながら聞く。
「この部の関係者は、私と悠真だけだろ?そこに目をつけた卓球部の顧問が、教頭に廃部を要請したんだよ」
「卓球部の顧問がなぜ?」
「練習場所が狭いから出そうだ、それに加えて本校舎も旧校舎も教室の空きがないからな」
「でもそれは、さすがに横暴じゃありません?」
うちの学校の卓球部は、全国常連の強豪校で部員数も多いので、練習場所が狭いと言うのはわかる。でも、これは酷すぎる。
「そういえば、うちの学校って『活動報告書を出していれば廃部にはならない』って聞いたんですけど」
そのことを思い出し、先生に向かって言う。
「それはそうなんだが、なんせ卓球部だからな、そんなのは関係ないのだよ」
「は?それは意味がわからないなですが」
顔をしかめて、怒りをあらわにしている俺を見て、先生は話しを続ける。
「まあまあ、落ち着け、この話にはまだ続きがあってな」
「続き?」
「今日、教頭に呼び出されてな、2週間以内に部員を一人入部させることができたら、廃部の件をなかったことにしてくれるらしいんだ」
「まあ、無理なことを言ってくださる…」
一見すると簡単に聞こえるが、この文芸部の部室は、旧校舎2階の1番奥にあり、しかもこの部室は幽霊が出るとまで噂されている。誰も進んで入ろうとは、絶対に思わないだろう。
また、俺のコミュニケーション能力も低く、人と喋るのが苦手なうえに、人脈もないときた。
「もう、諦めましょう。廃部確定です」
「おいおい、諦めるな、一応ここに無所属の人が載っている資料持ってきたから」
御神先生は俺に、個人情報が思い切り載った資料を渡してくる。
「こんなもの、俺に渡していいんですか?」
「大丈夫だろ、悠真にそれを渡したとて、それを悪用する勇気があるものか」
「当たってるけど失礼ですね!?」
「まあ、できる限り頑張ってみます」
「じゃあ俺、戻りますね」
先生に背中を向けて、ドアに向かって歩いていると後ろから、声が聞こえ立ち止まる。
「ああ、ちょっとまて!これを持っていけ、必ず役に立つから」
「なんですか、これ」
「困った時に開いてみてくれ」
「頑張れよ、悠真」
先生からの声援を受け取り、謎の紙と資料を手に部室を出て、教室へ向かって歩き出す。
「うーん、同学年のやつらを勧誘するか?それとも先輩を勧誘するか?」
「悠真〜!なにしてるの!」
資料を見ながら、独り言を呟いて歩いていると、背後から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「小町〜、助けてくれぇ〜」
「うぉっ!?どうしたどうした!」
助けを求めるように小町に向かって言うと、いつもの悠真からは絶対に聞かない言葉に、ビックリしているのか、驚いたような声を上げ、目をパチパチしている。
「実はな…」
先程あったことを、全て小町に話すと、なるほどと頷く。
「つまり、文芸部が廃部の危機で一人部員を増やさないといけないけど、陰キャボッチの悠真には、かなり難易度が高くて困っていると」
「いや、わかりやすいけど、もっと言い方なかったのか」
「あってるならよし!」
小町は、2、3分、顎に手をあてて考えた末
「そうだ!君の親友くんに相談してみよう!いる、よね…?」
「なんでそこで言いごもるんだよ!ちゃんといるわ!お前も話したことあるだろ!」
「もぉ〜、冗談だよ、冗談!そんな本気にならないでよ、確か、高城樹くんだっけ?」
「そうだ。とりあえず、樹に相談してみる!ありがとな、話聞いてくれて」
それだけ言い残して、俺は急ぎ足で教室に向かう。
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