第7話 報酬
その後、3人はギルドに戻り、スライム8匹を討伐したことを報告し、報酬を貰った。
「いやぁ、やっぱりたった1匹だけでも多いとその分、ぎっしりしてるわねー」
シュリィが握っているのは、スライムを倒した報酬が入った袋だ。袋を持ったシュリィの顔は満足そうな笑顔だった。スライムが1匹増えていたことは依頼には書かれておらず、予測していない突然の事態とそれに対処したことが認められ、特別に1割だけ報酬が増えることとなった。
「そうだ。報酬の分け前どうする? ま、活躍したのは私だから1番多いのは私だけどねー!」
彼女はその金色のサイドテールを大きく振り回しながら、こちらに振り返った。満足そうなにやけ顔だ。両道もヒロナも、今回のシュリィの活躍は知っている。報酬の分け方も、シュリィが多いことに異論はない。
「俺は、食事代と宿代ぐらいでいいよ」
「別にもっと持っていってもいいのよ?」
「そうは言ってもなぁ・・・・・・金を使う場所もあんまないし」
娯楽もないこの場所で両道の欲しいものなどない。食事と泊まる場所が確保出来れば、後はとくに必要ないと思えた。
そんな両道にヒロナがある提案をする。
「それじゃあ、私と買い物に行きませんか? その服もボロボロですし・・・・・・」
両道が自分の着ている服を見る。昨日から着替えも洗濯もしていなかったせいで、確かにボロボロになっている。着ていて不快感というほどではないにしろ、若干気になってしまう。確かに服は変えたほうがいいのかもしれない。
「そうだね、行こうかな」
「じゃあ、私にはその分のお金が報酬ってことで!」
「なんか2人とも欲がないわねー。私だけが欲張りみたいじゃない」
はい、これ。シュリィが2人に報酬を分ける。
「そしたら早速ですけど、一緒に買いに行きましょうか」
町を少し歩いて回った後、目的の店に着いた。この町の数少ない店舗であり、建物もそんな大きくはないが、生活に必要な物はちゃんと買い揃えることが出来る。
ヒロナにどれにしますか、とは聞かれたが両道が好みと言えるような服が無かったので、適当にどれでもいいかなと答えた。そんなことを言ってしまったせいか、両道よりヒロナが真剣に考え始めた。
「これなんてどうですか?」
「うーん」
こんなやり取りが何回か続いた後、結局は店で1番動きやすそうな服に決めた。地味ではあるが冒険者らしい服装だ。店を出る頃には、それっぽく着こなすことが出来るようになっていた。
「ありがとう、ヒロナ」
「いいんですよ、私達パーティーですし」
お互いに少し照れた。
用も終わり、シュリィも待っているので、ギルドへ戻る。その途中、ヒロナが両道に何かを渡してきた。
「両道さん! これ、私とパーティー組んでくれたお礼です」
「お礼?」
彼女が渡してきたのは、鞘に入った短剣だった。片手で扱いやすく、接近戦や雑事に向いている。服と一緒に買っていたみたいだ。ヒロナが腰に付けてみてください、と言うので、両道は言われた通りに腰につける。
「似合ってますよ」
「あ、ありがとう」
両道はまた照れた。少し頭を掻きながら、短剣の入った鞘を撫でる。一気に身が引き締まるような思いがした。既に気に入ったのかもしれない。
「でも、お礼を貰うほどのことなんか何もしてないよ」
「私があげたいんです。1人で心細かった時に、仲間になってくれたことへの、私からの感謝の気持ちです」
彼女が笑う。沈む夕日と重なり、美しい。両道は顔を紅くしたが、それが夕日に照らされたから紅くなったのか、それとも他に理由があるのか、このときはまだはっきりとはしなかった。
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