第318話 学園の秩序を守る者として
「……確かに不穏な気配を感じたのですが、気のせいでしたかね」
廊下に現れたのはこの学園の生徒会長である「リンダ」だった。ブラクは学園に潜入した際、生徒の中では彼女を一番警戒していた。
リンダは魔法学園の生徒の中でも指折りの実力者であり、この学園に通う魔拳士の生徒の中でも最強に位置する。ブラクが彼女を警戒した理由は上級生と合同で行う授業でリンダはたった一人で上級生どころか指導役の教師すらも倒したからだった。
(この女が何故ここに……いや、それよりもどうしてこいつから魔力を感じられない!?)
彼女の実力を知っているだけにブラクは警戒心を高め、このリンダという少女は年齢はまだ若いがその実力は侮れない。それに現在の彼女は何故か魔力を一切感じられず、不審に思ったブラクはリンダの様子を伺うと、彼女の腕に吸魔腕輪が嵌め込まれていた。
(あの腕輪か!?あの腕輪が奴の魔力を封じているのが!?)
理由は不明だがリンダは右腕に吸魔腕輪らしき腕輪を装着しており、それが原因なのか彼女の魔力は極限にまで抑えられていた。至近距離まで近づかなければ彼女の魔力を感じ取れないほどであり、ブラクが気づかなかったのも無理はない。
(ふん、生徒会長でありながら何らかの罰を受けて腕輪を嵌め込まれたのか?いや、それはこの女の性格からして有り得ないか……だが、これは好機だ)
どうしてリンダが夜中の学校に一人で徘徊しているのかは不明だが、ブラクは彼女を仕留める好機だと判断した。もしも学生寮に忍び込む際、彼女がいたら最大の障害になっていた可能性があるが、この機会に彼女を先に始末する。
リンダさえ始末すれば女子生徒の中で警戒すべき相手はミイナぐらいであり、まずは彼女を仕留めるためにブラクは影と一体化した状態でリンダの背後に移動する。如何に武道の達人であろうと影と一体化したブラクを見抜く事はできず、簡単に背後に回る事ができた。
(死ねっ!!)
後方へ回り込んだブラクはリンダの背中に手を伸ばすと彼女の身体に影の触手が纏わりつく。リンダは唐突に出現した影の触手に身体を拘束され、首元を締め付けられて苦痛の表情を浮かべる。
「がはぁっ!?」
「おっと……腕輪が落ちたら大変だな」
ブラクはリンダを影魔法で拘束すると、彼はこの際に腕輪には触れないように気をつけた。理由は不明だがリンダは腕輪を装着しており、この腕輪こそが彼女の魔力を抑えつける役割をしていた。
どうして彼女が吸魔腕輪など身に付けているのかは不明だが、ブラクは笑みを浮かべてリンダの首元を締め付ける。リンダは苦し気な表情を浮かべてもがこうとするが、如何に彼女であろうと影魔法を力ずくでは対抗する事はできない。
「くくくっ……まずは一人目だな」
「う、ぐぅっ……!!」
影の触手の拘束を強めてブラクは一思いに止めを刺そうとした時、彼は違和感を感じ取った。それはリンダの装備している腕輪をよくよく観察すると、彼が知っている吸魔腕輪とは微妙に
(何だこれは……吸魔腕輪じゃない!?)
ここでブラクはリンダの装備している腕輪の正体が吸魔腕輪出はない事に気付き、一方で影の触手に拘束されたリンダは目を見開くと、彼女は全身から風の魔力を纏わせて周囲に風圧を放つ。
「はあっ!!」
「ぐあっ!?」
リンダが気合を込めた声を上げた瞬間、衝撃波の如き風圧が発生してブラクは吹き飛ばされた。この際に影の触手も消え去り、リンダは床に降り立つとブラクを睨みつけた。
思いもよらぬ反撃を受けたブラクは戸惑い、どうして彼女が魔法を扱えるのかと焦りを抱く。リンダの装着している腕輪は吸魔腕輪ではないようだが、それでも彼女の魔力を抑制しているはずだった。そうでもなけばブラクが彼女の魔力を感知できないはずがない。
「お、お前……いったい何をした!?どうして魔法を……」
「何者かは知りませんが、どうやら侵入者の様ですね……学園の生徒会長として貴方を拘束します」
「くそっ……調子に乗るなよ小娘が!!」
ブラクはリンダの言葉を聞いて激高し、彼は全身から影の触手を生み出す。拷問のような尋問を受けていたので本調子とは言えないが、それでも夜なので彼は影魔法の力を全開で引き出せた。
「死ねっ!!」
「これは……授業で見た事があります。なるほど、影魔法とやらですか……ですが、そんな物は私には通じません」
影の触手が迫る光景を見てリンダは右腕に意識を集中させると、風の魔力を纏わせて竜巻を生み出す。右腕に竜巻を纏った彼女はブラクに手を伸ばすと、距離があるにも関わらずに拳を突き出す。
「嵐弾!!」
「ちぃいっ!?」
螺旋状に渦巻く風圧がブラクの元に迫り、直撃を受けたらまずいと判断したブラクは全身に影の触手を絡みつかせて防御の体勢に入った。そのお陰でリンダの撃ち込んだ嵐の砲弾を防ぐ事はできたが、彼女はすかさずに追撃を繰り出す。
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