14話 都落ち


 ダンジョン攻略を早々に切り上げ、ギルド本部まで戻ってきた。

 相変わらずここは賑やかで、たくさんの人が集まるよね。

 だけど、今日はいつもと少しだけ雰囲気が違った。


「お前、無事だったのかよ!? 急にどっか行っちまうから心配したんだぞ!?」


 大工のおじさんの知り合い、かな。

 私たちが帰ってくるなりまず大工のおじさんの方へ、親しげにおじさんが駆け寄る。


 ふたりの関係はわからないけど、相当心配してたんだってことはわかる。

 ちゃんとケガもなく送り届けれてよかったよ、ほんと……。


 みんなで顔を合わせて、そんな様子に安堵して笑い合った。

 今日の収穫は少ないけど、わかったことはちゃんとある。

 そのことも踏まえて、バドさんたちと作戦会議でも──


「お前ら、今すぐ離れろ! サグズ・オブ・エデンとグルのアンラッキーモータリティだ! さっき、アイツらに襲われたんだ!」


 駆け出した大工のおじさんが、突然そんなことを言い出した。


 ………………。

 …………。

 ……。


 いやいやいや、待って待って待って!!

 なんか、話が全然違う方向に行ってない!?

 みんなの視線が、一気に私たちに集まる。


 普通なら、いきなりすぎておかしな話だと思う。

 だって、私たちが大工のおじさんを送ったのに、その私たちが大工のおじさんを襲うなんてありえないもん。

 でも──


「お前ら……! 最近悪さばかりすると思ってたが、まさか俺のダチにまで手を出しやがって……!」

「善人ヅラしてこんなひでえことしやがって! お前らのこと、見直しかけてたってのによ!」


 次々に言葉を並べる大人たち。

 冒険者、鍛冶職人、ギルドの職員まで。

 ここ最近の行いで塗りつぶして、寄ってたかって目の前にいる人たちへ攻撃する。

 集団心理ってものなのかな。悪意の塊はどんどん大きく、醜くなってく。


 たくさんの人がおじさんの言葉を鵜呑みににして、私たちに言葉を吐き捨てた。


「ノーブルくんがそんなことするわけないじゃない!」

「グラフィス様とコヤケさんだって! 勝手なこと言わないで!」

 

 傷ついた一般のおじさんの味方をする、ギルドのみんな。

 ノルくんたちを支持してきたファンのみんな。

 その人たちが一斉に口喧嘩を始めた。

 まさに、一触即発。

 今すぐにでも乱闘が始まりそうな勢いだった。

 

 濡れ衣を着せられ、イメージダウンしつつあるサグズ・オブ・エデン。

 彼らの味方をする人なんて、誰ひとりとしていなかった。

 

「みんな落ち着いて! 私たちの話を──」


 間に入ってみたけど、もうそれどころじゃなかった。

 気がつけば、どうしようもなくなってた。

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