第155話 魔力を回復させる方法

「えっ!?まだこれだけしか経っていないなんて……」



気絶したにも関わらずに自分がほんの数分で意識を取り戻した事を知ってマオは驚き、時計が壊れているのかと思ったが外の様子を見る限りは間違いではない。


最初に気絶していた時は何時間も眠る事もあったが、この一か月の間に何度も訓練をで気絶を繰り返していたせいか、気絶しても数分で起きれるほどになっていた。その事に気付いたマオは杖を見て今回の訓練の本当の意味を知る。



「まさか……師匠が僕に教えたい事って」



これまでマオは魔力操作の新しい修行法を課せられていると思い込んでいた。実際に一か月の間にマオは吸魔腕輪を装着した状態でも魔法(氷の欠片)を扱えるようになり、以前よりも魔力操作の技術は向上した。


しかし、バルルが今回の訓練を課した本当の理由、それは魔力操作の技術を今以上に磨くのが目的ではない。彼女がマオに吸魔腕輪を与えた真の理由、それは彼から魔力を吸収し、失った魔力を回復するの訓練だと気付く。



「師匠、そういう事だったんですね……」



どうしてバルルが吸魔腕輪を自分に取り付けるような真似をしたのかとマオは疑問を抱いていたが、ようやく彼女の伝えたいことを理解して喜びを覚える。バルルは何も言わなかったが、きっと彼女はマオならば訓練の意味に気付くと信じていたのだろう。



(そういえば前よりも魔力が戻るのが早くなってる気がする……頭痛も消えてるし、確実に魔力の回復が早くなっている!!)



考えている間にもマオは先ほどまで感じていた頭痛が消え去っている事に気付き、彼は杖を握りしめると訓練の目的が分かった以上、居ても立っていも居られずに行動に移る――






――朝からマオの姿が見かけず、朝食の時間を迎えても食堂に彼が来なかったので気になったバルトは屋上の訓練場に立ち寄ると、そこには屋上で眠りこけるマオの姿があった。彼が横たわっている姿を見てバルトは驚き、慌ててマオの元に急ぐ。



「おい、マオ!!お前こんな所で何をしてるんだ!?」

「ふあっ……先輩?あ、そうか……もう朝何ですね」

「お前、まさか夜通し訓練してたのか!?無茶をするんじゃねえよ!!」

「いえ、訓練はしてません……先輩が来るのをここで待ってました」

「お、俺を?」



寝ぼけ眼でマオはバルトに顔を向けると、自分を待っていたという彼にバルトは不思議そうな表情を浮かべる。そんな彼にマオは率直に尋ねた。



「先輩!!魔力を効率よく回復させる方法はありますか!?」

「は?魔力を……何だって?」

「少しでも早く魔力を回復させる方法を知っていたら教えてください!!」

「あ、ああ……分かった」



魔力の回復速度を高める方法を尋ねられてバルトは戸惑うが、最近のマオの訓練を見ていて彼も流石に魔力を失う事の辛さを覚えたのかと考えた彼は真面目に答えた。



「いいか、一番手っ取り早く魔力を回復させる方法は眠る事だ」

「眠る事……」

「ああ、お前も魔力を使い続けると頭痛に襲われて意識を失うだろ?あれはお前の身体がこれ以上の魔力の消費は無理だと判断して勝手に眠るんだ。眠れば短時間の間に魔力を回復できるからな」

「他に方法はあるんですか?」

「そうだな……魔力を回復させたいならとにかく動かずに身体を休ませる事だ。体と心を落ち着かせれば魔力の回復も早くなる。頭を空っぽにして動かずに身体を休ませるだけでも魔力の回復は早くなる」

「とにかく、身体を休ませるのが一番なんですね」



話を聞いた上でマオは魔力を回復させるには身体を動かさず、心を落ち着かせて休む事が一番だと知る。しかし、バルトによると人間ではない種族には他にも魔力を回復させる方法があるという。



「後はそうだな……エルフの奴等は精霊の存在を感じ取って魔法を強化したり、魔力を回復させる術を知っていると聞いた事があるな」

「えっ!?精霊?」

「そうだ。お前も精霊魔法の事は知っているだろう?森人族や人魚族が扱う特別な魔法だ。人間の俺達には真似できないらしいがな」



精霊とはこの世界に存在する自然界の魔力の事を差しており、精霊を感じ取れるのはエルフや人魚族といった特別な種族しかいないと言われている。精霊魔法の事はマオが子供の頃に読んだ絵本の主人公も扱い、その魔法の力は並の魔術師の魔法とは比べ物にならない。


エルフならば精霊の力を借りて短期間に魔力を回復させる方法があると知ると、マオはバルトの知り合いでこの魔法学園に入学する際に案内してくれたリンダを思い出す。彼女に詳しい話を聞けないかバルトに尋ねる。



「リンダさんに会わせてください!!精霊魔法の事をもっと知りたいんです!!」

「いや……リンダの奴に聞くよりも学園長の方が詳しいと思うぞ。学園長に聞いてみたらどうだ?」

「え、学園長に!?」

「お前なら学園長も会ってくれるだろう。その徽章を見せればな」



バルトはマオが身に着けている徽章を指差し、月の徽章の特権を生かして学園長と対面する様に助言する。

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