第265話 洞窟

「あ、そうだった。ロックゴーレムの核は胸元の部分にあるのか……」



ノートを開いてマオはロックゴーレムの情報を再確認すると、ロックゴーレムは主に胸元の部分に核と呼ばれる魔石が存在し、胸元の部分を破壊すれば核を回収できる事が判明した。


ロックゴーレムの情報を確認し終えたマオはノートを鞄に戻し、改めてグマグ火山に視線を向けた。火山からまだ大分距離はあるが心なしか気温が高くなったような気がするため、ここから熱耐性の高い赤毛熊のマントを身に付ける。



(よし、行こう)



赤毛熊のマントで熱を遮断しながらマオはグマグ火山に向けて氷板を再び発進させた――






――目的地であるグマグ火山に到着するとマオは異様な熱気に襲われ、もしも赤毛熊のマントを身に付けていなければ耐え切れなかったかもしれない。



「うっ……ここが火山か、何か変な臭いがするな……」



火山に到着したマオはあまりの熱気に顔をしかめ、しっかりとマントで身を包んだ状態で移動を行う。あまりの熱さにマオは魔法で氷を作り出して額に押し当てる。



(想像以上に暑い……このマントがなければやばかったかも)



赤毛熊のマントのお陰で身体に襲い掛かる熱は大分和らげるが、それでもあまりの熱さにマオは氷を定期的に作り出す。しかし、折角作り出した氷も火山の熱気のせいですぐに溶けてしまう。


あまりの熱さにマオは頭がくらくらとしてきたが、水筒で水分を補給する事で意識を覚醒させる。ここまで来た以上は引き返すわけにはいかず、意地でもロックゴーレムを見つけ出して魔石を回収する事を誓う。



(ここまで来たんだ、必ず手に入れて帰らないと……)



何の成果も無しに王都へ戻るわけにはいかず、マオは火山の麓から移動を行う。最初は氷板を使用して移動を考えたが、火山の熱気のせいで氷はすぐに溶けてしまい、短時間しか氷を維持できなかった。



(ここからは歩いて探すしかないか……早く見つかると良いけど)



火山という環境はマオにとっては最悪の環境下であり、彼の作り出す氷がすぐに溶けてしまう。マオはとりあえずは麓から頂上部に向けて移動を行い、ロックゴーレムらしき存在を探す。


学校の授業ではロックゴーレムは普段は岩石などに擬態しているらしく、獲物が近付いた時に襲い掛かるらしい。そのためにマオは岩を見かけた時は用心して近付かず、離れた位置から小石を投げて様子を伺う。



「あ、岩だ……えいっ」



岩を発見したマオは足元の小石を拾い上げて投げ込み、岩に当てて様子を伺う(魔法で攻撃をしないのは余分な魔力の消費を抑えるため)。岩が何も反応しない事を確認すると溜息を吐き出す。



「これも外れか……はあっ、早く見つからないかな」



火山に居る事に苦痛を感じてきたマオはロックゴーレムが早く見つかるように祈るが、彼は移動の途中で思いもよらぬ物を発見した。



「あれ?これって……足跡、かな?」



頂上に向かう際中にマオは足跡らしき窪みを発見した。足跡の大きさから確認すると相当に大きく、大人の巨人族ぐらいの大きさを誇る。



「これ、もしかしてロックゴーレムの足跡かな?もしかしたら巨人族の足跡かもしれないけど……」



足跡を発見したマオは危険を承知で足跡を追いかけ、この時に彼は三又の杖を取り出す。何時襲われても対処できるように戦闘準備を整え、彼は足跡を辿って走り続けると洞窟を発見した。


足跡が洞窟に続いている事を確認したマオは立ち止まり、中の様子を伺うが大分奥まで続いているのか日の光が届かない。マオは洞窟に入るべきか悩み、杖を取り出して考え込む。



(ランタンも持ってきてるから灯りで照らす事もできるけど、もしも洞窟で襲われたら面倒な事になるな……)



洞窟内でロックゴーレムと遭遇して先頭になった場合、下手に氷柱弾キャノンなどの強力な魔法を繰り出せば洞窟が崩壊してマオは生き埋めになる可能性が高い。しかし、足跡は洞窟の奥に続いており、どうするべきかマオは悩む。



(どうしよう……)



洞窟の中を進むべきかどうかマオは悩み、彼は鞄からランタンを取り出す。ランタンに火を灯したマオは洞窟を確認して中に入るべきか悩む。



(洞窟で襲われたら逃げるしかない。けど、もしも逃げ切れなかったら……ああ、もう!!)



悩んでいる間も熱気に襲われてマオは正常な判断ができず、悩んでいる間にも時間が過ぎていく。彼は悩んだ末にランタンを掲げて洞窟の中に入り込んだ。



(少し奥まで入ったらすぐに引き返そう。もしかしたらそんなに奥まで続いていないかもしれないし……)



何の根拠もないのにマオは不用意に洞窟の中に入り込んでしまい、彼は洞窟の中をランタンで照らしながら突き進む。しかし、この時にマオは気付かなかった。彼が入った途端に洞窟の出入口付近の岩壁にが浮き上がった。

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