91.もう飲まない約束をした
僕の飲み掛けのお茶は、アベルが持って行った。飲んではいけないものが混じったんだって。吐いた方がいいのは分かるけど、なんでお水飲んでまた吐いたんだろう。
アスティに尋ねると、お腹の中で吸収されてると困るみたい。吸収は、ぎゅっと染み込むこと? ヒスイは泣きそうだし、お茶の時間は終わりになった。
部屋に戻った僕は、もらった冷たいお菓子を食べる。ヒスイも一緒だよ。氷のお菓子で、削って甘い汁が掛かってるの。とっても美味しい。蜂蜜がいっぱい使われてて、トロッとしていた。
「美味しいね」
「ええ。とても美味しいです」
にっこり笑うヒスイだけど、さっき少し泣いたの。すっとするお茶はもう飲まないからって約束した。ヒスイが笑ってる方が嬉しいよ。
今日はお部屋から出ないでとお願いされたので、午後のお勉強はやめて遊んでお昼寝になる。二人で絵本を引っ張り出した。
「じゃあ、僕から読むね」
僕が好きな絵本を、ヒスイに読んで聞かせる。最後まで読んだら、交代だよ。ヒスイがお気に入りの本を読んでくれるの。お互いに好きな物を知れるし、読むことは言葉のお勉強になるとタカト先生も言ってた。タカト先生のお勉強がなくなったから、言葉のお勉強の代わりだよ。
僕が読んだのはドラゴンが宝を守るお話、ヒスイが選んだのは英雄が悪者を倒すお話だった。英雄は犬の耳や尻尾があって、倒された悪い人は人族みたい。はっきり書いてないけど、特徴がない種族と記してあった。
お母さんはいい人だったけど、人族は悪い人がいっぱいいた。その事は僕も知ってる。僕の知らない悪いドラゴンもいるし、すっごく優しい魔族の人もいると思うの。そんな話をしながらベッドに横たわる。
ヒスイと二人で猫のぬいぐるみをベッドに引き上げて、真ん中に置いて寝た。両側から抱き着いて、僕とヒスイの手で閉じ込めるの。手を繋ぐと、ヒスイのひんやりした手が温かくなる。それが嬉しくて、同じ温度になる手をしっかり握った。
小さな声でひそひそと話す僕達は、すぐに寝ちゃった。夢の中でアスティが来て、僕達の上に毛布を掛ける。温かくて幸せで、お礼をちゃんと言えたのかな? 起きて真っ先に心配したのが、それ。
「アスティが来た?」
「先ほどお見えになりましたよ」
やっぱり夢じゃなかった!
「そう? 起こしてくれたらいいのに」
「よく寝ているから起こせないそうです。またお食事の時に会えますから」
ヒスイに言われて、ちょっと尖らせた唇を元に戻す。ご飯の時間まで積み木をして遊ぶことにした。綺麗な石をたくさん積んで、どこまで高く出来るか頑張ったの。全部積めそうなのに、後少しで崩れちゃう。繰り返していたら、アスティが帰ってきた。
「今日は皆で一緒に食べましょう」
アベルやボリス師匠、ヒスイも全員一緒だ。ルビアとサフィーもだって。とっても楽しみだな。
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