第347話 コウガの奇策
「待って!!こいつの右腕は……」
「何!?」
「ふんっ……もう遅い」
バルトが攻撃を仕掛ける前にミイナは止めたが、先ほどの攻防でバルトはミイナの繰り出した爆爪から魔力を吸収し、剛魔拳は既に発熱していた。熱を帯びた剛魔拳を見てマオは危険な予感を抱き、すぐに二人に注意した。
「ミイナ、先輩!!気をつけて!!」
「うおおおおっ!!」
コウガは発熱した状態の剛魔拳を振りかざし、真っ直ぐにバルトの元へ向かう。それを見たバルトは焦った表情を浮かべ、自分の身を守るために風の障壁を作り出す。
「ウィンドカーテン!!」
「先輩、駄目です!!」
「逃げてっ!?」
「もう遅いっ!!」
風の防護膜を作り出したバルトは攻撃に備えたが、それを見たマオとミイナは危険を察して注意した。しかし、コウガはバルトの元に迫り、彼はバルトを直接殴る事はせずに地面に剛魔拳を叩き込む。
先ほど吸収した魔力を利用してコウガは剛魔拳を地面にめり込ませ、その状態から一気に魔力を解放させる。先ほどのミイナの「爆爪」のように地面に突っ込んだ剛魔拳から爆炎が生じると、大量の土砂が吹き飛んでバルトへと襲い掛かる。
「うわぁっ!?」
「先輩!?」
「早く離れて!!」
大量の土砂が巻き上がった事で土煙が発生し、バルトとコウガを包み込む。二人の姿が見えなくなったのでマオとミイナも援護ができず、バルトに逃げるように促す事しかできない。
(くそっ!?何処に消えた!?)
幸いにも風の防護膜によってバルトは土砂から身を守る事に成功したが、周囲を土煙に包み込まれた事で彼は完全にコウガを見失ってしまう。何処から現れるのかとバルトは警戒していると、彼の背中を何者かが掴む。
「がああっ!!」
「うわぁっ!?」
風の防護膜に守られているにも関わらずにバルトは背中を掴まれ、強制的に引きずり出される。コウガは剛魔拳の特性を生かしてバルトの魔法で造り出した風の防護膜を貫通し、そのまま彼の魔法を吸収しながらバルトを持ち上げた。
風属性の魔力を取り込んだコウガはバルトの背中を持ち前の怪力で持ち上げ、土煙が晴れるとマオとミイナに目掛けてバルトを放つ。
「避ければこいつは死ぬぞ!!」
「なっ!?」
「そんなっ!?」
「うわぁあああっ!?」
バルトの背中を掴んだ状態でコウガはマオとミイナに向けて投げ放つ。この時に剛魔拳が吸収した風の魔力を利用し、突風を発生させて投げ飛ばしたコウガを後ろから風圧で吹き飛ばす。
凄まじい勢いで突っ込んでくるバルトを見てミイナとマオは身構え、もしも避けたらバルトは遥か前方に飛ばされて障害物に衝突して死んでしまうかもしれない。しかし、避けなければマオとミイナが危ない。
(駄目だ、避けたら先輩が……!!)
迫りくるバルトの姿を見て魔法が使えないマオはどうしようもなかったが、この時にミイナはマオの所持する三又の杖に気付く。
「マオ!!その杖!!」
「えっ!?」
ミイナの言葉にマオは衝撃の表情を浮かべ、まだ先ほどの闇属性の魔力の影響で彼は魔法は使えない。だが、三又の杖には風属性の魔石が装着されており、それを見たマオはある事に気付く。
闇属性の魔力の影響でマオは魔法は使えないが、それはあくまでも体内の魔力が乱れているからであり、外部から取り込んだ魔力ならば使える可能性がある。風属性の適性も持っているマオは魔石を使用すればある程度の風の魔力を操作する事はできた。
(そうか!!)
魔法を使えないと思い込んでいたマオだったが、三又の杖に装着した風の魔石を利用して彼は右手を伸ばす。そして右手の魔術痕から風の魔力で渦巻を作り出すと、バルトを受け止めようとした。
「先輩!!」
「うおおっ!?」
「にゃうっ!?」
「なっ……何だと!?」
魔石の魔力を使い切る勢いでマオは右手から魔力を噴き出すと、風の魔力で形成した渦巻から発生した風圧を受けてバルトの勢いが弱まる。それを見たミイナはマオと共にバルトの身体を受け止めると、どうにか抑える事に成功する。
「はあっ、はあっ……し、死ぬかと思った」
「先輩、無事で良かったです」
「……重い」
バルトはマオとミイナに受け止められる形となり、幸いにも大きな怪我はなかった。しかし、彼を助けるためにマオは魔石の魔力を使い切ってしまい、これで魔法の強化は行えない。
悉く自分の策を無効化するマオ達にコウガは苛立ちを抱き、同時に焦りも感じていた。ここで三人を確実に始末しなければ後で後悔する事になるという直感が働き、コウガはもう小細工を辞めて正面から突っ込む。
「くたばれガキ共ぉっ!!」
「うわぁっ!?」
「マオ、魔法はまだ使えないの!?」
「やってみる!!」
迫りくるコウガに対してミイナはマオに振り返ると、先ほどは魔石を利用して風の魔力を操る事ができたマオは試しに三又の杖の杖を構える。意識を集中させると三又の杖に小さな氷を作り出す事に成功した。
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