70.僕が悪い子でも捨てない?

 積み木を作るところを見た僕とヒスイは感動していた。色のついたただの石を切るたび、光り輝く色が溢れ出る。生まれ変わるみたいな作業は、すぐに終わった。ルビアもサフィーも疲れた様子はなくて、たくさんの積み木が出来上がる。透き通ってる石もあれば、中が曇ってる石もあった。


「全部綺麗だね」


「驚いてしまって……本当に綺麗です」


 ヒスイはおっかなびっくり積み木に触る。僕もね、自分の積み木は初めてなの。だって自分用の玩具や絵本なんて、このお屋敷に来るまで持ってなかったから。


「ありがとう、アスティ。ルビア、サフィー、騎士の人達」


 笑って頷いてくれる皆にお礼を言って、積み木を豪華な箱に入れてもらう。金色でピカピカして、輝く石が埋め込まれた箱だよ。お土産を見つけた部屋にあった大きな箱は重いので、魔法をかけてもらった。白い小さな石を持ってると、僕に付いて来るの。


 お片付け用に、蓋の上に白い石を置く場所を作ってもらった。午後からお勉強があるので、お昼前に積み木を作って、今から遊ぶの。お昼まで時間が少しだけど、お部屋に戻って絨毯の上で広げた。


「ヒスイ、何作る?」


「えっと……お家なんかどうでしょう。女王陛下とカイ様が暮らす家を作りませんか」


「ヒスイのお家も隣に建てる」


 がしゃがしゃと石を選んで並べ始めた。色がばらばらのお家がいいな。壁が一つの色じゃなくていいの。お部屋はアスティと僕が寝るところ、隣にご飯を食べるお部屋、侍女の人のお部屋……あとは入り口の玄関もいる。お風呂はどうしよう。


 夢中になって積んでいたら、アスティが横に座っていた。


「お昼だけど、もう少し遊びたい?」


「うん」


 いい子じゃない我が侭を僕が口にしても、アスティは笑って許してくれる。最初は不思議だったけど、今は嬉しくて擽ったい。僕のこと、どこまで許してくれるのかな。悪い子でも捨てない? どきどきしながら遊びたいと伝えた。


 アスティは笑って頷く。本当にいいの? 僕がいい子じゃないこと言っても、嫌いにならない? 不安で距離を詰めると、膝が積み木のお家に当たった。崩れそうになって、慌てて手を伸ばす。先にアスティが支えてくれた。


「大丈夫よ、お昼は簡単に食べられるものに変えてもらったわ」


 運ばれてきたのは片手で食べられるご飯ばかり。握ったお米にお魚やお肉が挟まっていた。驚いて目を瞬く向かいで、ヒスイも固まっている。絨毯の上に座ったアスティが指示して、積み木のお家は低い机に移動となった。


「これで崩れる心配はないわ。絨毯の上は平らではないから揺れちゃうの」


「知らなかった。ありがとう」


 魔法で移動してもらった積み木の続きを始める。その間にヒスイも一緒にお昼を食べた。アスティにあーんしてもらい、僕も時々あーんをする。ヒスイにもあーんをしたら、アスティに止められた。そっか、番じゃない人はしたらダメだった。


「お昼寝は自分の部屋に戻りますね」


 作りかけの積み木の続きは明日。机ごと片付けてもらい、僕とアスティはお昼寝をする。この後、またヒスイとお勉強に行くんだ。今日は文字を書く試験があるんだよ。頑張らないと……欠伸をした僕はいつの間にか眠ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る