第236話 積み重ねた努力の成果

(あれは……そうだ、あそこだ!!あそこだけを狙うんだ!!)



ガーゴイルを倒すための方法を思いついたマオは両手に三又の杖と小杖を構えた。こちらの小杖は最初にマオがリオンから受け取った代物であり、二つの杖を重ねるように構えた。



「これで……どうだ!!」

「グギャアッ!?」



三又の杖で同時に三つの氷弾を作り上げた後、更にマオは左手で握りしめた小杖から風の魔力を放つ。風の魔術痕を利用してマオは風の魔力を操作し、それを左手の小杖に伝えて三又の杖に形成した三つの氷弾に風の魔力を纏わせて回転力を上昇させる。


これまでに覚えた魔力操作の技術を生かしてマオはガーゴイルの胸元に狙いを定め、まずは一発目を放つ。発射された氷弾は適確にガーゴイルの胸元に的中し、先にめり込んでいた氷弾を後ろから押す形で更に食い込ませる。



「グギャアアアッ……!?」

「もう一発!!」



胸元に食い込んでいた氷弾がさらに奥に食い込んだ事でガーゴイルは膝を突き、その状態からマオは更に氷弾を発射させた。二発目の氷弾も外れる事はなく、ガーゴイルの胸元に的中すると罅割れが発生した。



(的を当てる訓練は毎日してきたんだ!!絶対に外さない!!)



氷弾の訓練は毎日欠かさずマオは行い、的に当てる練習は一日たりとも欠かさずに練習してきた。時には訓練用の木造人形だけではなく、動き回る魔物を相手に氷弾を当てる練習もしてきた。



「まだまだ!!」

「ギャアッ!?」



三発目の氷弾がガーゴイルの胸元に的中すると、計四発の氷弾が同じ個所に食い込んだ事でガーゴイルの胸元の亀裂が広まる。それを見たマオはガーゴイルを倒す絶好の好機だと判断し、今度こそ確実に倒すために氷柱弾キャノンを作り出す準備を行う。



「これで止めだ!!」

「グギャッ……!?」



三又の杖を構えたマオは三つの氷塊を結合させて氷柱を作り上げると、そこから風の魔力を送り込んで氷柱を高速回転させる。それを見たガーゴイルは慌てて彼を止めようとしたが、先ほどのバルトの攻撃で喉を傷めたガーゴイルは超音波を発生させる事はできない。


氷柱弾がガーゴイルの胸元に的中すれば確実に倒せる事は間違いなく、如何に硬くても罅割れた物体ならば強い衝撃を与えれば無事では済まない。硬ければ硬いほどに砕けやすくなり、次の攻撃をマオが当てる事ができれば確実に勝利する。



「喰らえぇえええっ!!」

「グギャァアアアッ!?」



マオはガーゴイルに目掛けて氷柱弾を発射させると、それを見たガーゴイルは咄嗟に背中の翼を折り曲げて自分の身体を覆い込む。背中の翼は攻撃ではなく防御にも利用できる事が判明し、氷柱弾を二つの翼で受け止めたガーゴイルは奥側へと追い込まれる。



「グギィイイイッ!?」



氷柱弾に押し込まれながらもガーゴイルは踏み止まり、背中の翼だけではなく両腕を交差して攻撃を受けとめようとした。やがて氷柱弾の回転力が弱まると、ガーゴイルの背中の羽根が砕け散り、ガーゴイルの両腕も罅割れを引き起こすがどうにか耐える事に成功した。



「グギャアッ……!!」



攻撃を受け切った事でガーゴイルは安堵しかけるが、この時にガーゴイルは油断していた。背中の翼を犠牲にして氷柱弾の勢いを止める事に成功したと思い込んでいたが、実際の所は氷柱弾はまだ砕けてはおらず、ガーゴイルの目の前に浮かんだままだった。


氷柱弾の勢いが止まった瞬間、マオはガーゴイルに目掛けて駆け出す。そしてガーゴイルが行動を起こす前に停止した氷柱弾に杖を伸ばし、再び風の魔力を送り込む。



「まだまだぁっ!!」

「ギャアアアアアッ!?」



再回転を始めた氷柱弾がガーゴイルの両腕を削り取り、ついには完全に崩壊させると胸元を貫く。油断しきっていたガーゴイルは胸元の部分に氷柱弾が食い込み、やがて力を失ったかのように目元の光が消えて動かなくなった。



「はあっ、はあっ……か、勝った……?」



氷柱弾が貫通して完全に動かなくなったガーゴイルを確認すると、マオはその場で尻餅を着いてしまう。氷柱弾を止められたときはどうしようかと思ったが、マオは無意識に駆け出してガーゴイルに止められていた氷柱弾を再回転させて攻撃を続行した。


最後の行動はただの思い付きであり、まさか氷柱弾を再び動かして攻撃に利用するなどマオ自身も最後の瞬間まで思いつかなかった。まるで身体が勝手に動いたような感覚だったが、恐らくはマオの思考よりも肉体の方が最善の行動を取るために動いていた。



(はあっ……きつかった)



ここまでの戦闘でマオは魔力を大分使ってしまったが、まだ安心はできない。学校内には魔物が残っており、教室に置いて来た二人も心配のために魔力を回復させて向かう必要がある。しかし、しばらくの間はガーゴイルを倒した勝利の余韻に浸かりたかった。

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