第7話 トキとココロの部屋

「そう言えば、何か髪のボリュームが凄いな」

「エクステですよ。付け毛の髪は抜けた自前の髪を使ってます」


 ライトは今朝からアートの髪が、不自然なくらいの毛量であり、抜け毛も凄かった理由を聞く。

 すると、エクステを使ったアクセサリー枠を消費しないステータス・アップやリジェネ効果を持つと言うではないか。

 一般的に指輪や腕輪、バックル、イヤリング、ネックレスが底上げの効果を持つアクセサリーとして、冒険者や傭兵界隈では主流だ。効果が低くなるも、刺青系のペイントを服の下に施す事もある。

 指輪は指の数だけ付けれるが、効果は重複しない。腕輪や足輪、チョーカーとも重複しないので、基本的には指輪に足輪か腕輪、イヤリングで体力や防御力、リジェネ効果を付与する。

 ペイントも重複しないが、指輪や腕輪が壊れると効果が発揮されるので、保険としてわざと重複させる人もいる。

 アートが使うエクステは、一房で魔力が少し上がり、重複する為かなりの量を付けたりする。効果は指輪や腕輪が高いが、エクステを同じ効果量だけ付けたら、更に魔力やリジェネの効果が出る。

 ちなみに、外す際は一日経つか、風呂に入ると全てのエクステが取れる仕組みだ。

 効果を高めるには自分自身の毛を使ってエクステを作る必要があり、使い捨てなので取れたエクステは捨てるしかない。

 しかし、抜け毛が少ないとか、禿げている人もいるので、どこの毛でもいいから採取し、脇毛や鼻毛を培養する者もいる。その上、エクステだから髪以外の脇や下の毛を増やす奴もいるのだ。

 早い話が、ゲームのキャラクター・エディットやキャラクター・クリエイトをする際、髪型で長髪や短髪が選べるし、ゲーム内では髪型をいつでも変更出来る。そこに目を付け、付与や魔法、人体に関する科学や錬金術を融合させて作られている。


「それも保険やら隠しステ?」

「それもあります。まぁ、ブーストやドーピングに近いモノです」


 アートは魔力アップのエクステを付け、魔力と体力を回復するリジェネのエクステも、これでもかと盛ったので、サンドロックと戦う時に魔法を最後まで使えた。

 純粋な魔法使いでもないので、普通は連発出来ないが、魔力によるゴリ押しで形となっていたのだ。


「培養費用やコスパはどうなんだ?」

「培養は作る量で違いますが、そこそこ高いです。コスパは良い方ですね」


 風呂や水浴びに該当しなければ、汗や雨で濡れたりしても取れない。どしゃ降りの大雨やエクステ部分が流血で濡れたりすると、流石に取れてしまう。

 故に、泥で汚れても簡単には取れないし、サンドロック戦では麦わら帽子も被っていたから、ライトの家で風呂に入り、洗髪した際に取れたのだ。

 培養費は高いが、一房当たりはかなり安い。量産すれば単価が低くなるので、効果も低く、値段も下がる。

 このエクステな底上げアイテム、実は個人情報が抜かれているので、知らない内に自分のクローンがいたりもする。という怖い噂もあった。

 使わない人には関係無いので、ライトは知らない。


「だからポニーテールが長いのか」

「頑張ったのですよ。主にヘビー達が。……ちなみに、髪をスキンヘッドにして、エクステを付けたり、禿げ頭に植毛して、抜けないようにしている人もいるとか」


 髪の話で、ライトは将来禿げたら、ウィッグを付けるより、坊主頭にしようと決める。


「オートマトンにも効果があるのか?」

「エクステは効果あるぞい。指輪とかは専用のモノがいるんじゃがのう」

「後頭部部分はエクステじゃよ。前髪や側面の髪はウィッグで、放熱時に取るんじゃ」


 土間で会話しているので、近くにいたジェネや軽量に聞く。

 オートマトンやゴーレムは、基本的に髪や服が無くても、性能面に支障は無い。だが、人目を気にするマスターや、見ているだけで寒そうとか、遠くからだとオートマトンは人間に近い見た目なので、公然猥褻で誤認逮捕も多々あった。故に、最小限の衣服の着用が義務づけられている。

