第263話 川に潜む魔物
「ふうっ、ちょっと休憩しようかな……」
川に辿り着いたマオは氷板から降りると水筒を取り出し、川の岸辺にある大きな岩の上に乗り込む。周囲を警戒しながらもマオは身体を休ませ、この時に座禅を行う。
精神鍛錬の修行は毎日欠かさずに行い、マオは自力で魔力を回復させる事ができた。座禅を行えば数十秒程度で魔力を完全に回復する事ができるようになり、しかも最近分かった事だが水場のような場所だとマオの魔力の回復速度が速まる事が判明した。
(……不思議な感じだ。何だか妙に落ち着く)
川の岸辺にてマオは座禅を行い、魔力の回復に集中していると彼は自分の周囲に何かが存在するように感じた。目を開いて周囲を確認しても生き物の姿は見えないが、目を閉じて意識を集中させると何故か自分の近くに気配のような物を感じ取る。
(何だろう、この感覚……)
まるで誰かに見守られているような感覚を味わいながらもマオは意識を集中させ、魔力を完全に回復させた。いつもならば精神鍛錬の後は体力を消費して軽い気だるさを覚えるのだが、今回は全く体力も減っていない。
「おかしいな、ここまで移動するのにかなり魔力を使った気がするのに……まあ、いいか」
水場の近くで精神鍛錬を行うと魔力の回復速度も高まり、体力も殆ど消費せずに魔力を取り戻せる事を再確認したマオは立ち上がると地図を取り出す。地図を確認すると彼の想像以上に順調に進んでおり、あと数時間もすれば目的地に辿り着けると思われた。
「思ったよりも早く辿り着けそうだな。でも、流石に少し眠い……」
眠気を覚えたマオは頭をすっきりさせるために川の水で顔を洗おうとした時、水面に視線を向けるとマオは違和感を感じ取る。川の中に何かが沈んでいる事に気付いたマオは咄嗟に杖を取り出す。
水中に巨大な何かが沈んでいるのは間違いなく、マオは慎重に川から離れようとした瞬間、水飛沫が舞い上がって思いもよらぬ魔物が姿を現わす。
「シャアアアッ!!」
「さ、鮫!?」
川の中から現れたのは何故か鮫であり、本来は海に生息する生き物が現れた事にマオは驚く。しかも川の中から現れた鮫はただの鮫ではなく、人間のような手足を生やしていた。
(違う、こいつは鮫じゃない……魚人だ!?)
マオは見るのは初めてだがバルルの授業で様々な魔物の情報は教えてもらっており、川から現れた鮫と人間が合わさったような魔物の正体を見抜く。魚人とは人型の魔物として分類され、マオの前に現れたのは鮫の特徴を持つ魚人だった。
「シャアアアッ!!」
「くっ……近付くな!!」
現れた魚人は陸地に乗り込むとマオを威嚇するように鳴き声を上げ、それを見たマオは咄嗟に三又の杖を構えた。しかし、杖を向けられても魚人は臆した様子もなくマオに近付く。
(戦うしかないか!?)
接近してくる魚人に対してマオは杖から魔法を発動しようとした時、後方から声が聞こえた。その声は先ほどまでマオを追跡してきた魔獣の群れで間違いなく、どうやらここまで追いついて来たらしい。
「ガアアッ!!」
「ウォンッ!!ウォオオンッ!!」
「くそっ、こんな時に……」
「シャアアッ!!」
コボルトとファングの群れが岸辺に現れるとマオは魔物達に取り囲まれてしまい、彼は三又の杖だけではなく小杖も取り出す。両手に杖を構えたマオは周囲を見渡し、自分が先ほどまで座っていた岩に視線を向けた。
岩を背にしたマオは周囲を振り返ると魚人と魔獣の群れがお互いに睨み合い、威嚇す料に牙を剥き出しにしていた。それを見たマオは魔獣の群れが魚人に注意を引いている間に岩の上に移動を行う。
(ここは逃げるか?いや……あれを試す好機かもしれない)
氷板を作り出して空へ逃げる事も考えたが、仮にここから逃げ出しても魔獣の群れが追いかけて来ないとは限らない。そう考えたマオはここまでの移動で疲れ切っている魔獣の群れと戦う事を決めた。
(これを使うしかないか)
マオはドルトンに改造を施された三又の杖を握りしめると、柄の部分を左手で掴んで先端部分を右手で構える。ドルトンに改造を施された三又の杖の新しい機能を彼は利用する事にした――
※次回、マオ無双回!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます