第143話 魔力量が伸びない理由

「だとしたらお前はやっぱり水属性よりも風属性の適性の方が高いんじゃないのか?」

「え?」

「エルフの奴等は風属性の適性が高いからな。俺の同級生のリンダも風属性だし、学園長も確か風属性のはずだから、エルフの血を継いでいるお前も風属性の適性が高くてもおかしくはないだろ」

「でも、それならどうして……」



マオの師匠であるバルルは彼が風属性よりも水属性の適性が高いから風耐性の能力を持つ魔物を倒しても魔力が伸びないと考えていた。しかし、バルトからすればマオが本当に適性があるのは水属性ではなく風属性にしか思えないという。



「お前は風の魔石から魔力を引きだす事ができるということは風属性の適性があるって事だ。それは間違いないだろ」

「でも、何度か風耐性を持つ魔物を倒しましたけど、魔力量が増えた感じはないんですけど……」

「う〜ん、それは俺にもよく分からないな。そもそも魔物を倒して魔力量を伸ばせるなんて話、初めて聞いたし……」



魔術師が魔力量を伸ばす方法は未だに解明されておらず、冒険者時代のバルルは自分の属性魔法に耐性がある魔物を倒し続けていたら何時の間にか魔力量が増えていたという。そしてこの話は学園長も承知済みであり、彼女本人も特定の魔物を倒す事で魔力量が伸びる事は事実である。


しかし、マオの場合は風属性の適性があるにも関わらずに風耐性の能力を持つ魔物を何十匹も倒してきた。だが、結果から言えば彼の魔力量は全くと言っていいほどに変わりはなく、特に魔力量が伸びた感覚はない。バルルは彼の魔力量が伸びない理由はマオが水属性の方が適性が高いせいだと考えたが、バルトから見ればどうしてもマオは風属性の方が適性が高いようにしか思えない。



「その辺の話は俺じゃなくて他の人に聞いた方がいいかもな」

「他の人……」

「そうだな、お前にエルフの血が流れているならエルフの奴に話を聞いた方がいいかもな。今度、リンダ当たりに話を聞くように頼んでやるよ」

「あ、ありがとうございます!!」



バルトの言葉にマオは感謝を告げ、マオがリンダと話をする機会を設けると約束してくれた――






――翌日、マオはバルトに呼び出されて授業が開始される前に三年生の教室に赴く。既にバルトはリンダを呼び出して彼女に事情を伝えると、リンダはマオがエルフの血筋だと聞いて驚いた様子だった。



「マオさんがエルフの血を継ぐ人間だったとは……驚きました」

「まあ、話だけでも聞いてくれよ」

「ど、どうも。お久しぶりです」



リンダとまともに話すのは学園の入学以来であり、彼女が学園長に頼まれてマオを魔法学園に迎えてくれた人物である。リンダはバルトから事情を聞き、彼からマオの相談を受けるように頼まれるなど夢にも思わなかった。



「御二人は仲がよろしいのですね」

「まあ、いろいろとあってな。こいつの面倒を見ているんだ」

「先輩には色々と良くしてもらっています」

「ふふふ……意外と面倒見がいいんですね」

「うるせえっ、茶化してないでそいつの話を聞けよ!!」



バルトはリンダの言葉に頬を赤く染めてマオの話を聞くように促す。最近のバルトが丸くなった理由をリンダは察すると、を救ってくれたマオに礼を告げる。



「どうやらバルトが元に戻れたのは貴方のお陰のようですね」

「えっ?」

「おい、どういう意味だ!!」

「まあまあ、別に茶化しているわけではありません。それで私に聞きたい事というのは?」



マオは自分の先祖と同じエルフであるリンダに相談を行い、率直に自分の魔力量が伸びない原因を問う。バルトの推察ではマオは風属性の適性が高いはずだが、何故か風耐性の能力を持つ魔物を倒しても魔力量が伸びず、その理由に心当たりがあるのならば教えてほしいと尋ねた。


話を聞いたリンダは腕を組んで考え込み、魔力量を伸ばす事ができずに悩んでいるマオに対して力になりたいとは思ったが、話を聞いても彼女には心当たりがおもいつかなかった。



「申し訳ありません、私では原因は分かりませんね……」

「何だよ、エルフのお前でも分からないのか?」

「こういった話は私ではなく、学園長に相談した方が良いと思います。放課後に時間が空いているのなら私の方から学園長に話を通しておきますが……」

「えっ!?学園長に!?」

「学園長も御多忙の身なので放課後にしか時間が空いてないでしょうが、月の徽章を持つ貴方ならば話を聞いてくれるでしょう。私の方から内容は伝えておきます」

「は、はい……よろしくお願いします」

「良かったな、学園長ならきっと相談に乗ってくれるぜ」



マオはリンダを通して学園長に相談する事が決まり、放課後にリンダが迎えに来る事を約束する。マオはまさかこんな形で再び学園長と相まみえる機会が訪れるなど夢にも思わず、放課後の時間帯が訪れるまで心が落ち着けなかった――

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