 胸と股間に絆創膏やガーゼを張っただけでも、水着や下着と見なされるので、変なマスターに仕えるオートマトンは衆目を集めやすい。

 ちなみに中身へ手を加え、オナホや前尻尾の機能を付けたオートマトンもいる。


「そのポニーテールはエクステか」

「ポニテ・フェチには物足りんかのう?」

「誰がポニテ・フェチだ」

「違うんですか?」

「……どうだろ。ちょっと自分では良く分からないかな」

「アートの姐さん、髪を巻いて扱けば、兄貴はポニテ・フェチに傾くはずじゃ」

「えー、髪に魔力を通して尿道を攻めた方が良いのでは?」

「等間隔で結んでコブを作れば、更に刺激的らしいぞい」

「止めて、俺の息子をイジメないでくれ。何か恨みでもあるのか?」

「わりとあります。ベッドヤクザだし、ねちっこいし、ボディ・タッチが多いですし」

「息子関係無いじゃん!」

「いいえ、下半身の欲望に忠実なんです。下半身でモノを考えているから、上半身が自発的にしていると、勘違いしているだけですよ」

「それは偏見だって……」


 ちょっとアートの言い分が分からないが、考えるな感じるんだ的な悟りで、何となく言いたい事を理解するライト。

 とりあえず、今日は尿道プレイをしたいらしい。

 が、今はまだこれから鍛練がある。ボディ・タッチは仕方がないので、我慢を強いるか、魔法で感覚を鈍化して貰うしかない。


「と、ところで、五感の感度は魔法でどうにか出来そうか?」

「魔法薬があります。感度一・五倍、二倍、三千倍とか」

「その逆は?」

「鈍化する魔法薬ですか。……なるほど、そういう方向のプレイがお望みですか」

「エロから離れてくれ」

「魔法形態はあります。が、習得していないので、薬に同じモノがあり、それを少しずつ飲んで、丁度良い塩梅となるように、試行錯誤しますね」

「便利だな、魔法とか魔法薬とか」

「五感もそうですけど、身体強化魔法は難しい部類です。筋力や反応速度が二倍とか三倍とかになり、総合したら感度三千倍に似たヤバい事になりますし」


 腕力が上がると筋力が上がるので、脚力も上がる。つまり、骨と筋肉、皮膚や神経伝達速度、触覚関係全てが身体強化魔法の対象となり、ソニック・ムーヴに耐えれる魔法障壁も魔力のオーラで展開する為、魔法的兼物理的防御力も上がる。故に魔力消費もかなり高い。

 ただし、致命的な欠点があり、皮膚や神経伝達の速度が強化されるので、くすぐりやツボを押されるとかなり痛い。接触への感度が上がる以上、自滅による肉体へのダメージにも悶絶する。拳を振るい、空振りした際の反動とかが強くなるのだ。

 慣れないうちは、障壁で防げる攻撃の振動に負ける。こうなると、一体どうして名称が身体強化魔法か、という哲学的な思考をしてしまう。ただのハイリスク・ハイリターンなトレード・オフだが、魔法だけを勉強して、人体への理解はしていない。

 純粋な魔法使いほど、魔法や魔術、魔導具や魔力にしか興味が無いので、科学や武器はどうでもいい魔法使いが多いのだ。

 その点、冒険者や傭兵は違う。長所も短所も知り、科学も武器も知る。自分に合うモノを積極的に取り入れ、時に他人と補いつつ戦う。


「感度も上がるのか」

「身体強化中は、絶対に触らないで下さい。旦那様は特に」

「仮に触ったらどうなる?」

「戦闘中にアへって行動不能になります」

「……不便だな、魔法って」


 身体強化中は触覚が鋭敏になる為、アートからライトへ触れるのもダメなのだ。

 日常生活においては触覚を鈍化させるか、アートから触れる場合は大丈夫。

 ちなみに身体強化と対になる、身体弱化魔法もある。バフとデバフなので、身体弱化は骨が脆くなり、筋力が衰えた状態になる。

 要は老化に近いデバフだ。かといって老人が身体強化魔法で若返る訳では無い。


「おっと、服薬しますね」

「外に……ん、何か光ってるな?」


 片隅に鎮座している水晶玉が淡く光っているのを見て、ライトは警戒心を強める。

 手紙の類いが来ると淡く輝き、だいたいは魔法使いから厄介事を寄越される。

 一番近い町のギルドから緊急依頼書や、コボルトの里からチラシが来たり、ケンタウロスの村やハーピーの村から直接手紙が配達され、ライトが居ない時はヘビー達が水晶玉に保管している。


「何だ……装甲魔導列車のチケット?」

「あら、何か応募でもしてましたか」

「…………いや、友人達が新婚旅行代わりにと、帝国二ヵ国と王国間への、無限列車を手配しているらしい」

「誰か喋った、いや、噂を聞きつけたのかな?」

「ハーピー達が吹聴したから、コボルトやケンタウロス、リザードマン達は知ってる」


 チケットと手紙をアートへ渡す。

 ギルドを通した依頼で、線路上と国家間の異常調査を目的とした旅行プランだ。

 代金は全てギルド持ち、というか、友人達が支払っている。魔法使いの手腕なら出来るし、恐らく某メイド当たりがライト達の裏取りをしているので、旅行がてら国家間のキナ臭さを突ついて、降りかかる火の粉を振り払えと言う事だろう。

