126.お引越し前にお洋服とお掃除
お部屋が綺麗に片付いて、僕達の重要なお仕事は終わった。お屋敷は前より大きくなったの。お部屋の数も増えたんだよ。
新しくなった廊下は絨毯が敷かれて、コツコツと歩く音がしなくなった。冬は暖かいよね。でも埃が舞うから、お掃除が大変だと侍女の人が笑ってた。腕の見せ所ですよ、だって。
大変になるけど、頑張った分だけ綺麗になるからやり甲斐があると言ってた。侍女の人は偉いね。僕は楽な方を選んじゃいそう。
僕とアスティのお部屋は水色で、お空はもっと濃い青。お星様を描いてもらったから、寝転がると素敵だよ。ベッドは天蓋という布がついてて、天井の星空は見えなかった。薄い白い布は絹で、すべすべしてる。
ベッドと机、ソファも並べられた僕達のお部屋は広かった。お風呂も新品になったよ。新しい棚に石鹸やタオルも置かれてる。もう使えそうだね。
「前より広い!」
「カイもこれから成長するわ。だから広くしておくのよ」
僕の体、広くなったお部屋みたいに、大きく育つといいな。アスティをえい! って抱っこできるようになりたいの。両手を振りながら説明すると、アスティが不思議そうに首を傾げた。
「そんな光景、どこで見たの?」
「ボリスがしてたよ。お部屋の片付けしてた侍女の人が倒れて、えいって運んだの。イェルドが驚いて、その後褒めてた」
だから凄いことだと思う。そう締めくくると「ふーん」とアスティがニヤニヤした。
「明日、揶揄ってやるわ」
「悪いこと?」
「いいえ。楽しいことよ」
それなら平気かも。いけないこと話したかと思っちゃった。
アベルのお家から引っ越すのは、明後日に決まったの。明日は僕達で、アベルのお家を掃除する。侍女の人や騎士の人と一緒に、使ったお部屋を片付けるんだ。お礼の気持ちを込めて掃除する、そう約束したよ。
「アベルも喜ぶわ」
「ヒスイと一緒に家具を拭く係になった」
濡らした布の絞り方も教えてもらった。絞る真似を見せたら、アスティがいっぱい褒めてくれる。
「引っ越したら、驚くことがあるわ」
「なぁに?」
「引っ越すまで秘密」
わくわくする。引っ越したら分かるみたい。綺麗にシーツや布団も整えたお部屋を見回し、僕はあることに気づいた。
「アスティ、隣のお部屋にお洋服がないよ」
以前はお洋服がたくさん入っていた。棚は空っぽで、なんだか寂しい。
「明日運ぶ予定だから安心してね」
「驚くのって、お洋服のこと?」
「いいえ。でも、青、赤、ピンク、たくさんの服を用意したわよ」
お洋服はいろんな色だね。ふわふわしたスカートの服もあるって。明日、お掃除が終わったら見に来たい。ボリスかラーシュの付き添いが条件で、許可をもらった。お掃除頑張ろう。
話をしながらお風呂に入ったら興奮しちゃって、なかなか眠れなくなった。明日、ちゃんと起きられるように寝ないと……そう思うほど眠れなくて。アスティに抱っこされて、じっと目を閉じた。早く眠くなりますように。
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