第157話 精神鍛錬
――マリアから教わった精神鍛錬の方法は「座禅」であり、今までマオはがむしゃらに魔法を使用しては吸魔腕輪に魔力を吸収されて気絶していた。しかし、マリアから教わった方法でマオは自分の精神力を鍛える事にした。
屋上にてマオは座禅を行い、この際に彼は頭の上に水の入った容器を置く。動かずにバランスを取りながら頭の上の容器が落ちないように気をつけ、マオは意識を集中させる。
(マリア先生の言う通り、この状態で自分の身体に流れる魔力を感じ取るんだ……)
座禅を行いながらもマオは頭の上の容器を落とさないように気をつけ、この時に彼は魔力操作の技術を応用して体内に流れる自分の魔力の流れを感じ取る。吸魔腕輪はあくまでも魔法を発動させようとした時にしか反応せず、体内の魔力の流れを感じ取るだけでは特に反応はしない。
(……何だか不思議な気分だな)
最初の内は慣れずに何度も容器を落として水浸しになっていたが、訓練を開始してから三日が経過する頃にはマオも慣れてしまった。彼は自分の体内の魔力がどのように動いているのかを感じ取り、日に日に表情に余裕が出てきた。
頭の上に容器を乗せた状態で精神鍛錬を行い、体内の魔力を感じ取りながらも魔力操作の技術の鍛錬も怠らない。そして一週間の時を迎えると、マオは遂に容器を落とさずに半日も精神鍛錬を過ごす事に成功する。
「……うん、もういいかな」
「うわっ!?」
「……マオが喋った」
「へえ、遂にコツを掴んだようだね」
マオが座禅を解くと既に時刻は夕方を迎え、目を開くとそこにはバルル達の姿があった。最近はバルトも訓練に付き合うようになり、ずっと精神鍛錬を行って黙りこくっていたマオが急に喋り出した事に驚く。
「師匠もいたんですね」
「まあね、あんたが精神鍛錬に集中してくれるお陰で魔力回復薬を購入する事もなくなったから今は真面目に教師をしてんのさ」
「よく言うぜ……あんたのこの間の授業、むちゃくちゃ過ぎだろ」
教師としてバルルは他の生徒の世話をする事もあるらしく、彼女は臨時で三年生の授業を行った時、何かをやらかしたのかバルトは嫌な表情を浮かべる。しかし、他の生徒の授業を任されるだけの信頼は得たらしく、彼女もこれまでの事を反省して教師として真面目に働いているらしい。
「そんな事よりマオ、あんたの修行の成果を見せて貰おうか」
「はい……分かりました」
「おい、大丈夫か?最近は碌に魔法も使ってなかったんだろ?」
「無理しない方がいい」
「大丈夫、平気だから」
バルルに言われた通りにマオは杖を取り出すと、意識を集中させて魔法を発動させる準備を行う。その様子を見ていたミイナとバルトは心配そうな表情を浮かべるが、マオは緊張した様子もなく魔法を発動させた。
「アイス!!」
「うわっ!?」
「でかい!?」
「…………」
二又の杖からマオは魔法を発動させると、今回は氷の破片ではなく、ちゃんとした氷塊を作り出す事に成功した。この一週間の精神鍛錬のお陰で魔力操作の技術がより磨かれたらしく、両腕に吸魔腕輪を取りつけた状態でも遂に魔法の発現に成功する。
しかし、吸魔腕輪の効果までも完全に封じ込めたわけではなく、魔法を発動した直後に腕輪が反応して急速的にマオの魔力を吸収する。マオは立っていられずに膝をつくと、それを見たミイナが駆けつけようとした。
「うっ!?」
「マオ!!」
「待ちな!!」
「お、おい!?何してんだ!?」
ミイナは手に持った魔力回復薬をマオに飲ませる寸前、バルルが彼女の肩を掴んで止めた。バルルの行動にバルトは慌てるが、マオの様子がいつもと違う事に遅れて気付く。
「はあっ、はあっ……」
「そうだ、その調子だよ!!頑張れ、頑張るんだ!!」
「マ、マオ?」
「これは……どうなってるんだ?」
いつものマオならば気絶して倒れるはずだが、今回は気絶もせずに膝をついた状態で動かず、その様子を見ていたバルルが興奮した様子で声援を送る。ミイナとバルトは事態を理解できずに戸惑っていると、やがて膝をついていたマオが起き上がった。
これまでの訓練ではマオは魔法を使う度に立ち上がる事もできないほどに疲弊していたが、今回のマオは額に汗を流しながらも立ち上がる事に成功し、バルルに笑みを浮かべた。
「……もう大丈夫です」
「そ、そうか……遂にやったんだね!!」
「お、おい!!何が起きたんだ?」
「マオ、平気なの?」
マオの自信に満ちた表情と言葉にバルルは安堵すると、状況を理解できないミイナとバルトは説明を求めた。そんな二人にマオは振り返り、何が起きたのかを話す。
「魔力を全部奪われる前に……魔力を回復させたんだよ」
「えっ……?」
「……は?」
思いもよらぬ発言にミイナとバルトは呆気に取られ、そんな二人にマオは詳しい説明を行う――
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