第156話 学園長の教え《精霊魔法の法則》
「――なるほど、つまり精霊魔法の事を知りたくて私の元に訪れたという事ね」
「はい……いきなり来てすいません」
「気にしなくていいわ。生徒の悩みも聞くのも教師としての務めよ」
マオは学園長室に訪れるとバルトの言う通りにあっさりと会ってくれた。本来であれば一生徒が
ソファにマオを座らせたマリアは彼に紅茶と御茶菓子を与えると、詳しく話を聞いて彼が精霊魔法の事を教えて貰いに来た事を知る。当然ながら魔法学園の学園長にしてエルフでもある彼女が精霊魔法の事を知らぬはずがなく、詳しく教えてくれた。
「精霊の事は知っているかしら?」
「あ、えっと……自然界に存在する魔力、という事ぐらいしか知りません」
「概ね間違ってはいないわ。但し、精霊といっても種類があるのは知っているかしら?」
「種類?」
説明の際中にマリアは掌を構えると、彼女の指先に緑色に光り輝く球体が現れた。それを見たマオは驚いていると、マリアは指先で光の球体を動かしながら説明を行う。
「これが精霊よ。正確に言えば風の精霊ね」
「風の……精霊?」
「ひとえに精霊といっても風、火、水、雷、地、聖、闇といった風に魔法の属性と同じ数の種類の精霊が存在するの。そして私の元に現れたのが風の小精霊よ」
「小精霊?」
「こんな風に密封した部屋の中では風の精霊は本来の力を失い、このように小さくなってしまうの。だけど窓を開いて風通しを良くすれば……」
マリアは窓を開くと風が部屋の中に流れ込んだ瞬間、彼女の元に浮揚していた光の球体が大きさを増す。それを見たマオは驚いていると、彼女は掌に収まり切れない程の大きさになった精霊を見て笑みを浮かべた。
「風通しが良くなった事で精霊の本来の力を取り戻したわ。精霊は環境によって力が変動すると覚えておきなさい」
「な、なるほど……」
「そしてこうして集まった精霊の力を借りれば……杖や腕輪が無くても魔法を扱う事もできる」
自分の掌に留まった精霊をマリアはマオに見せつけると、彼女は反対の手で指を鳴らした瞬間に精霊は風の渦巻へと変化して彼女の掌の中に納まる。規模は小さいが、それでも魔法腕輪や杖も無しにマリアは魔法を発動させる事に成功した。
(す、凄い!!腕輪も杖も無しで魔法を発現できるなんて……まるで絵本の主人公みたいだ!?)
通常は魔術師や魔拳士が魔法の力を発動する時は腕輪か杖を用意しなければならないが、マリアの場合は精霊の力を借りて魔法の力を発現させた。つまり彼女は杖や腕輪がなくとも魔法の力を自由自在に操れる事を意味する。
精霊魔法を扱えるのは魔法に長けた種族だけであり、今の所はエルフと人魚族しか扱えないと言われている。しかも精霊魔法の最大の利点は自分の魔力を殆ど使わずに魔法の力を発現する事ができるという。
「精霊の力を借りれば自分の魔法も強化できるし、自分の適性属性の精霊ならば体内に吸収する事で魔力を回復させる事もできるわ。こんな風にね」
「あ、消えた!?」
「消えたのではなく、私の中に入ったのよ」
マリアは指先で小精霊を呼び出すと、彼女が触れた途端に精霊は消えてしまう。マリアの中に精霊が入り込んだらしく、精霊の魔力がマリアの中に取り込まれたらしい。
「どうかしら?これが精霊魔法よ」
「す、凄いですね……あの、精霊魔法は僕も覚える事ができますか?」
「……絶対に無理というわけではないけど、習得するには時間が掛かり過ぎるわ。エルフでさえも小さい頃から精霊を感じ取れる訓練を積まなければならないし、精霊が集まりやすい環境も整えなけえればならない。いくら才能や素質があろうと習得するには時間が掛かり過ぎるわ」
「そうですか……」
駄目元でマオは精霊魔法を覚えられないのかと思ったが、マリアの言葉を聞いて自分では習得が難しいと知る。しかし、そんな彼を見てマリアは不思議に思う。
「それにしても急に精霊魔法の事を聞いてくるなんて……何か会ったのかしら?」
「えっと、実は……魔力を短時間で回復させる方法を知りたいんです。それで精霊魔法の事を聞いてここへ来ました」
「短時間で魔力を回復……?」
世話になっているマリアには隠し事はできないのでマオは正直に理由を話すと、彼女はマオが魔力を回復させる方法を探していると知り、彼に助言を送る。
「そういう事なら貴方が必要なのは精神鍛錬ね」
「精神鍛錬?」
「魔法の力は精神力によって大きく左右する事は授業で習っているわね?優秀な魔術師を目指すのであれば精神力も強くならなければならない。どんな事にも動じず、冷静に対処できる人間ほど一流の魔術師に成れると言われているわ」
「そ、そうなんですか?」
「精神鍛錬の方法なら私もいくつか教えられるわ。この機会に試してみましょう」
マリアはマオに精神鍛錬の方法をいくつか授け、その中で彼が適している鍛錬方法を教えると、この日を境にマオは本格的な修行に取り組む。
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