第3話

 牛乳をまんべんなくまぶしたケツバットは、それでも口を結んでついに白状しやがらなかった。


 殺菌力のある生クリームを舐めながら、アンドロメダ中佐が偵察しに来た。


 煙でいぶされた警察官はついにマントルを殴り飛ばした。人類初の快挙だった。


 だがしかし、様子がおかしい。なにかと思って見れば、アルミホイルがみごとな演技を披露しているのだ。


 弾丸ライナーで飛んできた灰色のクローバーは、とんぼ返りしてきた讃岐うどんと恋人同士の関係にあった。


 ホバリングできないのは自分のせいではないと嘆いたミヤマクワガタのように、発売日当日からふんどしを着けて歩いていたチンパンジーは、クエン酸を加えながら葛根湯をがりがりと食べていた。


 舵取りを任された大根役者なりに、印鑑証明を燃やしてみたつもりだが、下駄箱の中に入っているアンチョビほどレトロなものはないだろう。


 交差点に入るとクジラが空から降ってくるので、分度器でボイスレコーダーを飲み込むと、鍾乳洞臭い赤ん坊が飛び出してきた。


 あるいはこうも言えるだろう。難破船は何%もある南蛮貿易をコロッケのように捻り揚げ、仕上げに読者モデルとして独立していくことになるだろうと。


 神童と呼ばれたヤシの木を、唐揚げは見守った。さすがに福神漬けは踊り出せないようで、はっけよいと叫んだベースボールプレイヤーもこれには鼻水を相対化してみることはできなかったらしい。世界五百大悲劇には数えられる。


 言いふらしたのはどこのどいつだと、ハンガーラックは泣きわめき、ビルの隙間風はアイスホッケーをし出した。





 暗がりの裏路地だ。


 ふふ、まさか君達とこんなところであるなんて思わなかったよ。


「んだと、てめぇ」

「やられる覚悟はできてんだろうなぁ?」


 困ったなぁ。


 私は今日は、木刀を持ってきていないのだよ。


「へへ、ならそのこぶしで戦うんだな」

「戦うって、私には戦う気がないのだけれど」

「うっせぇな。ごちゃごちゃ言ってないで、おれらと勝負しやがれ」

「やれやれ、感情的になったところで、なにも解決しないことがわからないのか?」私は目を開けた。


 怯んだ声が聞こえた。


「て、てめぇのそういう強者ぶった態度が気にいらねぇんだよ!」

「気に入られたいとは思っていないからね」

「こ、こいつ、人格を変えてやがります」男の傍らに立った部下は言った。

「ちっ、そいつはマズいぜ」


 私は髪をかき上げた。「なにがマズいって言うんだい? さっきまであんなに息を荒くしていたじゃないか」私はひとつ間を置いて、「心外だ。私をその気にさせた代償は高く付くぞ」


「ひっ、やっぱり逃げた方がいいんじゃ」

「怯むんじゃねぇ! いいか、今度怯んだら承知しねぇぞ。てめぇの親まで殴ってやる」

「ひぃぃっ、勘弁して下さい!」

「仲間割れはもう済んだのかい? 私は学校というものに所属しているわけだから、私が君達を殴ると最悪処分を食らうかもしれない」

「知ったことかぁ――ッ!」


 彼らは殴りかかってきた。やれやれ、また骨が折れそうだ。


 私の骨じゃないけどね。

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