第116話 学園側の呼び出し
火属性の適性を持つ魔拳士という点ではバルルとミイナは共通しているが、二人の戦法は大きく異なる。ミイナの場合は火属性の魔力を両手に纏わせ、それを爪の形に変化させて攻撃に利用する。一方でバルルの場合は体内に蓄積させた魔力を一気に放出させ、相手に爆炎を直接叩き込む戦法を得意とした。
同じ属性の使い手と言っても人それぞれで魔法の使い方は異なり、単純な火力ならばバルルの「爆拳」が上ではあるが、彼女の魔拳は体内に一定の魔力を蓄積させなければならないので連発はできない。一方でミイナの「炎爪」は一撃の火力は劣るが、一定時間は両手に炎を纏って攻撃に利用できるという利点がある。
「ミイナは師匠みたいな事はできるの?」
「無理、前に教えてもらった時に試したけどあんな風に爆発なんて普通はできない。それに魔力の消費もきついから私は炎爪の方がいい」
「そうなんだ……」
ミイナも爆拳が扱えるかどうかは試してみたが、バルルと比べると小規模の炎しか生み出せず、しかも魔力の消費量が大き過ぎて到底扱い切れる自信がなかったという。言い換えればバルルの魔法の使い方はミイナには適していなかったともいえる。
(やっぱり師匠は凄いな……あれ、でも前に師匠は僕みたいに魔力量が少なくて苦労してたと言ってた気がするけど……)
魔法学園の二年生の中でもミイナは優秀な生徒なはずだが、そのミイナでもバルルの「爆拳」は真似できず、彼女によれば魔力消費量が激しくて扱えないという。それならばバルルの魔力量はミイナを越えている事は間違いないが、かつてバルルはマオのように魔力量が少なくて魔法学園を進級できなかったと言っていた。
大分前の話になるがマオはバルルから魔力量を増やす方法があると聞いた事があり、その方法は魔物を倒す事だと彼女は確かに言った。冒険者になって魔物を倒し続けていくうちにバルルは魔力量が伸びたと言っていたが、その話をもう一度確かめる必要があった――
――いつも通りに倒した魔物の解体を終え、素材を回収するとマオ達は冒険者ギルドに訪れる。基本的に魔物の素材を買い取ってくれるのは冒険者ギルドだけであり、受付嬢に素材を渡して査定を行ってもらう。
「確認が終わりました。一角兎が4体、コボルトが10体ですね。合計で銀貨6枚です」
「銀貨6枚か……それなら指導料を引いてあんた達には銀貨5枚だね」
「私は2枚でいい、マオが一番多く倒した」
「え、でも……」
「両親の仕送りするんだろ?なら、遠慮せずに受け取りな」
報酬の取り分は毎回3人で話し合い、ちゃっかりとバルルも指導料という名目で受け取っている。彼女は教師として毎月給金は受け取っているが、一応は彼女の協力がなければマオとミイナは平日に王都の外に出向く事もできないので文句は言えない(そもそも不満も抱いていない)。
「皆さんには本当に助かります。最近は王都の近くでも魔物が現れるようになって困っていたんですよ。一応はうちの冒険者も対応しているんですが、手が足りなくて……」
「高階級の冒険者共はいつも通りに遠征してるんだろう?もう聞き飽きちまったよ」
「最近、外に出向く度に魔物の数が増えている気がする」
「お陰で弁当も食べる暇がなかったね……」
最近になって王都周辺で魔物との遭遇率が増えており、その影響で王都に赴く人間も減り始めていた。一応は冒険者ギルド側も冒険者に魔物の討伐を促しているが、高階級の冒険者の殆どは今は出払っている。
高階級の冒険者は遠征して他の街に赴き、危険度の高い魔物の討伐や貴族や商人の護衛を行う事が多い。理由としては王都近辺に現れる魔物は危険度が低く、倒した所であまり良い評価は得られない。それならば遠征して危険度の高い魔物を倒す事で評価を上げようとした利、あるいは貴族や商人の護衛を勤めて上流階級の人間の信頼を得ようとする輩も多い。
最近では王国全体で魔物が数を増やしているという報告があり、昔よりも冒険者の仕事が増え始めた。だからこそ冒険者の代わりにマオ達が外に出向いて魔物を狩ってくれる事にギルド側の人間は感謝していた。
「さてと、報酬も手に入ったし今日の所は帰るか」
「お腹減った、バルル奢って」
「たく、仕方ないね……ならここで食べていくかい?」
「いや、それは辞めておいた方がいい」
「え、その声は……ギルドマスター!?」
マオ達の会話の際中に割り込んできた人物は冒険者ギルドのギルドマスターである「ランファ」であり、彼女は神妙な表情を浮かべてバルルに告げた。
「魔法学園側から連絡が届いた。今すぐにお前達は魔法学園に戻り、学園長の元へ向かえ」
「えっ!?」
「学園長?」
「……何かあったのかい?」
「詳しい話は私も聞いていない。だが、急いで戻った方がいい」
ランファの言葉にマオとミイナは驚き、バルルの方は面倒くさそうな表情を浮かべた――
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