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翌日。


ヒロはいつも通り学校に行き授業を受けた。

放課後、ヒロはいつものようにバイト先であるコンビニに向かう。

コンビニに着くと店長に挨拶をして制服に着替える。

そして、レジに立ち接客を始めた。

ヒロは昨日の事を思い出していた。


(昨日は大変だったなー)


その日、ヒロはいつも通りバイトをこなし家に帰って寝た。


そして、翌日。

あくびをしながらヒロは夜勤をこなす。

深夜帯は暇な事が多い。

ヒロはレジに立ちながらバイトをどのタイミングで辞めるかを考えるのだった。


ある日の事。

ヒロはTwitterで販売の告知をしてTelegramを見つつ連絡を待っていた。しばらくして、ヒロのアカウントにメッセージが届く。


『草10g、 覚醒剤アイス1g欲しいです』


メッセージを確認してヒロはこう返事をした。


『草10g、 覚醒剤アイス1gですね。少々お待ちください』


ヒロは在庫の確認をする。

草は先日仕入れた分が残ってた。 覚醒剤アイスも(ヒロは一切やらないので)潤沢だ。

快諾し、客に返信する。


『大丈夫ですよ』


客はメッセージを確認するとすぐに返信した。


『ありがとうございます。今すぐそちらに向かいます』


数分後、客が現れた。


「こんばんわ」


客は30歳くらいの男性だった。身長175cmくらい。髪は黒髪でやや長め。顔つきは涼しげで理知的な雰囲気がある。

着ている服は白を基調とした七分のジャケットに黒いパンツといった出で立ち。首には小さ目のシルバーネックレスをしていた。

かなり育ちの良さげなイケメンである。

女遊びが好きそうな雰囲気だ。


「はい、いらっしゃいませ。こちらですね」


ヒロは大きめの封筒に入れたブツと料金を交換した。

すると、客の男がモジモジしながらこう切り出した。


「P(売人プッシャーの略語)さん、道具注射器持ってるんでここで入れてもいい? 」

「帰ってくれ」


ヒロは冷たく言い放った。こんな所で静注されたら何されるか分からない。

覚醒剤アイスをキメた男はどんな相手にも欲情するのだ。


「ごめんなさい」


男は申し訳なさそうにして帰って行った。

その後、ヒロは再びスマホを手に取りTelegramを見るのであった。


数日後の夜、ヒロがTwitterを見ていると、見覚えのあるアイコンが目に映った。

それは、あの時ヒロを叩こうとした連中の一人だ。親切にもTelegramと同じアイコンを使ってる。


(あいつらも懲りない奴等だなぁ……まあ、俺が言えた義理じゃないけど)


どうせまた何かしら因縁をつけてくるんだろうと思いスルーする事にした。


数日後。

ヒロはアルバイトを辞めた。

店長からは軽く引き止められたが、売人プッシャー専業でやっていく事を伝えたら快諾され、しかも今度 覚醒剤アイスを買いたいと申し出られた。


(病んでるな…)


ヒロはそう思わずにいられなかった。

しかし、これでいいのだろうと思った。

ヒロはバイト先で知り合った人間とは縁を切り、自分のテリトリーに入ってくる人間は徹底的に排除してきたからだ。

ヒロはそういう生き方しか出来ないのだと割り切っていた。


ヒロは今日も夜の街を歩く。

そして、珍しく草を吸いながら赤い目で廃工場のベランダから街の灯りを眺めていた。

空を見上げる。

そこには満天の星が広がっていた。


ヒロは思う。

この星々のどこかに自分と同じように生きている人間が居るのだろうかと。

そして、その人達は何を思って日々を過ごしているのだろうと。

ヒロはそんな事をぼんやりと考えながら、紫煙を夜風に乗せて吐き出すのだった。




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Pusher's Delight 芥子川(けしかわ) @djsouchou

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