 ムダに刺激して余計な火種を点け、いけしゃあしゃあと声を大きくして消す。


「……完全武装、長期戦を視野に、無補給での連続戦闘有り。追伸、爆発しろ!」

「新婚旅行って何だろうな」

「あ、チケットの時刻は明後日からですよ。ところで、ここはどこに当たるんですか?」

「西の山脈を越えた先に別の王国があり、その隣国が王国と帝国二ヵ国がある。出会った村がある国の方向は南だ」

「どこも遠いですね。海を挟んでないだけマシなのか、それとも船旅が無い事を惜しむべきか」

「まぁ、水晶玉で近くに転位するし。列車や船での旅は余裕がある時か、ギルドや水晶玉が使えない連中の足だから」


 王族、貴族は優雅さを尊ぶ。傭兵や冒険者以外は水晶玉が使えない。あと、ギルドを追放された元傭兵達も使えない。山賊や盗賊は水晶玉に近づくと逆に狩られる。


「列車にも水晶玉って……」

「あったはず。いや、旅行中は使えない可能性もあるか」


 無補給と明記されている以上、魔法使いは水晶玉のメンテナンスか、アップデートするのだろう。

 戦闘有り、これは列車の内外で、国家三ヵ国を相手に出入りするのだ。襲うのは此方で、国軍は獲物となる。いや、紛争地域を突っ切れっていうのは、どう考えても旅行とはならないのだが、国を相手にする以上、友人達も動くのだから軍三個中隊のみを凌げばいいはず。最悪の場合、列車は脱線させて徒歩ちで帰る可能性もある。


「サンドロックはどうします?」

「あのままだと連れていけないぞ。一々召喚するんなら、それでもいいけど」


 リルが玄関口から顔を覗かせる。


「サンドロックは男の娘になったっぽい」

「お久しぶりです。マスター」


 サンドロックはメタルな古竜サイズでは不便を感じ、竜人形態に魂を移した。その後、食ったルナギャル達の肉体を侵食しつつ解析すると、液体金属と王族の死体とルナギャルの肉体を混ぜ、ルナギャルの魂を受肉の片隅に追いやり、主導権を確保する。

 モデルとなったルナギャルを大柄にした体格と長身を持ち、異世界に来た事で弱体化したルナギャルの神格、金属で置換した骨格と筋肉、増えたトン単位の体重は魔法で地面スレスレに浮かぶ。

 こうして森を自由に跳ね、駆け回る竜人な男の娘となったのだ。

 二重人格案もあったらしいが、サンドロックとルナギャルではソリが合わなかったので魂を封印し、受肉した脳の一部に押し込むと、隔離して常時復活と死ぬ痛みを味合わせている。

 その上で元の肉体に備わっていた神格は、丸っとサンドロックのモノとする。

 ルナギャルの肉体は古竜の精神に反抗したが、弱体化した神格と肉体に宿っていた魂の残滓で比べたら、サンドロックの方が圧倒的に強い。精神も肉体も弱体化したデミ・ゴッドは、この世界では一般人に毛が生えた程度の存在だ。

 死体の情報も取り入れたので、サンドロックは色んな意味で男の娘となったが、気持ちはオスである。


「そうですか……その調整も兼ねて、森を駆け回っていたと」

「はい、言語に服装、体格のリーチにも慣れました」

「服って魔法のモノなのか?」

「死体が着ていたモノを、魔法でまとめて作り直したモノです」


 サンドロックの服はルナギャルが着ていたモノを大きくしたモノであり、繊維に液体金属が浸けてあるので、実質的に古竜の鱗並みの防御力を持つ。ただ、死体の服に掛けてあったエンチャント効果は無い。


「なら、リルとヘビー、ジェネも連れて行こう。軽量は留守番を頼む」

「了解じゃ」

「リルもっぽい? 散歩以外は久しぶりっぽい!」


 人員を身繕い、アートとサンドロックに古武術を教えるライト。

 リルは家の周辺以外では喋らないので、いつも通りに過ごす。

 ヘビー達はマジック・バッグへ弾薬に予備の武装、衣類にサバイバル・キット、非常食を積めていく。

 サンドロックは見学しつつ、ライトやアートの動きをラーニングして、今の肉体に適した力加減を覚える。

 アートはライトが繰り出す、古武術を用いた接近戦や肉弾戦を受けつつ、受身や体勢の起き上がりを素早くする。

 柔道の投げ技は投げて終わりだが、合気道や柔術は投げては回転して起き上がり、止めの一撃に備える。

 武器を用いた古武術より、肉弾戦を中心に教えるのは、回避や体勢の建て直し、追撃への警戒、それらを通して、後の先ないしは先の先を読む為だ。

 生き残るのに三択の、選択出来る未来が見えたとして、三択とも不正解だった場合、第四の選択肢が必要になる。だが、考えている時間は無い。

 直感的に感じた、生き残れる道を走り、予測や予知にも引っ掛からない手を打つ。

 例えば、相手から殴られたら、自分から後ろへ倒れつつ、脚を前に出す。すると、相手の体勢は前のめりなので、脚が腹部か脚に当たる。倒れ込んだ際に受身を手や肘から着いて、関節で衝撃を柔らげる。

