第284話 不良生徒
「ふん、まあいい。今日は見逃してやるからさっさと行け」
「は、はい!!」
「すいませんでした!!」
「おい、行くぞ!!」
バルトの言葉にマオの同級生達は走り去り、その様子を見送ったマオは安堵するが、バルトはそんな彼の肩に手を置く。
「よう、災難だったな」
「先輩、助けてくれてありがとうございます」
「気にすんなよ、友達だろ?」
学年は違うがバルトはマオの事を友人として扱い、彼が絡まれているのを見る度に助けてくれた。最近はマオに絡む同級生が多く、その大半が成績不良の生徒達だった。
「三年生になると一気に授業が難解になるからな。さっきの奴等の胸を見たか?星の徽章を一つも持っていなかった。だから月の徽章を持つお前に嫉妬してるんだろ」
バルトはマオの胸元に付けている月の徽章を指差し、この学園では月の徽章を持つ生徒は様々な特権を与えられ、その内の一つが星の徽章が無くても上の学年に上がる事ができる。
一般生徒の場合は学年の数に応じた星の徽章を手に入れなければならず、もしも年内に既定の数の徽章を揃えられなければ留年かあるいは退学を言い渡される。星の徽章を得るためには授業で教師に評価されなければならず、従って普段から素行の悪い生徒ほど徽章を得られる可能性は低い。
「一年生と二年生の頃は魔法の基礎しか教えないからな。だが、三年生に入るとそれぞれの属性に見合わせた魔法の応用を考えないといけない。だから今まで以上に授業が難解になるんだ。まあ、俺達には関係ないけどな」
「そうなんですか……」
「三年生になると退学者が出始める。大方、来年の今頃はあいつらもいなくなっているかもな……」
マオに絡んできた同級生は成績が悪くて星の徽章を与えられず、だからこそ月の徽章を持つマオに嫉妬して絡んできた。彼等からすれば自分達よりも魔力量が劣るはずのマオが月の徽章を持っている事に納得しておらず、嫉妬心からマオに絡んでくるのだろう。
「だからって変な同情するなよ。あいつらがもしも上の学年に上がれなくてもあ奴等の努力不足のせいだ。変にお前が気にする必要はないからな」
「あ、はい」
「さてと、そういえば昨日は何処に行ってたんだ?あんな手紙を残しやがって……色々と聞かせろよ」
「あ〜……そうなりますよね」
バルトに言われてマオは昨日は彼に手紙を残していった事を思い出し、仕方がないのでバルトにだけは何が起きたのか話す事にした――
――その一方でバルトに追い払われた不良生徒達は学生寮の裏に集まっていた。彼等は気に入らない表情で杖を握りしめ、苛立ちを晴らすように魔法の練習を行う。
「くそ、あいつ……バルト先輩に可愛がられてるから調子に乗りやがって!!」
「先輩もなんであんな奴に気を掛けるのかな……」
「さあな、同じ月の徽章を持っているからじゃないのか?」
不良生徒達はマオがバルトに庇われた事が気に入らず、バルトは下級生の間では人気があった。一時期は荒れていたが、ある時に学園長から月の徽章を与えられたバルトは素行を改めて現在は真面目な生徒になった。
元々の彼は努力家で面倒見のいい性格をしており、下級生に魔法の指導を行う事もあった。教師よりも年齢が近いだけに生徒達も気軽に接する事ができるため、マオに絡む不良生徒達すらもバルトの事を慕っていた。
「くそ、許せねえ!!なあ、あいつを誘き出して痛めつけようぜ?」
「えっ?そこまでしなくても……」
「バレたらやばいだろ……」
「何だよ、怖気づきやがって!!」
一人の生徒がマオを呼び出す事を提案したが、流石に他の生徒達はしり込みする。彼等は普段から素行の悪さで教師や生徒会に目を付けられており、問題を起こすと下手をしたら留年かあるいは退学を言い渡せる可能性もある。
「も、もうあいつに絡むのは辞めようぜ。先輩も味方だしよ……」
「馬鹿野郎!!お前は悔しくないのかよ!?あんなちゃちな魔法しか使えない奴が月の徽章を与えられるなんて!!」
「ちゃちな魔法って……そんなの、最初の頃の話だろ?お前、あいつが今はどんなに凄い魔法使えるのか聞いた事ないのか?」
マオはかつては氷の欠片程度の魔法しか作り出せなかったが、今ではその数十倍の大きさの魔法を作り出す事もできる。それにマオが魔物退治や盗賊などを捕まえた話は学園の間でも話題になっているため、不良生徒達も彼が怒らない範囲の嫌がらせ程度しかできなかった。
しかし、興奮した不良生徒の一人はマオがバルトやミイナと仲睦まじい事に嫉妬心を抱き、彼は何としてもマオを罠に嵌める事を誓う。
「俺はやるぞ!!俺だって最近、やっと中級魔法を覚えたんだ!!」
「いや、でもマオの奴は中級魔法が使えたバルト先輩にも勝ったんそうだぞ?」
「そ、そんなのはただの噂だろうが!!」
不良生徒はマオの実力を認めず、機会があれば自分の手で彼を倒す事を誓う。この時に建物の陰から人影が現れ、不良生徒達の元に近付く。
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