第234話 ガーゴイルの弱点
「くそっ、こっちだ!!」
「マオ、しっかりして……」
「ううっ……」
バルトは教室の中に二人を入れると彼は出入口を塞ぎ、教室中の机や椅子を運び出してバリケードを作り上げる。幸いにもガーゴイルは動きが遅く、先ほどの攻撃で表面上は無傷のように見えても全く損傷はないわけではなかった。
しかし、出入口を塞いだとしても時間稼ぎが精いっぱいであり、いずれは破壊して中に侵入してくる。逃げようにもここは校舎の最上階なので獣人族であるミイナはともかく、マオやバルトが降りられる高さではない。
『グギィッ!!』
「うおっ!?やべえ、そう長くは持たないぞ!!」
「先輩、魔法は使えますか?」
「ああ、だけど相手がガーゴイルだと俺の魔法は通じないかもしれねえ……あいつは水以外の魔法は通じないんだよ」
「水?」
バルトが授業で習った範囲のガーゴイルの特徴は水以外の魔法の耐性を持ち合わせており、風や火の魔法は殆ど通じない。唯一の弱点があるとすれば水らしく、水を浴びせればガーゴイルの肉体が溶けてしまうらしい。
「あいつを倒すには水属性の魔法か、あるいは大量の水をぶっかけないと倒せなかったはずだ」
「それならマオの氷で……」
「駄目だ、あいつが通じるのはあくまでも水だけだ。氷をぶつけても水と違って氷は固体だから大して通じないはずだ!!」
「だったらミイナの炎爪で僕の氷を溶かせば……」
「そんな上手くいくのか?魔法で造り出す氷や火は普通の水と火とは違うんだぞ、多分触れ合っただけで魔力同士が反発し合って弾かれるだけだ」
『グギィイイイッ!!』
話している間にも扉は破壊されそうなため、マオ達は武器を構えてガーゴイルが入り込むのを待つ。攻撃を狙うとしたらガーゴイルが入り込んだ瞬間であり、バルトは杖を構えて二人に指示を出す。
「こうなったら全員で一斉に攻撃するぞ!!通じるかどうかは知らねえが、とにかく奴を廊下の窓から外に放り出せばいい!!」
「なるほど、魔法で吹っ飛ばすんですね!?」
「私が最初に隙を作るから二人ともお願い」
ミイナは鉤爪を装着して炎を纏うと、ガーゴイルが扉を破壊する瞬間を待ち構える。マオとバルトは杖を構えて攻撃の好機を待ち、もう一度マオは
(今度こそ確実に当てるんだ!!)
先ほどは発射の直前に大声を上げられて精神が乱れて失敗してしまったが、今回は焦らずにマオは魔法の準備を行う。先ほどのバルトの攻撃でガーゴイルは鳴き声がおかしく、恐らくは発声器官が不調をきたしている。
攻撃の絶好の機会であり、3人は扉の前に待ち構えると遂にガーゴイルが扉を打ち破って教室の中に入ってきた。扉の前に置かれていた机や椅子を吹き飛ばし、ガーゴイルは教室へと踏み込んだ瞬間にマオ達は目を見開く。
「グギャアアアッ!!」
「あ、がぁっ……!?」
「た、助けて……!?」
「なっ……」
「何て事を!!」
ガーゴイルは教室の中に入り込むとその手には先ほど廊下に倒れていた生徒達が捕まっており、それを見たマオ達は攻撃を中断せざるを得なかった。敢えて殺さずに放置していた生徒を人質にして入り込んできたガーゴイルにマオ達は焦りを抱く。
(魔物が人質を!?くそっ、どうなってるんだ!!)
その気になれば殺せたはずの生徒をガーゴイルが敢えて残していた理由は人質にするためであり、人質が傍にいる以上はマオ達は迂闊に魔法で攻撃を仕掛ける事ができない。もしも下手に魔法を使用すれば人質の命が危ない。
捕まったているのは最上級生の生徒達であり、彼等は身に付けていた杖や魔法腕輪は破壊されて魔法も使えない。そんな状態の彼等に魔法を撃ちこめば無事では済まず、確実に死んでしまう。
「こ、このくそ野郎が……!!」
「くっ……」
「いったいどうすれば……」
捕まっている人質を見せつけられてマオ達は動く事ができず、人質を救おうにも下手にガーゴイルに近付く事はできない。ガーゴイルは教室の中を見渡すと真っ先に自分に先ほど攻撃を与えたバルトに狙いを定め、片方の生徒を放り込む。
「グギャアッ!!」
「うわぁっ!?」
「あぐぅっ!?」
「先輩!?」
「マオ、よそ見しないで!!」
人質を放り込まれたバルトは避けられずにぶつかってしまい、共にもつれながら倒れ込む。それを確認したガーゴイルは今度はもう片方の人質を振りかざし、今度はミイナに目掛けて放り込む。
「グギャッ!!」
「にゃうっ!?」
「かはぁっ!?」
「そんな……ミイナまで!!」
ミイナは避けようと思えば避けれたが、投げ込まれる生徒を受け止めなければ壁に激突して死んでしまうかもしれず、彼女は敢えて受け止めようとしたがガーゴイルの怪力で投げ飛ばされた女子生徒はミイナを巻き込んで床に倒れ込む。
バルトとミイナが倒れたのを見てマオはガーゴイルと向かい合い、仲間の二人は倒れたが人質は解放された。それならば遠慮せずにマオは魔法を放つ準備を行う。
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