第233話 魔術師殺しと呼ばれた魔物
「
「ッ――!?」
三又の杖から三つの氷塊が誕生し、それらが結合する事で氷柱と化す。それを見た瞬間にガーゴイルは目を見開き、一方でマオは魔術痕と風の魔石から魔力を引きだして作り出した氷柱に魔力を纏わせる。
氷柱に風の魔力が渦巻く事で回転力を限界まで高め、攻撃速度を限界まで加速させて打ち込む。現在のマオが繰り出せる最強の攻撃魔法で威力は上級魔法にも匹敵する。
「喰らっ……」
マオが魔法を放とうとした瞬間、ガーゴイルは口元を開いて鳴き声を放つ。
――キィエエエエエッ!!
ガーゴイルが鳴き声を上げた瞬間に校舎内の窓が割れ、その声を耳にした瞬間にマオ達は耳元を抑えて倒れ込む。攻撃を仕掛けようとした瞬間にマオは意識が乱れてしまい、せっかく作り上げた氷柱が消えてしまう。
超音波のような鳴き声でマオの意識を乱したガーゴイルは彼の魔法を中断させ、それどころかバルトやミイナさえも立っていられずに膝をつく。三人ともガーゴイルの鳴き声だけでまともに動けない状態に陥る。
「う、ああっ……!?」
「がはっ……!!」
「にゃうっ……!?」
鳴き声だけでガーゴイルはマオ達を戦闘不能の状態に追い込み、やがて鳴き声を辞めるとマオの元へ向かう。この際にガーゴイルはマオが魔法を作り出した際に彼の周りの壁や床の一部が凍っている事を確認すると、目つきを鋭くさせて爪を彼に構えた。
「キィイッ!!」
「くっ!?」
「マオ、危ない!!」
爪が振り下ろされる寸前で咄嗟にミイナはマオの肩を掴み、後ろに飛ぶ事で攻撃を回避した。マオはミイナに抱き寄せられる形で倒れ込み、それを見たガーゴイルは忌々し気な表情を浮かべて今度は足を振りかざす。
「キィエエエッ!!」
「うわっ!?」
「にゃっ!?」
「や、止めろぉっ!!」
二人が踏み潰されそうになった瞬間、バルトが近くに落ちていた魔法金属の破片を投げ込む。先に倒れていた生徒が身に付けていたと思われる魔法腕輪の破片には魔石が装着されており、偶然にもガーゴイルの口元に収まる。
「アガァッ!?」
「は、早く逃げろ!!」
「マオ、こっち……」
「ううっ……」
魔法腕輪の欠片が上手い具合にガーゴイルの口元に嵌まり、それに気を取られている間にミイナはマオを引っ張って距離を置く。一方でバルトは足元の破片を調べ上げ、使えそうな物を探す。
倒れていた生徒の杖や魔法腕輪は破壊されて使い物にならないが、装着されていた魔石は使い道がある。緊急事態なので生徒達には悪いと思いながらもバルトは魔石を回収すると、ガーゴイルの顔に目掛けて杖を構える。
(頼む、出てくれ!!)
先ほどの鳴き声のせいでバルトも精神が乱れて中級魔法は扱える状態ではなかったが、この状況を打破するために彼は必死に魔力を練り上げて魔法を放つ。
「ウィンド!!」
「アガァッ……!?」
まだ魔法腕輪の破片が口に嵌まった状態のガーゴイルにバルトは下級魔法を放ち、今の彼が繰り出せる魔法がこれが限界だった。ガーゴイルは口元の魔法腕輪の破片が風圧で押し込まれる形になり、この時に牙が魔法腕輪の破片に装着していた魔石に触れた。
ガーゴイルの牙の鋭さはファングやコボルトの火ではなく、魔石は牙によって簡単に砕かれてしまう。しかし、魔石が砕かれた瞬間に内部に蓄積されていた魔力が暴走し、ガーゴイルの口元が爆発した。
「アガァアアアッ!?」
「へっ……ど、どうだ!!」
魔法腕輪の破片に嵌め込まれていたのは火の魔石だったらしく、噛み砕いた事で火の魔力が暴走してガーゴイルの口元が爆発した。顔面が黒煙に覆われたガーゴイルを見てバルトは笑みを浮かべるが、直後に彼はガーゴイルが「魔術師殺し」と呼ばれる所以を知る。
「グゥウウッ……!!」
「えっ……う、嘘だろ、おい!?」
顔面が爆発したにも関わらずにガーゴイルは煙が晴れると顔が少し黒焦げた程度で牙一つ折れてさえいなかった。火属性の魔石が暴発すれば岩石を破壊する威力を誇るが、ガーゴイルは本物の岩石以上の硬度と耐久力を誇る事が証明された。
(化物かこいつ!?)
魔石が爆発しても無傷のガーゴイルを見てバルトは焦りを抱き、慌てて離れようとした。しかし、この時にガーゴイルは口元を開くと激しく咳き込む。
「ガハァッ……!?」
どうやら先ほどの魔石の爆発は全くの無意味ではなかったらしく、ガーゴイルが鳴き声を上げようとすると煙を咳き込んで上手く声が出せない。見た目は石像のように見えてもガーゴイルもれっきとした生物であり、どうやら先ほどの爆発で身体の内部にも影響を与えたらしい。
ガーゴイルが咳き込んでいるうちにバルトはマオとミイナと共にその場を離れ、態勢を整えるために3人はガーゴイルから逃げ出す。
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