第273話 追われる馬車
「んっ……な、何だあれ!?」
氷板で移動の際中、マオは草原を移動する馬車の一団を発見した。商団の馬車だとは思われるが、どの馬車も全速力で馬を走らせていた。その理由は後方からボアの群れが迫っていたからである。
『フゴォオオオッ!!』
本来であればボアは山や森に生息し、滅多に草原に出てくる事もない。それにも関わらずに複数のボアが商団の馬車を追いかけている事にマオは疑問を抱き、とりあえずは先頭を移動する馬車の元へ向かう。
「あの、大丈夫ですか!?」
「うわっ!?な、何だお前は!?」
「あ、驚かせてすいません……」
先頭を走る馬車の御者にマオは話しかけると、御者の男性は氷塊に乗って移動を行うマオに心底驚いた表情を浮かべた。しかし、すぐにマオの正体に勘付く。
「そ、空を飛んでいる!?まさか、あんた魔術師か!?」
「えっと、一応は……」
「な、何でもいい!!魔術師ならあいつらを追い払えないか!?もうずっと追いかけられてるんだ!!このままだと馬が持たねえっ!!」
御者の男性は馬車の後方を尾けるボアの群れを指差し、どうやらマオが発見する前からずっとボアが追いかけてきているらしい。本来ならばボアは群れで行動するような魔物ではないが、ともかくこれ以上に走り続ければ馬車の馬が限界を迎えていずれは追いつかれる。
馬車の後を追うボアは少なくとも10体は存在し、これらを一気に仕留めるのはマオでも難しい。しかし、ボアの足止め程度ならば難しくはなく、御者の男性に声をかけた。
「このまま走り続けてください。あいつらは何とかしますから」
「た、助かる!!後で旦那様に事情を説明するから、もしも助かったら必ずお礼を渡してくれるぞ!!」
「分かりました」
マオは氷板の移動速度を少し落として全ての馬車を先に行かせると、後方から追いかけてきたボアの群れと向き合う。ボアは横一列に並んで移動しており、その行動にもマオは疑問を抱く。
(何だこいつら……こんな動きをするなんて普通じゃない)
まるで馬車を逃がさないように横一列に並んで走るボアにマオは疑問を抱き、それでも彼は時間を稼ぐために行動を開始した。彼にとっては都合がいい事に横一列に並ぶボアを見てマオは一番端のボアの側面へと移動する。
「こっちこっち!!」
「フゴォッ!?」
手拍子しながらマオはボアの注意を引こうとするが、ボアはマオに視線を向け乍らも足を止めず、あくまでも馬車の追跡に専念していた。
(普通の魔物なら
ボアの群れがマオに気付きながらもあくまでも商団の馬車を追いかけ、それを確認したマオは不思議に思いながらも杖を構えた。横一列に並ぶボアを一網打尽にするため、三又の杖を構えた。
攻撃を仕掛ける際にマオは収束術で通常以上に魔力を込めた氷塊を生み出し、十分に魔力を込めると杖を振りかざして一番端を移動するボアに叩き込む。
「喰らえっ!!」
「プギャアッ!?」
「フガァッ!?」
「フゴォッ……!?」
端を移動していたボアが氷塊を受けて吹き飛ぶと隣を移動していたボアが巻き込まれ、更にその隣のボアも巻き込まれて倒れていく。まるでドミノ倒しのようにボアの群れは次々と仲間を巻き込んで倒れ込み、その間に馬車は距離を開く。
「よし、これで時間は稼げたかな」
『フゴォオオオッ!!』
「……後はこっちをなんとかしないと」
追跡の邪魔をされたボアの群れはマオに対して殺気を抱き、標的を馬車から彼に変えて突進を繰り出す。10体近くのボアに襲われるのはマオも初めてだったが、彼は氷板を浮上させてボアから逃れる。
「じゃあね」
「フゴォッ!?」
「フガァッ!!」
空を飛んだマオを見てボアの群れは慌てて追いかけるが、いくらボアといえども空を飛ぶマオに攻撃を仕掛ける事はできない。馬車の反対方向にボアを誘導すると、マオは十分に距離が離れられたと確認するとボアから逃れるために魔法を繰り出す。
(ちょっと脅かそうかな)
空の上に居れば安全なので魔法を繰り出してボアを仕留める事はできるが、流石に10匹近くのボアを倒すのには時間が掛かり、そもそも素材を持ち返る方法がない。そのため、マオはボアの討伐ではなく追い払う事にした。
今度は変換術を利用してマオはまずは氷塊を作り出し、そこからさらに回復させた魔力を利用してより大きな氷塊を作り出す。空中で巨大化していく氷塊を見てボアの群れは戸惑い、その一方でマオは悪戯心を抱いて氷塊の形を変化させる。
(流石にこれぐらいの大きさの氷塊を変形させるのはきついな……けど、やれない事もないか)
氷塊の規模が大きいほどに氷の形を変形するのは精神力を消耗するが、それでもマオはボアを驚かせるために氷の巨人を作り出す。外見はロックゴーレムを参考にしており、名前は「
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