第2話 「幻視するバリケード」

バリケードは蒸発した

小綺麗な空間が現在だ

小汚さを回想しても

ついにはセピア色の思い出


あなたたちはもう古いのだ

物分かりの良い清潔な方々が

後ろの方から突き出てくる

それを刈り取るのはあの輝き

あんなに嫌っていた砂だった


砂は今もまとわりつき

量は半世紀前の半分だったが

砂を捨てた我々よりも盛んなのだ

砂は平和を叫んで清潔さに取り入る

我々は汚さの中

ノスタルジアで

風化するばかり


バリケードの蒸発

懐かしむことは貶めること

続いている戦闘を見つめよ

何も終わってはいない

砂は平和の中で少しずつ

ゆっくりと消えてゆくだろう

我々の汚さはもはや別の場所に

その場所もただ潰されるだけ

それでもやる

いつか来るその時がある


いつかそのとき

清潔さも汚さも終わった後だ

バリケードが立ち上がる

全く違う装いをもって

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断章1968 黒田寛実 @otoronenayu

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