第373話 最悪の魔術師の最期
『ふざ、ふざけるなぁっ……殺す、殺してやぁっ……!?』
「……もう諦めな、あんたの負けだよ」
「マオの勝ち」
凍り付く寸前にブラクはマオに怒鳴りつけるが、その姿は誰が見ても無様な姿だった。いくら抵抗しようと氷結化したブラクにマオを倒す事はできず、遂には顔以外の箇所が凍り付く。
『止めろ、離せっ……嫌だ、嫌だぁああああっ!?』
「……終わりだ」
悲鳴を上げるブラクに対してマオは一切の同情はせずに三又の杖を繰り出し、完全にブラクの身体がは凍り付いた。最早この状態では何もできず、考える事すらもできない。
ブラクを氷漬けにしたマオはその場にへたり込み、流石に魔力を使いすぎた。だが、ブラクを完全に封じ込める事に成功し、後の事は外にいるマリアに任せる事にした。
「師匠……窓を開けてください。学園長を呼びましょう」
「あ、ああ……」
マオの言葉を聞いてバルルは校舎の窓に視線を向け、今更ながらにバルルは窓を開いて外に抜け出す方法があった事を知る。黒霧に覆われていた時は窓の外側と内側は封じられていたので脱出する事ができなかったが、現在は黒霧が消えたので窓を開く事ができる。
即座にバルルは窓を開いて外の様子を確認すると、大勢の生徒が校庭に集まっていた。彼等の他にも学校の教員の姿もあり、ようやく事態を把握して生徒達の守護のために訪れたらしい。
「先生!!いや、学園長!!こっちだよ!!」
バルルは大声で校庭にいるはずのマリアを呼び出すと、人込みの中からマリアが現れた。彼女の傍にはバルトの姿もあり、彼は手を振って全員の安全を確かめる。
「マオ、ミイナ、リンダ!!無事かっ!?」
「先輩!!」
「やっほー」
「ええ、無事です!!」
マオ達の無事を確認するバルトの声を聞いて三人とも窓を開いて手を振ると、全員が無事である事を知ってバルトは安堵した。彼は校舎内に入り込まず、外で他の生徒達と共に待機していた。本音を言えばマオ達を追いかけたい所だが、生憎と学園長がそれを許してくれなかった。
しばらくしてマオ達も遂に校舎を抜け出し、他の者と合流を果たす。この時に忘れずにマカセも連れて行き、彼はすぐに都市内の治療院に送り込まれる。
「先生!!マカセの奴は……」
「大丈夫、彼はまだ生きているわ。こんなにひどい怪我なのに魔力は弱まっていないわ」
重傷を負ったマカセだったが、奇跡的に生き延びていた。マリアの言葉を聞いてバルルは安堵するが、彼女はまだ問題は残っている事を伝えた。
「先生、実はマカセの奴が残した手紙が……」
「その事は後に話しましょう。今はあれの始末が先よ」
バルルの言葉を聞き終える前にマリアはマオが氷漬けにしたブラクの対処を行うため、彼女は数名の教員と共に校舎内に入り込む――
――十数分後、校舎の屋上にてマリアとマオ達は集まった。彼女はマオが氷漬けにしたブラクを屋上に運び込み、闘技台の上に移動させた。彼女だけは闘技台の上に上がると教員達が結界を作動させる準備を行う。
「ほ、本当によろしいのですか!?」
「いくらなんでも危険なのでは……」
「誰の心配をしているの?私がこの程度の相手にやられると思っているの?」
「い、いや!!そういうわけでは……」
「いいから先生の言う通りにしな!!ほら、早く!!」
マリアの指示を受けた教員は不安そうな表情を浮かべながらも結界を作動させ、闘技台を緑色の障壁が取り囲む。改めてマリアは氷漬けにされたブラクに視線を向けると、彼女は杖を構えた状態で空を仰ぐ。
数秒後、遂に夜明けを迎えて朝日が昇り始め、学園内に太陽の光が差し込む。その瞬間、氷漬けにされていたブラクの身体にも太陽が降り注ぎ、それを見たマリアは杖を構えて魔法を唱える。
「ボム」
マリアの手にした杖から小さな火球が出現すると、ブラクの元に目掛けて放たれる。かつてマリアはこの魔法で結界を破壊した事もあり、彼女の生み出した火球がブラクに触れた瞬間に爆発した。
――ぎゃあああああっ!?
火球が爆発した瞬間に凍り付いていたブラクの身体は爆炎によって溶かされ、同時に太陽の光を浴びてしまう。ブラクの肉体は燃え盛り、徐々に身体は灰と化す。いくら怨霊といえども灰と化した死体に憑依する事はできず、ブラクの身体から黒色の煙が噴き出す。
この黒煙こそがブラクの存在そのものであり、死して尚も闇属性の魔力と同一化する事で消滅をさけられたブラクの魂も太陽の光によって浄化されていく。それを結界越しにマオ達も見届け、マリアは最後に杖を繰り出してブラクの魂がひとかけらも残さないように魔法を放つ。
「フォトン」
マリアの杖から今度は光球が放たれると、その光を浴びた瞬間にブラクの魂は跡形もなく消え去り、こうして魔法学園で史上最悪の事件を引き起こした悪名高き魔術師は消滅した――
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