第264話 三又の杖の新機能
「ガアアッ!!」
「グルルルッ……!!」
「シャアアアッ!!」
「はあっ……よし、掛かってこい!!」
魔獣の群れに取り囲まれたマオは心を落ち着かせると、改めて両手で杖を構えた。すると痺れを切らしたコボルトがマオに目掛けて突っ込む。
「ガアアアアッ!!」
「――
コボルトが飛び込んできた瞬間にマオは杖を構えると、三つの先端から氷弾を同時に繰り出す。コボルトは正面から三つの弾丸を同時に受けて吹き飛び、悲鳴を上げながら倒れ込む。
「ギャアアッ!?」
「ガウッ!?」
「シャアッ……!?」
散弾銃の如くばらけて放たれた三つの氷弾を受けたコボルトは地面に倒れたまま痙攣し、やがて事切れたのか動かなくなった。それを確認したマオは安堵するが、今度はファングの群れが同時に襲い掛かってきた。
『ガアアアアアッ!!』
「くっ……
一斉に飛び掛かってきたファングに対してマオは三又の杖の先端部を摘まむと、指に力を込めて弾いた途端に先端部が《回転》する。これがドルトンに付けくわえられた三又の杖の新しい機能だった。
ドルトンに頼んでマオは三又の杖に回転機能を加え、先端部が回転させた状態でマオは氷弾を発射した。まるでガトリング砲のように氷弾が次々と高速回転する先端部から発射され、飛び掛かろうとしたファングの群れを撃ち落とす。
「はああああっ!!」
「ギャウッ!?」
「ギャインッ!?」
「ガアッ!?」
「シャアッ……!?」
次々と空中に浮かんだファングの群れが乱射された氷弾に撃ち抜かれ、それを見ていた魚人は巻き込まれる前に慌てて川の中に飛び込む。やがて10秒ほど経過するとマオの立っている岩の周囲にはファングの群れが倒れ込み、氷弾を受けてまともに動けない様子だった。
「ガアアッ……!?」
「ガハァッ……!?」
「グゥウッ……!?」
「はあっ……これ、やっぱりきついな」
額の汗を拭いながらマオは先端部分が回転する三又の杖をしまうと、倒れている魔獣の群れに視線を向けた。まだ生きている魔獣もちらほらと見かけたが、今回の目的は魔物退治ではなく、あくまでもグマグ火山のゴーレムから核を回収するために動かねばならない。
今は倒した魔獣から素材を回収する余裕はなく、マオは倒した魔物を放置して先に進む事にした。これ以上に邪魔が入らぬうちに彼は氷板を作り出し、空から川を通り抜ける。
「悪いけど、後始末は頼むよ」
去り際にマオは川の中に潜り込んだ魚人に語り掛けるように呟くと、彼が立ち去った後に魚人は再び陸地に姿を現わす。
「シャアアアッ!!」
『ッ……!?』
残された魔獣の群れに魚人は涎を垂らし、この数分後には岸辺に倒れていた魔獣の群れは見るも無残な死骸と化した――
――思わぬ
「はあっ、はあっ……やっと見えた!!」
途中で何度か休憩を挟み、ようやく目的地付近まで辿り着いたマオは地上へ降り立つ。流石に体力も魔力も限界のため、マオは持って来た水と食料で体力補給を行い、この時に魔力回復薬を1本だけ飲む。
「ふうっ、流石に寝ずにここまで移動するのはきつかったな。けど、思っていたよりも早く辿り着いたぞ」
まだ時間帯は昼を迎えておらず、想定よりも早くに目的地に辿り着けそうな事にマオは喜ぶが、ここからが一番の難関だと気を引き締める。
(あの火山に生息するゴーレムを倒して核を回収しないと……確かゴーレムの弱点は水だったな)
ゴーレムに関する知識も魔法学園の授業で習っており、ゴーレムといっても様々な種類が存在する。例えば山岳地帯に生息するゴーレムは外見が岩石のような見た目をしている事から「ロックゴーレム」と呼ばれるが、世界には他にも様々なゴーレムが存在する。
砂漠地方に生息するゴーレムは「サンドゴーレム」と呼ばれ、名前の通りにこちらのゴーレムは肉体を構成するのは岩石ではなく、砂の塊であるという、煉瓦や金属で構成されたゴーレムも存在するらしく、環境によってゴーレムは様々な形態変化を行う。
(今回の目的のゴーレムは確かロックゴーレムのはず……ロックゴーレムの体内にある核を回収すればいいんだっけ)
山岳地帯に生息するのはロックゴーレムであるため、マオはロックゴーレムを見つけ次第に倒して核を回収する事を決めた。しかし、ここで気になったのは核の回収方法だった。
(あれ?そういえばゴーレムはどこに核があるんだっけ?)
慌ててマオは鞄からノートを取り出すとロックゴーレムの情報を記述したページを開く。マオは授業で習った魔物の情報はノートに書き込み、念のために持って来た事が功を奏した。
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