 背骨を守る他、下段蹴りへ移行する体勢へと、瞬時に入る。

 中国拳法や躰道に多く、全く違う格闘なのに似た技があるのは、効率的で合理的な身体の使い方になる為だ。

 空手の海老蹴りから発想を得て、躰道が出来たり、中国拳法から空手が生まれる。

 古武術も同様で、柔術や甲冑組手は、それだけを突き詰めた結果の派生だ。

 ただし、人間は武器を持ったら、武器を頼る。剣よりも近い間合いで弱くなりやすい。

 故に、無手での身体の使い方や効率的な移動方法、合理的な技の繋げ方を教える。

 ライトは一通り教え、感覚で覚えさせつつ、組手でアートを投げ、打つ、蹴る。実践と実戦を交えて残心を残すように意識させる。

 また、受身が難しい地形もあり、階段で投げられると受身はほぼ取れない。相手が離してくれないと、距離を取る事も出来ないだろう。下手すると蹴られて階段落ちだ。

 地形に天気も気を付ける必要がある。太陽を背にした相手、川等に半分浸かった相手、突風により舞い上がった砂、雨の中での殺陣。

 戦っている最中に、地震が起こらないとも限らない。

 地面を殴って地震を止める奴もいるだろうし、隕石を魔法で落とす者もいる。


「よし、こんなもんだろう。帰って飯にしようか」

「ありがとうございました」


 投げ飛ばされる際、相手の方へ垂直に足を踏み込むと、何故か投げる側が勝手に回ってしまう事がある。

 踏み込むのは投げられる力が加わる瞬間、かなり難しいタイミングだ。

 踏み込むと、手首から肩へと投げる力が流れて伝わり、関節や筋肉が捻れてしまい、投げるはずの自分が捻れる方向へと回ってしまう。この時、手を離すのは難しく、回ってから初めて、自分が転がったような感覚に陥る。投げる途中で手を離したら、投げられないし、相手の足を刈り、宙に浮かせたり、体重や重心移動を使って投げる事が多い。

 合気道の投げ技に近いが、合気道は自分の力を使わず、相手のみの力で制する。流派によって自分から仕掛けるか、崩しに重点を置くかの違いはあるが、柔術の様に組み合う事はない。

 相手が掴んで来たら崩し、自分から掴んでは、振り払う相手の力を使って投げる。柔術や空手道、柔道や躰道と違い、組み合って睨み合う事なく、一瞬で終わらせるのが合気道だ。

 そして、合気道や空手道の原形が古武術である。一瞬の立ち会いに特化させた合気道は、剣術家の殺陣に通ずる。手足は剣の利合りごうなので、刀術や杖術を見切って動き、逃げるだけなら可能だ。

 勝負をしないのは、剣道三倍段というモノがある以上、無手で刀や杖を持つ相手等、ただただ面倒なだけである。

 合気道の不思議や拳法、各武道を教わったアートは、少しだけ身体の使い方が解ったような気がした。

 家に帰り、ヘビー達と料理を作りながら、風呂で汗を流す。

 食事とトイレをして、寝室へ向かうと、ライトと男の娘サンドロックが、一メートルほどの金属の球体が乗った台座を片隅に置いて、ケーブルを繋げてヘッドギアを被っている。


「それ、何ですか?」

「友人の知り合いが作った、試作品だ」


 簡単に説明するライトだが、その正体は魔法とVRシステムにAR機能を付けた代物である。

 人型ならゴブリンでもゲームが出来るし、VR内ではログインして直ぐ死んでも、ゲーム内で何年でも過ごしても、ログアウトしたら六時間きっかり経つ。AR機能はVRシステムの中に組み込まれており、内部で現実相当の暮らしや鍛練を積める。性事情、食事、睡眠、戦争、賭博、政治、医療、魔法、職業、各種資料が五年前のモノではあるが、完備してあり網羅されている。

 魔物の生態や行動はパターン化されているが、生き延びると思考は学習していく。

 魔法や医療、武器は五年前相当のモノで完結しており、変化は誤差の範囲内だ。つまり、魔法の改良はある程度しか出来ない上、武器の改造も同様である。

 新しい武器や魔物は、アップデートしないと反映されない。試作品故に、作った本人が存在を忘れているので、出回った既製品しかアップデートされないのが欠点だ。

 あと、設定を変えないと、食事と水分を摂るだけで、デフォルト状態だと何年でも生きられる。流石に病気ーーガン等ーーやケガーー脳や心臓以外が欠けた状態ーーを負うと、長く苦しい生き地獄を味わうので、さっさと自殺するしかないが、それでも食事と水分補給で延命は可能だ。何気にヤバいバグで、魔物やNPCの拷問に利用される。

