69.アスティに見つけてもらってよかった

 アスティとお土産を探しに行った。部屋の中に散らばるのは、いろんな色の石だ。こないだのお祝いで皆が付けてたみたいな石は、キラキラした金色の飾りにくっ付いてた。でも転がってる石もある。袋や道具がないから、どうやって持ち帰ろうかな。


 悩んだ僕は、大きな箱に気づいた。


「あれ!」


 箱を指さした僕は、アスティと並んで中を覗き込む。指輪や首飾りになってない石がいっぱいあった。作られた飾りは、欲しい人がいると思うの。これはまだ石のままだからいいよね。これが欲しいとお願いしてみた。


「本当にこれでいいの? 光ってないし、もっと綺麗な石はあるわよ」


「ヒスイと積み木にするの!」


 キラキラしてるのはお金が高いから、残していく。そう伝えたらアスティが笑った。僕とヒスイで積み木にして遊ぶなら、そんなに光ってなくていい。ゴロゴロした石は光る前だけど、それでも赤、青、黄、緑、紫、いろんな色があった。


 それに光る石より大きい。これなら積み木も出来るんじゃないかな。転がして遊んでも楽しいよね。遊び方を考えるとわくわくした。ヒスイの知ってる遊び方も試してみたいな。


「ヒスイ、喜んでくれるかな」


「きっと喜ぶわ。遊びやすいように四角や三角に切る?」


「大変じゃないなら、して欲しい」


 僕が知ってる積み木は、三角や四角の形をしてる。あとは丸いのとか。でもこの石は外がガタガタしてて、積みにくいよね。アスティもそれを心配してるみたい。形を整えてくれるなら、遊びやすいと思う。大変じゃないわよ、と笑うアスティがサフィーやルビアにお願いすると言った。


「サフィーとルビアは、積み木を作れるの?」


「ええ。ドラゴンの硬い爪や強力な魔法なら、この石もさくさく切れるわよ」


「ドラゴンって強くて凄いね」


 僕もドラゴンならよかったな。残念に思うけど、ないものはないの。鱗も爪も、縦に割れるカッコいい目も、僕にはない。でも皆が優しくしてくれるから、僕は十分に幸せだった。ご飯も美味しいし、叩かれないし、お勉強も出来る。


「僕ね、アスティに見つけてもらってよかった」


「……っ、そうね。私もカイと出会えて良かったわ。とても嬉しいし幸せよ」


 ぎゅっと抱っこしたアスティは、しばらく僕を離さなかった。何か怖いのかな、震えてる気がして僕も抱き着く。まだ背中に手は届かないけど、精一杯背伸びして手を伸ばした。明日はもっと届くといいな。


 大きな箱は、ドラゴンになって摘まんで運ぶみたい。今日中に運ぶ約束をしてもらった。明日お勉強している間に、積み木をカットすると言われて我が侭を言った。


「切るとこ、僕も見たい」


「そうね。じゃあ、ヒスイと一緒に見学できるよう頼んでおきましょう」


「ありがとう」


 明日何とかして休んでやるわ、そう呟くアスティの様子に首を傾げる。アベルがどうとか、分からない大人のお話かも。袖を引っ張って、アスティの頬にキスをした。


「明日頑張って」


 分からないけど大変みたいだから応援する。絶対に休憩を勝ち取ると約束してくれた。いつも休憩の時にお昼寝とおやつしてるけど、それ以外にも休憩が欲しいの? 疲れてるアスティのために、僕はもうひとつキスをした。

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