第235話 屋上での死闘
(ここで戦うのはまずい!!なら……最初はこれだ!!)
三又の杖を構えたマオはガーゴイルが動く前に無詠唱で魔法を発動させ、氷塊同士を結合させて巨大な氷塊の盾を作り出す。敢えて盾を作り出したのはガーゴイルの攻撃を防ぐためと相手を追い込むためであり、杖を構えた状態でマオはガーゴイルに突っ込む。
「うおおおおっ!!」
「グギャッ……!?」
盾を全面に展開した状態でマオは駆け出すと、ガーゴイルは迫りくる氷の盾に対して抑えつけようとした。しかし、それを見越してマオは三つの氷塊の結合部に杖先を構えた。
氷の盾でマオの姿は覆い隠され、ガーゴイルは彼の姿が見えないのでマオが次の魔法を繰り出そうとしている事に気付けない。マオは氷の盾の裏面で魔力を集中させると、とっておきの一撃を繰り出す。
「氷弾……
「ギャウッ!?」
氷の盾の接合部の部分から風の魔力で高速回転した氷の弾丸が放たれ、ガーゴイルの胸元の部分に突っ込む。限界まで回転力を増した氷弾はガーゴイルの胸元に突っ込み、貫通まではしなかったが胸元にめり込む。
「まだまだ!!」
「ギャアッ!?」
ガーゴイルに損傷を与える事に成功したマオは氷の盾を操作してガーゴイルを廊下側に追い込み、窓の外に目掛けて押し出す。ガーゴイルは危うく窓から落ちそうになったが、両腕の爪を壁に食い込ませて外に落ちるのを防ぐ。
「グギギッ……!!」
「くそっ……こっちだ!!」
廊下に戻ってきたガーゴイルを確認してマオは氷の盾を一旦解除すると、氷板を作り出して窓の外に移動する。この場所で戦うと仲間達を巻き込む可能性があり、ガーゴイルを誘導するためにマオは屋上へ向かう。
「化物、こっちだ!!」
「グギャアアッ!!」
氷板を利用して浮上したマオを見てガーゴイルは外に飛び出すと、壁をよじ登って後を追いかける。翼は生えているが空を飛ぶ事はできないのか校舎の壁に爪を食い込ませて登るガーゴイルの姿を見てマオは相手が飛べないのではないかと考える。
空を飛べるのならばわざわざ校舎の壁をよじ登る必要はなく、ガーゴイルの羽根はもしかしたら飾りなのかもしれないとマオは考えた。しかし、そんな彼の安易な考えを見抜いたかの様にガーゴイルは翼を広げて空を飛ぶマオに目掛けて翼を伸ばす。
「シャアッ!!」
「うわぁっ!?」
氷板がガーゴイルの翼に触れた瞬間に切断され、氷板が真っ二つに割れた事で体勢を崩したマオは屋上に墜落してしまう。ガーゴイルは魔法金属級の硬度を誇り、当然ではあるが翼も非常に硬く、場合によっては刃物の様に利用できる。
(くそっ……あの翼、空を飛ぶんじゃなくて攻撃用だったのか)
氷板が割れたせいでバランスを崩して屋上に落ちたマオは痛みを堪えながらも起き上がると、ガーゴイルの方も壁を登り終えて屋上へ降り立つ。この場所ならば誰にも邪魔をされず、お互いに本気で戦う事ができる。
「グギャアアッ!!」
「くっ……氷刃!!」
雄叫びを上げてガーゴイルがマオの元に駆け込むと、それを見たマオは咄嗟に三つの氷刃を形成してガーゴイルに放つ。高速回転した氷の刃は鋼鉄をも切り裂く威力を誇るが、その攻撃に対してガーゴイルは一切躊躇せずに突っ込む。
ガーゴイルに目掛けて放たれたチャクラム状の氷の刃は触れた瞬間に火花を上げて弾かれてしまい、魔法金属級の硬度を誇るガーゴイルには氷刃は通じない事が証明された。
(この程度の魔法じゃ駄目だ!!もっと強い威力の魔法を繰り出さないと……)
マオは迫りくるガーゴイルから逃げながらも頭を巡らせ、どのような手段を用いればガーゴイルを倒せるのかを考える。バルトの話ではガーゴイルは水が弱点らしいが、生憎とマオは氷を作り出せても水は生み出せない。
もしも学園長に刻んで貰った魔術痕が「風」ではなくて「水」ならばマオも水の魔法を扱えたかもしれないが、今更そんな事を考えても仕方ない。マオはこの状況を打破するために彼は魔法を発動させ、とりあえずは足止めを行う。
「喰らえっ!!」
「グギャッ!!」
杖を構えてマオは大きめの氷塊を繰り出すと、それを見たガーゴイルは翼を振りかざして氷塊を切断した。ガーゴイルの背中の翼は魔法金属製の武器と同等の威力を誇り、いくら氷塊を作り上げようと簡単に破壊されてしまう。
(やっぱり、普通の氷は通じない……どうすればいいんだ!?)
先ほどから全力で攻撃を仕掛けているのにマオの魔法はガーゴイルには殆ど通じず、唯一に胸元に少しだけ傷を与えたのは氷弾だけだった。マオは未だに胸元に食い込んだ氷弾に視線を向け、ほんの僅かではあるが勝機を見出す。
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