 試作品だからか、NPCや魔物の造形は似通った姿になりやすく、男の子は父親に似たり、女の子は母親に似る。孫は祖父母に似るので、孫の代でサイクルが戻る仕組みだ。これはペットや魔物も同じで、何だったら武器の造形もそう。鍛造だろうが鋳造だろうが、武器はほとんど同じ見た目になる。違うのは中身だけで、性格や知能は、環境と個人の努力に寄る。

 ライト達PCは性別を変えられない。身長と体重はシミュレーションに準拠し、五年の誤差で増減可能だ。ちなみに、ゲーム内の若返りの魔法薬を使えば、赤ちゃんまで戻れるし、加齢と共に成長も出来る。

 胎内回帰というニッチな性癖は不可能なので、赤ちゃんプレイでお茶を濁す。

 女性なら出産から子育ても可能だが、あくまでもシミュレーションなので、育て方によっては現実で反抗期が早まる、等が起こりやすい。

 物理法則や演算は現実準拠で、気密性さえ完璧なら月にも深海にも行ける。果ては別の惑星にも行けるが、地球型環境再現テラフォーミングは出来ない。コロニーなら作れるが、科学文明の進みは遅く、魔法でのゴリ押しなマジカル・コロニーとなる。勿論、地球型惑星へと落とせるし、隕石だって破壊だけなら出来る。残念ながら隕石の再利用は、内部構造や素粒子の演算が重くなる為、隕鉄やオリハルコン等の幻想鉱石類に留まる。

 更にVRやARのデバイスを作れたりもするが、入れ子状態になるので、PCは使えずNPCのみ使える仕様だ。


「……と、まぁ、長くなるから被って中で話すぞ」

「サンドロックは既に?」

「入っている。あぁ、そうそう。身体に異常があっても六時間経つから」

「例えば、刺されたり、火事が起きてもですか?」

「そうだ。遺書を書く必要があるなら、待ってやるから書け」

「旦那様へ……」

「ちょっと、親とか友人は!?」

「……親はクズなので、知りません。そもそも、家族と仲が良いなら、報告してますから」

「あー、片親が存命で、もう片方の親が鬼籍だったっけ」

「そう言う旦那様は?」

「毎回書くのは面倒なので、最初の奴を、ヘビー達やオーガの族長に預けてある」


 後で見せて貰おうとか考えているアートだが、ふと気付く。


「旦那様、私への遺書は?」

「…………え、ダイイング・メッセージ?」

「苦悶の梨という、拷問器具がありましてね」

「ごめんなさい、それは本当にガバガバとか生ぬるい、ヤベー事になるから許して下さい」


 肛門が裂け、出血が止まらないように、器具で広げて固定し、内部の刺が括約筋に刺さる。

 野生動物は傷口を舐めて、唾液で止血するが、肛門は届かない為、狙われやすい弱点だ。二羽のカラスが犬の肛門をつつき、常に狙っては逃げるを繰り出す事で衰弱させ、交互に休みつつ狩る。

 人間もヨガが得意な人でなければ、関節や背骨が異様に曲がったりしないので、肛門が裂けると死ぬ。

 また、尖った竹が肛門に刺さったら、切れ痔や排便時に激痛を伴うので、竹藪や斜面で用を足す際は注意しなければならない。


 死ぬ程痛いぞ。(犬の散歩中に斜面を転げ落ちた経験談)


 アートはライトに新しい遺書を書かせ、お互いに預かる事にした。

 これでヤンデレたアートに刺されても、殺人にはならないだろう。この世界では、基本的に人権は王族や貴族にしか無い。例外は権力を暴力で捻り潰す強者のみ。

 力こそパワー、魔法と筋肉こそ至宝。


 VR内部にログインしたアートは、周囲を見渡す。まるで小説の冒頭のような白い空間だ。

 案内役は居ないので、キャラクター・クリエイトを進める。

 ゲーム・アプリも試作品なので、チュートリアルや詳しい説明も無い。全て自分で調べていくしか無い状況だ。

 幸い、時間は気にしなくてもいい。死んでも六時間、どう生きても六時間後、現実の肉体は休んでいる。

 脳は覚醒から半覚醒状態、つまり、うたた寝して舟を漕いでいるか、白昼夢を見ているか、という状態である。

 視界の端に体力と魔力のゲージがあるも、それだけで、数字や簡易な地図、 方角、インベントリは無い。スキルのアイコンすら無いし、時間も分からない。

 試作品の最初期がベースとなっているので、ステータスもレベルも存在しないのだ。物売るとか、デバッグしていないとか、そう言う問題では無く、出来たモノを押し付けただけだった。

