第9話 本気

 鬼灯グランドホテル1階、担当は郷田秋道。


 郷田は地下の扉の前で座り込んでいる、地下の扉の分厚い鋼鉄の扉で、鍵穴が潰され開けることができないようになっている。


「どんだけ頑丈なんだよこの扉、それに変な感じがする」


 郷田の元に近寄る複数の足音が聞こえる、郷田はすぐに立ち上がり木刀を構える、そこに現れたのは5階を担当していたフロイドアーセンと8階を担当していた二階堂蒼馬であった、郷田は木刀を床に置き、再びその場に座り込む。


「なんだお前らか、随分遅い到着だな、ここに来たのはお前らが初めてだ、他の奴らは苦戦してんのか?」


 二階堂がメガネを人差し指で上げながら喋り始める。


「一階と僕たちの階を一緒にしないで貰いたい、君の所は楽だったかもしれないが僕たちの階は悪霊の数が多く、一体一体の強さが違う、だから他の者たちも苦戦しているのだろう、ところでなぜ君は地下へ行く扉の前で座っているんだ、一人で地下に行くのが怖いのかい?」


 郷田は声を荒らげながら二階堂の問いに答える。


「うるせぇ、上から目線で言いやがって、年下だろうがてめぇ、この扉が開けられねぇからこうして座ってんだよ」


 扉は木刀で何度も叩かれ所々へこんでいる。


 フロイドアーセンが扉の前まで行き、扉に手を当て何かをしている。


「なるほど、そうゆう事か、この扉には黒魔術の様なものがかけらている、我々ではどうしようもできない、この黒魔術を解除をするにはこれをかけた者を倒すか、その者が術を解く、その二つだけだ」


「なるほど、では今現在、この黒魔術をかけた者は倒されてはいないと言うことにもなるな、しかし謎だ、なぜ地下にだけ黒魔術をかけ我々を入れさせないようにしているのか…………いや違う、我々を地下に入れさせないようにしている訳じゃないのか」


「じゃあ何なんだよ、お前頭良いんだろ、言ってみろよ」


「うるさいなちょっとだけ待っていてくれ……そうか分かったぞ、もし僕の予想が当たっているなら、君たち、いつでも戦える準備をしていてくれ」

ーーーー鬼灯グランドホテル10階ーーーー


 担当は君島哲子、田辺愛、伊勢明正、近江泰然。


 君島たちは10階の悪霊たちをすべて倒し終えており、地下へ行く準備を進めている。


「事前に集めた情報通り、この階には強敵ばかりでしたね、私も少し霊力を使ってしまいました」


 君島以外の3人は君島と違い少し疲れている様子である、


 君島は事前に鬼灯グランドホテルに巣くう悪霊たちの情報収集を行っており、それぞれの階にいる悪霊たちのレベルを予想し、君島は10階が一番レベルの高い悪霊がいると予想し、自分たちがその階を担当することで他の者たちの負担を減らす事を考えていた。


「なかなかの敵やったのう、ワシらが一番遅れとるんとちゃうか、明正?」


「そりゃ仕方ないですよ、ここが一番の激戦区でしたからね、それより君島先生、これから地下へ行くのは良いのですが、他の階の様子を見ながら行きませんか?」


「そうですね、まだ戦っているというのは考えずらいですが、負傷している者がいらっしゃるかもしれませんし、そうしましょう」


 君島たちは移動を始める、しかしすぐに君島の足が止まる、君島以外の3人は少し戸惑っている様子である。


「隠れてないで出て来てはくださらないですか」


 君島がそう言うと君島たちの数メートル先にある部屋の扉がゆっくりと開くと、出てきたのは、巨大な鎌を持ったリオンであった、リオンは血まみれの姿で、君島たちを笑顔で睨み付ける、凄まじい殺気が君島たちに襲いかかる、この中で田辺愛が片膝をつき、冷や汗をきかき、震えている。


「あたしの全力の殺気を受けて立っているなんてすごいね、まあ一人片膝ついてるけど」


「あなたがこのホテルに巣くう無数の悪霊たちを従えているのですか?」


「そうだよ、あたしがここのボスだよ、てかほとんどあんたたちに倒されちゃったけどね、ホントに強いんだね、中でもおばあちゃんあんたが一番強そう」


 リオンは喋り終わると君島に鎌を構え構え、襲いかかる、君島に鎌が当たる瞬間、伊勢、近江の2人が君島の前に出て、両手を前に出し、結界を作り出し、鎌を弾き返した。


「何これ、結界? ふさげたことしてくれるね、でもそんな物、すぐに壊してあげる」


 リオンは2人が作った結界に向かってい何度も攻撃を加える、結界は徐々にヒビが入っていく。


「田辺!! 俺たちだけじゃ結界が持たねぇ、力を貸してくれ」


 伊勢は田辺にそう言うと、田辺は立ち上がり2人のもとに駆け寄り、両手を前に出すと、ひび割れていた箇所が修復される。


「迷惑かけてすみません、もう大丈夫です」


 リオンは3人から距離をとり鎌を変形させる、鎌が液体状になり、重機関銃に変え床に設置する、リオンは設置した重機関銃を結界を張っている3人に向けて撃ち始める、凄まじい音と薬莢が床に落ちる音がこだまする、3人はなんとか耐えているが結界はひび割れ少しずつ砕けていき銃弾が結界を貫き近江の足と肩に命中する、重機関銃は弾切れになり動きを止める、結界はボロボロになっておりリオンの攻撃がおさまった瞬間、結界は砕け散り、3人は次の攻撃に備えており、近江はすぐに撃たれた箇所を止血し立ち上がる。


「これだけ防戦一方なのに全員、目が死んでない、それなりに修羅場を潜ってきたって訳ね」


 君島が3人の前に出ると、手で印を結びならを言葉を発する


りんびょうとうしゃかいじんれつざいぜん、」


 リオンは再び黒い液状の物を変化させる、黒い液状の物は巨大な大砲に変わり、リオンは大砲を床に置き、リオンが大砲に触れると君島に目掛けて弾が発射される、弾は君島に直撃し、爆発し激しい爆風が起こる。


「何か言っていたみたいだけど、木っ端微塵になっちゃったみたいだね」


 煙が晴れるとそこには無傷の君島が立っており、リオンはびっくりした表情を見せる、君島の体から青いオーラが噴き出しているように見える。


「なんとか間に合いましたね、九字切りには少し時間が掛かりますからね」


 九字切りとは九字護身法と呼ばれるもので、九字の呪文と九種類の印によって除災戦勝等を祈る作法である、君島の使う九字切りは他の者が使うものとは少し違うものであり、一定時間あらゆる攻撃も無効化する能力が上乗せされている、結界の上位に位置するものと思われる、君島がこれを使うときは本気で戦う必要がある時である。


「さて本気で相手をしましょう、あなたも全力で来てくださいお嬢様」












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