第239話 ホブゴブリン《ゴブリン上位種》
「グギィイイイッ!!」
「っ……!?」
マオが目を開くとホブゴブリンが地上に飛び降りる姿を確認し、どうやらまだ自分を狙っている事を知る。どうしてホブゴブリンが自分を執拗に狙うのかと疑問を抱く暇もなく、一秒でも早くマオは魔力を回復させる事に集中した。
(魔力を回復させないと……!!)
目を閉じて意識を集中させ、マオは魔力を回復させる事に集中を行う。この数か月の訓練でマオは魔力を回復させる機能を強化した。そのお陰で短時間で魔力を回復させる術を身に付ける。
ホブゴブリンがマオの元に辿り着く前に彼はある程度の魔力を回復させ、どうにか拘束された状態で腰に差した杖に手を伸ばす。一方でホブゴブリンはマオに止めを刺すために跳躍し、彼に目掛けて両足で踏み潰そうとしてきた。
「グギィッ!!」
「くっ……このっ!!」
ホブゴブリンが両足を叩き付ける前にマオは杖を手にすると、風の魔力を杖先から噴射させて移動を行う。直後にマオが先ほどまで倒れていた場所にホブゴブリンは着地し、攻撃を避けたマオに驚いたように振り返る。
「グギィッ!?」
「はあっ、はあっ……このっ!!」
マオは杖を手にした事で魔法を扱えるようになり、小さめの氷刃を作り出して拘束していた糸を切り裂く。どうにか拘束から解放されたマオは三又の杖をホブゴブリンに構えると、ホブゴブリンの方は背中に背負っていた武器を取り出す。
「グギィイイイッ!!」
「あれは……盾!?」
ホブゴブリンが取り出したのは武器の類ではなく、大きめの盾を取り出す。盾は緑色の輝きを放ち、その光と色合いを見てマオは魔法金属製の盾だと知る。
(まさかミスリルの盾!?あんな物をどうして魔物が……)
魔法金属ミスリルは前にバルトの知り合いの冒険者達から見せて貰った事があり、魔法が扱えない人間が魔物と戦う場合は魔法金属製の武器を用意しなければならない。しかし、その魔物自身が魔法金属製の防具を身に付けている事にマオは戸惑う。
ミスリルの盾を取り出したホブゴブリンは左腕に装着すると、盾を構えた状態でマオに突っ込んできた。それを見たマオは咄嗟に杖を構えるが、ホブゴブリンは構わずに突っ込む。
「グギィイイイッ!!」
「っ……!!」
普通の魔術師であればミスリル製の盾に魔法を当てたとしても防がれるかあるいは跳ね返される可能性が高い。魔法金属製の武器や防具は魔法耐性も非常に高く、並の魔法は通じない。しかし、ホブゴブリンが相手にしているのは普通の魔術師ではない。
(焦ったら駄目だ、冷静に敵の動きを見て行動しないと……)
バルルからの教えを思い出し、魔術師はどんな時でも冷静でいなければならない。迫りくるホブゴブリンの迫力に身体が震えそうになるが、マオは冷静にホブゴブリンの様子を観察して攻撃の隙を伺う。
「ここだっ!!」
「グギャアッ!?」
接近してくるホブゴブリンに対してマオは三又の杖から二つの氷塊を作り出すと、風の魔力を送り込む。回転を強化させる事で威力を高めた氷弾を同時に二発撃ち込む。
「喰らえっ!!」
「ギャアアアッ!?」
発射された氷弾はホブゴブリンの手にする盾ではなく、走る際に動かしていた足元を狙い撃つ。ホブゴブリンの両膝に氷弾が貫通し、大量の血が噴き出す。ホブゴブリンはたまらずに倒れ込み、それを見たマオは止めの一撃を繰り出す。
「盾……意味なかったね」
「グギャッ……!?」
「氷弾!!」
一言だけ告げるとマオはホブゴブリンの頭部に目掛けて氷弾を発射させ、ホブゴブリンの眉間を貫く。頭を撃ち抜かれたホブゴブリンは倒れると、それを見届けたマオは安堵した。
流石に体力も魔力も限界でマオは座り込むと、ホブゴブリンが装備していた盾を見て不思議に思う。どうしてホブゴブリンが盾など装備していたのかと思って近付いた時、ホブゴブリンの首元の部分に紋様のような物が刻まれている事に気付く。
「何だこれ……蛇?」
ホブゴブリンの首元には何故か蛇のような紋様が刻まれ、それを見たマオは疑問を抱く。もう少しよく見てみようとマオはホブゴブリンに近付いた瞬間、頭を撃ち抜かれたはずのホブゴブリンが目を見開き、マオの身体に掴みかかる。
「グギィイイッ!!」
「うわっ!?」
油断していたマオはホブゴブリンの右腕に掴まれ、地面に押し付けられた。確実に頭を撃ち抜いたと思ったホブゴブリンだったが、目元を充血させて血を流しながらもマオの首元を締め付ける。
「グギャアアアッ……!!」
「ぐえっ……!?」
必死にマオはもがくがホブゴブリンは彼の首から手を離さず、このままでは殺されると思ったマオは杖を構えるが、首元が締め付けられた影響で意識が薄れていく。
(まずい、このままじゃ……)
魔法を発動させる前にマオの意識が途切れ、彼は力なく倒れ込む。それを見たホブゴブリンは確実に止めを刺すために首の骨をへし折ろうとした。しかし、指に力を込める前にホブゴブリンの背中に熱と衝撃が走った。
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