 アートは絶句して瞬きすると、目を瞑った時に設定の一部が見え、ログアウトのコマンドや痛覚の設定変更が可能と知る。

 白い空間から出ると、辺り一面がどこかの草原だった。

 着ている服装こそ初期のキャラクリから引き継いでいるが、道具もバッグも無い。

 風の感触に草の匂い、野生動物の気配、自分の息遣いと心音、眩しい太陽と青空。流石はVRだと感心し、背後から迫り来るウサギを避ける。


「角、ヴァーポル・ラビットか」


 避けた為、アートの前方へと跳んでいくウサギの、尻目掛けてヤクザ・キックし、更に加速させて宙に浮いた体勢を崩す。

 着地に失敗しつつ草原の草に隠れたが、アートは蹴った後に追い掛けたので、ウサギが振り返るとアートの抜き手が迫っていた。

 咄嗟に横へと転がるも、アートも抜き手から地面へ手を着いて側転しつつ、倒立状態から勢いを付けた蹴りを振り下ろす。

 ウサギの顔の側面へ当たり、反対の脚で胴体を踏む。 肋骨と肺が潰れたウサギに止めを、ささない。


「どうせ狼とかが居るんだろうし、瀕死の生き餌を囮にしますか」


 殺すと血抜きや解体をする必要があるも、ほぼ死んだ状態とはいえ、瀕死とはまだ心臓が動いているとも言う。

 角をへし折り、草原の地面をほじくり返すと、石ころが出てきた。

 ポケットに入るだけ入れて、首狩りウサギを手に移動する。

 人里は見えないが、川やなだらかな丘陵はあるはず。草原だけで平野とは言えないし、地中の水分はどこから得ているかも考えると、ほじくり返した際の土の感触から、そう遠くない近場に川があるか、或いは盆地の上の方に今は居て、たまに雨でも降るのだろう。

 つまり、下ればいいのだ。盆地だろうが川があっても、下流へと向かえば人が通る道、橋とかの痕跡が見つかるはず。

 しばらくの間、真っ直ぐ太陽の方向へと歩く。ウサギは途中で破棄し、向かって来た狼の鼻面を角で刺す。怯んだら追撃して首を絞め、怯まなかったら前足を掴んで投げ、地面へと叩きつけて、腹部をボールの様に蹴りつける。

 首を絞めた狼は気絶したので、後ろ脚を持ってジャイアント・スイングし、進行方向以外へと放り投げる。腹部を蹴った狼も首を絞めて気絶させ、どこかに投げ捨ててしまう。

 角が砕けたので、石と石をぶつけて砕き、乱雑に割って角張った石の板みたいな破片を作る。

 ウサギ、鳥、狼、牛、羊と出会うのは動物のみ。向かって来るのは鳥や牛もいたので、引き付けて交錯した際、目に向かって破片を突き刺し、怒ったり怯んだ隙にもう片方の目も潰す。

 羊は大人しいようで、草を編み込んだ首輪と手綱を着けて、勝手に乗っかったりもした。流石に驚いて逃げ出すも、アートは振り落とされないように辛抱強く耐え、疲れた頃合いを見て進行方向へと首を手綱で向ける。

 暴れて蛇行したが逆走はしていなかったのが幸いだ。

 羊はアートを乗せても脚が折れず、少し土汚れがあるも、とてもモフモフしていた。

 アートは喉が渇いてきたが、羊も暴れたからか、水を求めているかのように歩く。しばらくして川を発見し、アートと羊は喉を潤す。


「それにしても、ここはどこでしょう」


 羊は草を食べ、アートはまた襲って来たウサギを仕留め、石の刃物で解体し、血の滴る生肉を川で洗いつつ食べる。

 基本的に生肉は食べてはいけないが、ここはゲーム内だ。限りなく現実的だが、仮想現実の世界。


「ああー! 魔法使えるじゃん!」


 既存のゲームなら魔法もスキルも習得から始める必要がある。同じVRMMOゲームでも、他のゲームのスキルを引き継ぐ事は出来ないし、可能なのは培ったプレイヤー・スキルだけだ。

 ちなみに、この世界を構築するゲームはMMOではない。少数人数参加型オフライン・ゲーム。一メートルの球体はハードウェアだ。

 そして、魔力が見えるし、ゲージも見える以上、魔法は現実世界と同等のモノが扱える。ニューゲームでも扱える理由は、知っているならスキップ可能で、一々丸っと最初からなんて、いくら時間無制限でも面倒だと、作った本人が思ったからだ。リアル知識をTRPGにおいてGMに確認する程度の事。

