第144話 魔力測定器
――放課後を迎えるとマオはリンダと共に学園長室に赴き、この時にバルルとミイナも同行した。二人もマオが魔力量が伸びない事に悩んでいると知り、どうして彼の魔力量が伸びないのかを学園長から話を聞くために同行を申し出る。
「学園長、失礼します」
「し、失礼します」
「お邪魔するよ先生」
「お邪魔」
「来たわね、そこに座りなさい」
「マオ君、この間の試合は見事だったわ。惜しかったわね、あと少しで勝てたのに……」
「あ、いえ……」
「たくっ、あの試合の決着は未だに納得できないよ。どう見てもマオの勝ちだったのに……」
「マオの方が先に目が覚めたのに……」
先日のバルトとマオの試合の結果に関してはバルトとミイナは不満を抱くが、マオとしてはバルトと引き分けになった事は特に不満はない。むしろバルトと引き分けた事に嬉しく思う。
あのときの試合はマオは全力を出し切って戦い、バルトもそれに応えて手加減せずに戦った。無論、バルトの方はマオを本気で倒すつもりで戦ったのだが、マオとしては自分の全力を出し切れて戦えた事に満足していた。
「あの試合からバルト君とはどうかしら?」
「最近はバルト先輩に魔術師としての戦い方を教わってるですけど、分かりやすく色々と教えてくれるから助かってます」
「そう……彼もやっと闇から抜け出したのね」
「闇?」
バルトの心境が変化した事はマリアも快く思い、一方で事情を深く知らないマオは何の話をしているのかと不思議に思う。だが、今回訪れた用事はマオの魔力量が伸びない理由を知るためであり、率直にバルルが尋ねた。
「先生、マオの魔力量が伸びない理由に心当たりは?あたしの見立てだとマオは水属性の適性が高いから水耐性の魔物を倒さないと魔力量が伸びないと思っていたんだけど、バルトの奴が言うにはこいつはエルフの血を継いでいるから風属性の適性が高いらしいんだが……」
「そうね、まずはそれから調べてみる必要があるわね」
「調べる?どうやって?」
マリアの言葉にミイナは不思議そうな表情を浮かべると、彼女は水晶玉を机の上に置く。水晶玉を全員が覗き込むと、彼女はバルルに声をかけた。
「バルル、これに触れて見なさい」
「あ、あたしが?」
「いいから早くしなさい」
「へいへい……」
言われるがままにバルルは水晶玉に手を伸ばして触れると、水晶玉の内部が赤色に光始め、やがて水晶玉の中に炎が灯る。それを見た他の者たちは驚き、慌ててバルルも手を離す。
「うわっ!?な、何だいこれは!?」
「私が開発した魔力の測定器よ」
「そ、測定器?」
「これって教会にある水晶玉と似ているような……」
「ええ、同じ素材で構成されているわ。但し、教会が管理する代物と違ってこの測定器は魔力量を正確に測る事ができるわ」
マリアによれば水晶玉に触れるだけでその人物の魔力の量と適性が判明するらしく、火属性の適性を持つバルルの場合は水晶玉に触れると内部に炎が誕生し、その炎の大きさから彼女の魔力量を計る事ができるという。
「バルル、熱くはならないから水晶玉に触れ続けなさい」
「こ、こうかい?」
「そう、そのままよ……この炎の大きさが貴女の魔力量を現わしているわ」
「……結構大きい」
水晶玉の大きさは両手で抱える程の大きさを誇り、バルルの炎は水晶玉の内部を埋め尽くすほどの大きさはあった。彼女が手を離すと自然と炎も小さくなって消えていき、完全に消えると水晶玉の輝きも失う。
この水晶玉が反応するのは魔力を持つ人間だけらしく、仮に魔力を持たない人間が触れた所で何の変化も起きない。魔力を持つ人間が触れる場合のみに反応し、その人間の属性と魔力量を読み取る機能がある。
「この水晶玉に触れると火属性の適性を持つ人間は炎、風属性の場合は竜巻、水属性は水の塊、雷属性は電流、地属性の場合は土の塊、聖属性は白い霧、闇属性は黒い霧といった風に発生するわ」
「へえ……教会の水晶玉は色で属性を判別するけど、この水晶玉はそれぞれの魔法の属性の特徴が現れるのかい」
「面白そう、私も試していい?」
「構わないわ」
興味を抱いたミイナが水晶玉に触れると、先ほどバルルが触れた時のように水晶玉に炎が灯る。但し、彼女の場合はバルル程の炎の大きさはなく、せいぜい水晶玉の半分を満たす程度の大きさの炎しか発生せず、少し不満そうな表情を抱く。
「むうっ……バルルのより小さい」
「炎の大きさが魔力量を現わしているわ。残念ながらまだ貴方の魔力量はバルルよりも小さいという事ね」
「はっ!!いくらなんでもガキに負けるほどの魔力量じゃないよ!!」
「むううっ……」
「気にしないでいいわ、魔力量が多ければ必ずしも優れた魔術師や魔拳士になれるとは限らないのだから」
「あの……僕も触っていいですか?」
魔力量がバルルよりも少ない事にミイナは悔しそうな表情を浮かべるが、マオは自分も試しに水晶玉に触れる事を提案すると、マリアは頷いて彼に水晶玉を触れさせる。
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