 アートは火魔法で肉を炙り、浄化魔法で胃の中をキレイにし、しっかり焼くまでの間、念入りに殺菌していく。

 野性味溢れる食事を終え、サンドロックを召喚した。

 突然現れた、古竜モードのサンドロックに羊は、特に驚いてもいない。

 この羊、かなり図太い。と思うアート。

 サンドロックは竜人モードに変化すると、ルナギャルと男の娘の二人に増える。

 ルナギャルは人間味ある動きで辺りを見渡し、白い服装を手直ししてアートを見やると尊大な顔つきをする。

 サンドロックは人形の如く静かで、ほぼ灰色でルナギャルより男装に近い衣服を着ている。

 二人の顔は同一だが、表情と服装が違うだけで双子には見えない。


「何か用か、私は貴様の使い魔ではないのだが?」

「あなたに用はありません。サンドロック、旦那様の元へ連れて行って下さい」

「任務、了解」


 サンドロックは古竜モードになると、羊を足で鷲掴みしアートを乗せて飛び立つ。

 ルナギャルは一定の範囲内でしか活動出来ないのか、走ったり飛んだりして着いてくる様子。

 飛ぶ事が出来ないのは、異世界の魔法故に巧く発動しないのと、サンドロックが主体なので使えない状態だから。

 走り疲れても足が動き、どんな難所も越え、モンスターや動物は振り切るし、進行方向へ立ち塞がる通りすがりの馬車は、ぶつかってでも無理やり押し通る。避けるとか、ぶつからない様にかわすとか、そんな配慮はしないし出来ない。常に一定の範囲内へ居る事を義務付けられている為、ルナギャルはサンドロックを追い掛けるしかない。

 対して、サンドロックは空を飛ぶので速度も出るし、鳥や飛ぶモンスターはハネ飛ばす。

 しばらくの間、アートの指示する方向へと飛び、とある街道沿いの開けた場所へ、羊を解放して降り立つ。


「お、アートにサンドロックか。……羊? ルナギャルも来たな」

「ありがとうサンドロック。お待たせしました、旦那様」

「気付くのが遅い。サンドロックとルナギャルに体術を少し教えていたんだが、突然消えたから、もしやと思ったんだよ」


 先にログインしていた、サンドロックとルナギャルが喧嘩していたので、ちょっとした騒ぎになっていた。

 その噂を聞いてライトが合流し、煩わしそうに見ているサンドロックへ、一方的に食って掛かるルナギャルを殴る。

 殴られたルナギャルはある程度吹っ飛ぶと、見えない壁に阻まれて止まった。直ぐ様反撃しようと、ルナギャルが魔法を発動させるも、サンドロックが動いて離れると、それに追従してルナギャルの向きが変わり、歩いて追い掛ける始末。

 当然、魔法は射てない。魔力は見えるようだが、魔法を使う時に歩くと集中力が乱れる上、無詠唱魔法も感情の動きにつられて失敗してしまう。

 範囲外からライトはルナギャルを殴打して、自由が制限されている事を解らせる。圧倒的に不利と見たルナギャルは、サンドロックに歯向かうも、ルナギャルの肉体はサンドロックの制御下にあり、鎮圧は容易い。

 意識のみはある程度自由だが、行動範囲と肉体の制御はサンドロックに準拠するのだ。

 そうしてイビられたルナギャルは、トラウマを上書きされかねないストレスにさらされ、ライトの前では態度以外は大人しくなる。


「精神とか性根は変わらないんですね」

「唯一残った、アイデンティティーだからだろう」

「それほどの精神だから、こっちにも来れたと?」

「そうなるんだろう。詳しくは知らないし、知りたい事でもないが」


 息も絶え絶えなルナギャルに構わず、この近くにある町へ向かい、ギルドに登録する。サンドロックも登録出来たが、恐らく、ルナギャルが人間判定されたのだろう。


「通常はどうなるんです?」

「オーガやケンタウロスが登録出来るから、亜人枠なんじゃないかな」

「わ、私は神族だっ!」

「デミ・ゴッドは半神半人、つまり半分人間。亜人の定義は知能とか、人間と交わる事で子孫が出来るかが主な論点らしいぞ。サンドロックは交わらないから、モンスター。ルナギャルは相手が居ない喪女な亜人だ」

「誰が喪女だと!」

「サンドロックの行動範囲内で、人間と生活は出来ても、恋愛や結婚は出来ないだろうに」

「それで何故、モンスター枠ではないのだ」

「俺が知るかよ。テメエで調べろ」


 サンドロックが挙手する。


「竜人モードなら、亜人や人間とも交尾して、子孫が出来る。受肉したので、現世に強い影響力を持つ。古竜モードだと、ドラゴンが候補になる」

「ワイバーンでも探します?」

「ワイバーンはドラゴンではなく、モンスター。人間で言うと猿が近い。いくらマスターでも、猿と交尾は出来ない」

「世の中、異種姦というジャンルがあるんですよ」

「えぇ……」


 サンドロックもドン引きな人の性癖の深さ、深淵にでも続いているのだろう。業が深すぎて、深淵を覗き込む者は、深淵から視姦されるのだ。


「ところで、旦那様」

「何、お金の無心なら心配するな。こっちでも稼いでいるから、アートを養えるぞ」

「結婚してますね?」

「……アート、ここはゲームだ。あ、はい。正直に言うと現地妻はいます。子供も私生児としています。結婚はしてません。テクニックはここで覚えたモノです」


 視線で咎めるとライトは白状した。やけに手慣れていると思ったが、ここで培われたテクニックだったのだ。それをアートに試し、やり過ぎてチョロい撫でポ女にされたので、アートはちょっとした意趣返しで、ゲーム内の人間関係を整理する事にした。


「む、息子に罪はないんだ!」

「それはどっちです?」

「だいたい、俺と出会う前の事で、旅の恥の書き捨てだから」

「まぁ、私が後続と言うのは解ります。でも筋は通しましょうね?」

「分かった、両手の小指を詰めよう」

「いや、それはいいので、現地妻の方々とお話したいんです」

「む、娘と息子はデキ心で……」

「未亡人のつまみ食いに、親子丼、姉妹丼、ほうほう……」


 罪を数え終えたライトの肩に手を置くアート。


「だいたい分かりました。現実世界で搾りますから、覚悟しといて下さい」

「ひっ……こ、こっちでは?」

「とりあえずは、宿に一ヶ月泊まりましょうね」


 ライトは監禁され、一ヶ月もの間ずっと、アートに搾り取られた。

 その間、サンドロックは羊の世話をしたり、ドラゴンを探してはルナギャルを振り回し、遂には武装としてルナギャルを装備する。古竜モードでもルナギャルを顕現させ、太ももが持ちやすく、落としても追尾してくるので、探す手間もそんなに掛からない。

 ルナギャルはサンドロックを連れ回し、酒場やスラムで自分の信者を作り、神族としての地位や信仰心を得る。

 武器として強いルナギャル、神族を振り回してはワイバーンをシバくサンドロック。そう、ルナギャルは神器としての役割を持つ、憑喪神な宗教を設立し、魔剣や曰く付きの武器が素晴らしい事を説く事にした。

 武器に人名のような名前を付けたり、武器の擬人化を絵師や画家に描かせたりして、それなりの規模と影響力を確保する。

 元々の土台が、愛用する武器なので、冒険者や傭兵からの支持も得やすかった。

 サンドロックは神器を振るう立役者であり、武器に振り回され、武器を着飾らせる脇役。実態は兎も角、主役はあくまでもルナギャルなのだ。


「旦那様、次は修羅場です」

「現地妻に包丁を持たせて、俺に突き刺すのか」

「恨まれていたら、腹じゃなくて首になるかも?」

「……刺されなかったら?」

「私とお話して、路地裏で握手します」

「現地妻死んでそう」

「子供と一緒に、私達が拠点とする町へ、引っ越してもらうだけですよ」

「家買うか」

「こことかいい物件です」

「屋敷、え、引っ越した現地妻と、その子供をまとめて住まわせるの?」

「人数にもよりますけど、毎日三人相手すれば平等です」

「俺に休みは……いや、その三人にアートが毎日居たら、平等じゃないような」

「勘のいい旦那様は嫌いですよ……」


 現地妻を訪ねては話し合い、時に現地妻が自分を刺し、ある時はアートが刺され、子供を刺す現地妻も居た。ベッドヤクザはかわさなかったが、かすり傷だけで致命傷は無い。皆がベッドヤクザの報復を恐れおののいているのだ。決して期待している訳ではないはず、たぶん、きっと。


 結局、抱え込んだ現地妻は三十人、ライトの子供が七十人、前の夫の子供が二十人と、大所帯となったが、没落した貴族の屋敷を買い、周辺の土地も買ってプレハブ小屋を屋敷の周辺に建てる。

 整理してこれだけの人数へと昇り、成人していない子が九十人もいる。

 妻達は協力して役割分担し、子育てと家事を行いつつ、昼はルナギャルの新興宗教を手伝ったり、子供達に文字の読み聞かせして、所有する庭の手入れに、畑を耕したり家畜の世話をする。

 夜はアートを筆頭にライトを夜這いして、限界まで搾精し、家族が増える事もある。

 勿論、アートや妻達も自衛の為に訓練をするし、子供達にも古武術を教えていく。

 金は盗賊狩りや他国の戦争に参加して稼ぎ、たまに魔物を狩る。

 サンドロックは酒に酔ったルナギャルに犯され、遂にはルナギャルを娶った。

 何が悲しくて瓜二つの容姿の女を嫁にとライトに愚痴るも、孕ませた責任は取る必要があると、ライトは説得する。

 これを機に、宗教団体は武器との結婚も可能とした。

 やがて子供達が成人し、アートとの子供も十人育て上げ、戦争や飢饉を乗り越えて来た。

 そろそろ寿命が来たのか年上の妻達が先立ち、孫やひ孫が一人立ちするのを見送り、隠居と称して山にアートと共に移り住む。

 サンドロックも開き直ったのか、ルナギャルと次々子供を作り、その子供がライト達の子供と結婚したりする。

 そうして鍛練と闘争の果て、ライト達は食事に飽き、性癖もだいたいを経験し、ある程度の魔法や鍛冶に手を出して、自作の武器にも満足した。

 ライトとアートは寄り添ってログアウトし、サンドロックとルナギャルは祈るような姿勢でログアウトした。

 ちなみに、ログアウトイコール死亡扱いなので、続きからスタートは出来ない。

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